聖女としての役目、聖女の自覚
師匠達が王宮から出て1週間ほど経った頃、俺と寧は俺の自室に居た。いつになく真剣な表情をして治癒魔法を発動している俺とその姿を見つめる寧があった。
「よし、、治ったよ、寧」
「ありがとう、千結〜(力強く抱き締める)」
寧がテイマーした動物の子、兎?かな?兎が怪我をしたからと、急遽俺を頼って来たから治癒魔法で治した。師匠‘sのおかげで一瞬ではないけど高度な治癒魔法が出来て、後遺症もなく治せてホッと安心する。
治ったのが嬉しかったのか寧は抱き締めてきた。バランス取れないからソファ座るか。
「ホント、千結が居なかったらヤバかったよ」
「ぁー、確かに今他の治癒魔術師居ないからねぇ」
「だからもし他に怪我した人が来たら千結引っ張りだこだよね」
「辞めてよ、寧、縁起が悪i」
「千結!誠がぶっ倒れた!!!!!!」
「ほらね」
ゆっくり会話をしようって思ったら寧の発言で嫌な予感はしてたけど、俺が言い終わる前に相変わらず大きな声で俺の部屋の扉を勢い良く壊して入って来た剣一の姿を冷めた目でみる。大きな声のせいで兎がビックリして窓から逃げちゃったよ。テイマーしてるから大丈夫だと思うけど。
そして剣一のその腕には真っ青な顔色をしてグッタリとして意識が殆どないであろう誠が居た。
鑑定魔法?だっけ、使うか。
「剣一、おっきな声出さないでよ、僕ビックリしちゃったじゃん」
「ぁ、ごめん、寧。じゃなくて、千結!早く見てくれ!」
「はいはい、と言うかもう見てる」
俺はソファから立ち上がって誠を見る。鑑定魔法で見て分かったけど魔力が極限まで少なくなっている。
体全体を覆ってる魔力の膜が普段はスマホの幅ぐらいあったのに、ラップぐらい薄くなってるし、色も透明に近いし内部に溜まってるはずの魔力も殆どない。それに、詰まってる?のか、一部分だけ多く魔力が留まっている。これはちょっと厄介かもしれない。と言うかこの詰まり方ってまさか、、、、
この症状からしてイーサン師匠に教えて貰った急性魔力低下症、だと思うけど何でこうなったんだ?
焦った表情をしてる剣一からしても、多分これは一時を争う。とりあえず、状況を聞くしかないな。
「いつからこうなった訳?」
「確か、、10分前!俺の為に作ってくれた剣の強化魔法とか付与魔法発動してくれて、そしたらいきなり倒れてちゃって!!」
「えぇ、それ大丈夫なの?」
「大丈夫、とは言えないけど、、、、ちょっと待ってて、確か、この棚に」
一先ず、誠の話を聞く為にもと応急措置をしようと俺の部屋にある大きめの棚を開ける。そこには多種多様な色や形をした宝石の様な魔力石が丁寧に箱に入れられて置かれている。
これは前、もしもの為と後学の為と言って5人の魔力を魔石に入れて魔力石にしておいたものだ。俺は澄んだ青色をした魔力石の入った箱を手に取り3人の元に戻って箱から取り出す。
「千結、これでどうするんだ?」
「一応、魔力を循環させるけど、、、、初めてだから少し時間要るかも」
「それでも!誠の為に!」
「分かってる。今からやる」
魔力石を箱から取り出して中に入った誠の魔力の一部を吸収し、その魔力を俺の体全体に行き渡し馴染ませて、治癒魔法の1つ魔力擬態魔法を発動させる。これをする事で自分の魔力を一時的にだが、吸収した魔力と同じ魔力に変化させる事が可能になる。
だが、数十分で元に戻る為、早く他社の体内に魔力を入れなければならない。
魔力の溜まり場とされる心臓の隣の部分に手を当て、誠の残り少ない魔力と俺の今体にある魔力をリンクさせる。無数の糸と糸を結び合わせるって感じで細胞を繋ぎ合わせるって感じだと分かり易いかな。
それを10分程で本来誠に必要な魔力分を流し込み終え、ついでに詰まり部分を治しておいた。
「これで大丈夫、だとは思うけど」
そう言って数分後、目を覚ました誠。目を開けて俺、剣一、寧の3人に見つめられている事に驚きが隠せず状況の理解も追いついてないのか、混乱した表情で起き上がった。
だけど、顔色も良いし再鑑定したけど何処も異常はないみたいだから良かったと一安心。剣一は元気そうなのが分かって嬉しそうに抱きついている。
誠は嫌がってるけど。
「誠〜!良かった〜!」
「グハッ、ちょ、剣一急に辞めて下さいよ。汗臭いです」
「酷い!」
「と言うか、何で俺千結のお部屋に?さっきまで訓練場に居たはずでは?」
まだ混乱している誠に俺と寧の2人で何で此処に居るのか、どうやって運ばれたのか、どうして倒れたのか、などを説明した。
そしたら誠の第一声は予想だにしない答えで俺と寧は笑ってしまった。
「うっそ、俺、剣一に抱っこされてる姿見られたとか最悪です」
「「第一声それは草wwwww」」
「3人とも酷いぞ!!」
