聖女としての役目、聖女の自覚 ④
「」は普通の会話 『』は過去や電話など
〈〉は小声で話している () は心の声や動作
・・・は時間経過 ***は話し手交代
○○○は過去振り返 ー文章ーはナレーション
「え゛、、リュカさんって兄弟居たの!!?!?」
「そんなに驚く事か?」
「いや、王宮に暮らしてから会った事ないし、兄弟は居そうだな、とは思ってたけど」
昼ご飯のオムライスが危うく喉に突っかかりそうになってしまうぐらいの情報をリュカさんから伝えられてビックリしてしまった。
俺の反応に後ろで笑ってるサイラスはともかく、リュカさんの後ろで立ってるヒューゴさん笑ってるよね?真顔にしてるけど笑ってるね!その心!!
じゃなくて、リュカさんに“3人の弟さん”が居るって情報が驚きだよ。
「全員今は王宮に居ないからな。言う必要があるとは思っていたが機会がなくて」
「リュカのそう言う忘れ易いところが悪い所だと前に言っただろ」
「そうだっけ?」
「そうなんだよ」
幼馴染っぽい会話を繰り広げているリュカさんとヒューゴさんの姿を見ると俺も幼馴染達の様子が気になって来た。いつでも会えるんだがな、って思いながらスープのオニオンスープを口に含む。
じんわりと玉ねぎの甘みが口の中に広がって体の芯から温まる。
温まる、温まると言えばこの世界の時間の感覚ってどうなんだろ?
疑問が頭の中で浮かんだので、お皿をテーブルに置いてからリュカさんに問いかける。
「ねぇ、この世界の時間の感覚ってどんな感じなの?1週間とか、ある感じ?この世界が24時間はあるのは分かるけど」
「ぁー、そう言えばちゃんと説明してなかったね。この世界は1月から13月がある。日にちは月に30日、1月から12月までな。13月は経った12日だけ、、君達の世界に1週間と言う月曜日?や火曜日などの日の呼ばれているのはこの世界にもある。月曜日は【火の日】、火曜日は【水の日】、水曜日は【風の日】、木曜日は【土の日】、金曜日は【無の日】、土曜日は【光の日】、日曜日は【闇の日】、と呼ばれている」
リュカさんの説明に俺は頭の上でハテナマークを沢山浮かべる。難しい話をされた訳ではないが、ややこしい感じがして、理解するのが少し遅れる。
だけど、基礎魔法って呼ばれてる魔法だよな??四大魔法って呼ばれてる【炎・水・風・土】そして奇跡の大三角形と呼ばれてる【無・光・闇】が付けられている。
この世界では魔法の名前で呼び方を付けるって事か。
そう理解すれば納得がいった。エビフライを口に含んで、この世界の時間の経過が俺達の居る世界より少しゆっくりだって事、そして俺達召喚された6人もこの世界の肉体に変化してるって事だから、歳のとり方変化している可能性があるって事か。
ーこの世界の四大魔法と奇跡の大三角形と呼ばれる基礎魔法7魔法は、素質やスキルとしてなければ使う事は不可能である。ただし、炎魔法の魔法石を持てば一時的に炎魔法を使用可能になる他、複合魔法と言い2つの魔法、3つ魔法を混ぜ使用する難易度の高い魔法なども存在するー
頭の中で整理して、水を口に含んで口を拭いてから、リュカさんの方を見る。
「似てる感じがしますね、俺達の世界と」
「だろう?その呼び名が作られたの前の聖女様が来てからだから」
「わー、安直〜」
「ふふっ、素直だね、千結は。オムライス美味しいかい?」
「とっても美味しいです!」
そんな楽しい会話をしながら食事を進めていく。
ゆっくり、こんな時間が続けば良いな、何て考えていると勢い良く扉の部屋が開けられて耳を塞ぎたくなるくらい大きな声が鼓膜に響かせる騎士さんが入って来た。
「リュカ殿下!!!!至急お伝えしたい事が!!!!!」
「!、、、、(び、ビックリ、したぁぁ)」
入って来た騎士さんは酷く焦った顔色と汗をかいて、息は荒れていた。唯らならぬ事が起きたんだと俺でも用意に想像が出来る。
リュカさんはさっきまでの穏やかな表情から冷静な顔になって食事をしている手を止め兵士さんの方に視線を向ける。
「どうした」
「ドアをノックもせず入って来るとは無礼だぞ」
「すみません!ヒューゴ隊長!それが、(息を呑む)、それが北の大地に遠征していた部隊の一部が帰還したのですが!」
「帰還したんッスか!?」
「はい!ですが、、、、帰還した兵士は全員負傷、、重症者多数、心肺停止者も、、、、居ます!!」
「「「「!!?!?」」」」
