23.
⭐︎23.
自己紹介を終えた一行は、スタッフに案内され、それぞれの部屋へ荷物を運び始めた。
二階。
女性メンバーの部屋。
白を基調にした広々とした空間には、大きなリビング、その先には六つ個室が並び、大きな窓からは海が見える。
「かわいー!」
一番最初に声を上げたのは橘ひまりだった。
ベッドへ飛び込む。
「ホテルじゃん!」
「ほんとだ。」
天野莉子も窓を開ける。
潮風が部屋へ流れ込み、白いレースカーテンがふわりと揺れた。
「景色すごい。」
「毎日ここで起きるの?」
「最高じゃない?」
自然と笑顔になる。
一方。
ほたるは部屋に行き黙々と荷物を整理していた。
スーツケースを開け。
パジャマ。
スキンケア用品。
充電器。
台本。
大量のお菓子。
「……。」
白石あやめが部屋を覗き込み、思わず二度見した。
「ほたるちゃん。」
『はい?』
「そのお菓子、全部食べるの?」
『うん。』
「そんな細いのに!?」
『甘いもの好き。』
きっぱり。
そこだけ即答だった。
「あはは!」
部屋中が笑う。
「なんか安心した。」
小鳥遊美月が微笑む。
「アイドルって、もっとストイックなイメージだった。」
『食べるよ?』
ほたるは首を傾げる。
『踊るから大丈夫。』
「なるほど……。」
説得力が違う。
そのときだった。
「ねぇねぇ。」
ベッドへ寝転がったひまりがニヤニヤしながら言う。
「聞いていい?」
『?』
「ドラマで共演してる四人!」
「めっちゃ仲良かったじゃん!」
「あれ何?」
部屋中の視線が集まる。
ほたるは少し考えたあと。
『みんな優しい。』
「それだけ?」
『うん。』
「いやいやいや!」
莉子が笑いながら突っ込む。
「水城くんなんて、ほたるー!って一直線だったじゃん!」
『宗真さん、いつもあんな感じ。』
「黒瀬くんも自然だったし。」
『晃一さんも。』
「神崎さんまで普通に話してた!」
『晋也さんも優しいよ。』
四人とも名前で呼ぶ。
それがいかにも自然で。
逆にいやらしさがない。
「あぁ。」
あやめが納得したように頷いた。
「ドラマでずっと一緒だったのね。」
『うん。』
「だからかぁ。」
「私たちから見たら、なんか兄妹みたいだった。」
『兄妹?』
ほたるはきょとんとする。
『そうかな?』
「うん。」
美月も笑う。
「みんな、ほたるちゃんに優しいじゃない。」
『そう?』
「本人が気付いてない。」
莉子が吹き出す。
「天然だ、この子。」
「かわいい。」
ほたるはよく分からないまま首を傾げた。
そんな様子に、また笑いが起こる。
ひまりは頬杖をつきながら男性陣を思い浮かべる。
「でもさぁ。」
「イケメンしかいなくない?」
「目の保養なんだけど。」
「分かる。」
莉子も大きく頷く。
「一ノ瀬さん、本当に俳優オーラすごい。」
「神崎さんも大人って感じ。」
「櫻井さん、落ち着いてるし。」
「黒瀬くん、犬っぽい。」
「水城くんは絶対モテるタイプ。」
「弓弦くんなんて反則。」
みんな好き勝手に話し始める。
「ほたるちゃんは?」
突然、ひまりが振り返る。
「誰が気になった?」
『?』
「恋愛対象!」
『……。』
ほたるは真剣に考える。
一分ほど。
本気で考えた。
そして。
『みんな、かっこいい。』
「それは知ってる!」
「その中で!」
『……。』
また考える。
『方向音痴の人。』
「一ノ瀬さん!?」
「そこ!?」
『迷子になるの可愛い。』
「あはははは!」
部屋中が笑いに包まれる。
「そこに行くとは思わなかった!」
「天然すぎる!」
笑い転げる五人を見ながら。
ほたるだけが、本気で不思議そうな顔をしていた。
『なんで笑うの?』
「もう、この子ダメ。」
あやめが目尻の涙を拭う。
「守りたくなる。」
「分かる。」
「最年少って感じ。」
「妹みたい。」
自然と距離が縮まっていく。
その輪の中心には、いつの間にかほたるがいた。
本人は何もしていない。
ただ、素直に話しているだけ。
それなのに。
気付けば全員が笑っている。
この部屋でも。
ほたるは、あっという間に太陽になっていた。