ひとしきり笑い合ってから、俺は誠に改めて質問をする。「倒れた原因に心当たりはあるよね?」って今度は真剣な表情で言えば俺の心情をすぐに察する誠も真剣な表情になって俺の方に体を向けて向き合った。
こう言う時すぐに察して貰えるのは結構助かるところだ。サイラスとか剣一、とかは察すると言う文字がないのが見受けられるし。
「実は怪我してたのを放置してました」
「だろうね」
「え?!怪我!!?」
「剣一、うるさい。静かに出来ないの」
「ぁ、はい。します(縮こまる)」
「いつ怪我したの?此処数日、ではないよね?」
怪我と言う単語で俺は更に真剣と言うか医者の目線に変化してしまう。治癒魔術師と言うか聖女としての性?なのか分からないが怪我を隠されていたのがちょっと悲しいと同時に怒りを覚えてしまう。
でも鑑定魔法をした時にすぐに気付いて良かった。師匠に教えて貰ったんだよね。あの詰まり方は怪我をした時に起こりやすく内部の魔力の管と血管が複雑化して、血の塊が魔力の管に侵入して留まってしまう事で発生する。内部での傷が酷い場合に起こりやすいって前に口が酸っぱくなるまで言われたのを今思い出した。
あの時のアルバート師匠とイーサン師匠の真剣な表情からして、放っておくのはダメだってのは俺でも、多分剣一でも分かる事だ。
「(頷く)良くお分かりで。1週間前、ぐらいですかね」
「「そんなに!!?!?」」
「1週間か、、、、だとすると魔力の出が悪かったり、異常に魔力が出たりしてたでしょ?」
「はい。治癒魔術師は千結1人しか居ない状態でしたし、迷惑かけたくないと思いまして」
「それで倒れたら俺達が心配するのは分かる事でしょ?」
「、、、、はい」
誠の表情を見ると本当に反省しているんだなって分かるし何より、膝に置いてる手を強く握り締めてるから相当反省してるのが伝わってくる。
とりあえず、と思い俺は立ち上がって部屋に置いてある薬の棚から1つの錠剤の薬を瓶の中に詰めて誠に手渡す。
誠とその様子を見ていた寧と剣一は不思議そうに見ている。
別に薬初めて見るって訳じゃないのに「何それ?」みたいな顔しないでよ笑
「千結、これは?」
「魔力溜まりを発症させない為の薬。一度なるとなりやすくなるから、1日1錠飲む事、分かったね?」
「、、分かりました」
「この世界って薬あったんだな、俺初めて知った」
「馬鹿な剣一に付ける薬も飲ませる薬もないから知らないのは当然でしょ」
「何だと!?寧!!」
「はいはい、喧嘩しない、喧嘩しない。それと怪我したらすぐに俺に言う事。この世界は元の世界と違って未知の病気もあるかもしれないし、放っておいたら誠みたく急に倒れる事もあるんだからね(片付けながら3人の方を見て言う)」
「「「!、了解しました!!!」」」
「よろしい」
俺からの忠告にちゃんと聞いて返事する所は良い所だけど迷惑かけるかもって隠されたら流石の俺でも怒るんだよな。
3人が部屋から居なくなって、1人静かだなぁ、って思いながら椅子に座って日記を書く。この世界に来てから毎日書いているけど、書くページが毎日増えって言って1ヶ月で最後まで書き終わりそうになりそうで怖いなって思ったりして。
静かなだなぁって思う半面、この静けさが事件の始まりとしか思えない中学生心があったりして。まぁ、気のせいだろうなと思うがこう言うのって大抵気のせいで終わったりしないのが俺の生き様的な?
「そろそろお夕飯の時間だなぁ、って事は」
ペンを置いて椅子に背を付けて時計を見て呟くとその直後にコンコンッと部屋の扉を軽く叩く音が響き、サイラスの明るく声をかけられた。
「千結、お夕飯のお時間です!そろそろ、リュカ殿下のお部屋に!」
「はーい」
俺はそう言って椅子から立ち上がって日記を机の棚に入れて部屋の扉へと向かう。
この世界に暮らしてから、何故か毎日のお夕飯はリュカさんとご飯を食べる事が日課になった。最初は戸惑ったし何で?と思ったけど今はそれが毎日の楽しみになっている事は俺だけの秘密だ。
扉を開けるとニコッと笑うサイラスを見て、元気だな、ってこっちまで元気に思いながら扉を閉める。
「サイラス、その感じだと今日ヒューゴさんに勝った?」
「!分かる!?とうとう一本取れてさ!ほんと、マジ嬉しい!」
「それは良かったね。でも気を付けなよ?次やった時はコテンパンにされたりするかもだし」
「ふふん!あのヒューゴ先輩から一本取れた俺に怖いものなし!」
「、、、、そう(フラグになりそうだな)」
意気揚々としているサイラスを横目にヒューゴさん多分コテンパンにするだろうなって頭の中で予想しながら、廊下を歩いてリュカさんの居る部屋へと向かうのであった。途中、嬉し過ぎて盛大に転けたサイラスは居たとか居なかったとか。