騎士さんの説明に俺達全員動揺が隠せなかった。特にリュカさんは目を見開いて手で口元を隠し、震えている。ヒューゴさんもサイラスも動揺と同時に信じられない、と言うかのような表情をしてただ立っていた。
それからすぐに、リュカさんは立ち上がって俺の方に一瞬視線を向けてから騎士さんの方に視線を戻した。
「分かった。すぐに向かう、千結、君も来てくれないか?」
「!、分かりました!」
来てくれないか、それは頼られているんだと伝わって来て、俺は頑張ろうと集中させてリュカさんとヒューゴさん、サイラスと一緒に帰って来た部隊の人達が居る1階の大きな部屋に向かう。
向かう途中俺は心臓がバクバクと鳴って、冷や汗も流れて緊張している。その間俺の内心は色んな考えが巡って、不安を感じる。自然と早歩きになってしまうのはしょうがないと思う。
「(全員って事は少なくとも、大きな怪我をした人は居ないよね。いやでも、一部って事はもっと沢山居る可能性もあるって事??、何でそうなった訳???心肺停止って事は早く措置しないといけないよね?俺そう習ったし、うん!)」
そう考えていたら部屋の前までついて開けるのを躊躇してしまう。だけど、俺の想いを気づいてるのか気付いてないのか、リュカさんは俺の肩を優しく掴む。
顔を上げると優しくだけど真剣な顔で、俺に言った。
「千結、俺は、、いや、俺達は君を信用している。失敗なんてしないって事も。焦らなくたって良い、千結、君自身のペースでやってくれ。応援だってする、支えもする。俺達がそばに居るんだ」
「!、、、、はい!!」
俺はリュカさんの言葉を聞いてハッとしたと同時に俺を信じてくれて、俺にはこんなにも頼りになる、いや信じてくれる人が居るんだ。
それが分かっただけで嬉しくて、コクリと頷いて返事をして、両手で部屋の扉を開けた。
「!」
「これは、何とも酷い」
バンっと部屋の扉を開けると、その先に見えた光景に俺は勿論他の3人も顔を顰める。
扉を開けてすぐに師匠達のお陰で覚えた血生臭い匂いに、負傷者である兵士さん達の苦痛や叫びなどの呻き声が鼓膜に届き、視界には30を超える大怪我、重症者達の姿や王宮に居る魔術師が痛みを魔法で無くしている姿が映し出されている。
一歩引きたくなった。気持ち悪いとかじゃない、怖い、って感情が強かった。でもここで引き下がるのは俺じゃない。俺のなりたい俺じゃない。それに師匠達に任されたんだ。師匠達からどんだけ修行付けられたんだ。
此処で何も出来ないでいつやるんだ。
「、、、、俺は、異世界から召喚された聖女。此処で逃げればただの男。いざ、聖女の役目を果たします!」
「!、あぁ、頑張れ」
俺の言葉を聞いて驚いた顔をしていたが、すぐに優しい顔をして俺の背中を押し出してくれたリュカさんに笑顔を向けてから真剣な表情になって3人に背を向ける。
リュカさん達にもやるべき役目、使命があって俺には聖女としての役目、使命があるんだ。
そう意気込んで、鑑定魔法で一度に全員の怪我の酷さを見てから、治療する順番を決める。
これもアルバート師匠とイーサン師匠から教えられた事だ。
「心肺停止者は2名か。それなら一度にやろう。すみません、そこに居る人とあそこに居る人を此処に」
「分かりました!」
騎士さんに頼んで運んで貰い、2人の間に座り2人の心臓部に手を置く。
師匠達から教わった事も思い出すんだ。4つの手順があるんだよな。
1つ 1番治すべき場所付近に魔力を注ぐ為に手を近づける。
2つ 負傷者の体全体に自分の魔力を包み込むようにする。
3つ 治癒魔法を体全体に馴染ませ、治すべき部分に集中する。
4つ 魔力で血液や筋肉、脳の働かせ体全体に負傷者自身の魔力を自然と行き渡せる。
そうすれば、大体の怪我は治し終えて、心臓も動く。
聴覚を強化魔法で強化させれば微かに心臓の動く音が心肺停止者2名から聞こえてくる。
とりあえず、山場は抜けたかな。
俺はポーションを2つ取り出して騎士さんに手渡す。
「目を覚ましたらそれ飲ませて下さい。そうすれば、ある程度回復しますから」
「分かりました、聖女様」
俺はその足で他の重症者達の元に向かう。重症者は20名程。骨が折れてたり、肺などの臓器が潰れてたり、中には足や腕がなかったりする。
良く生きてるな、って思うけどこの世界だし、と思いながら1人1人を素早く処置していく。
多分まだまだ負傷者は増えると思うし、早い方が良い。




