命を蔑ろにする人は軽蔑するよ ②
「ハァ、、、、」
「リュカさん、お疲れですね。レイさんも、、どうぞ、お茶です」
「ぁ、ありがとう、千結。うん、中々盗賊達が見つからなくてね」
「絶対に村の周辺の山々に居るはずなんだけどなぁ」
村に訪れて4日、探索を始めて2日が経ったが全くと言って良いほど見つからないらしい。
村での体調不良者も減ったは減ったが毒の方のマシロダケ入りのスープの摂取量+魔力が極端に多い人は依然として体調悪化が目立つ。
アルバート師匠もイーサン師匠達治癒魔術師達も大変だし、盗賊を探してる騎士兵士さん達も大変でてんてこ舞いって感じだ。
「もう何処かに逃げたとかないよな?」
「それはないと思うよ、レイさん」
「え?なんで?」
「わざわざ死に至る様な毒ではなく体調を崩す程度の毒を使って毒キノコを生成したのには何か意味がある。もしかしたらもう何かをしてもう一度する為に近くに居る可能性はある」
「確かに、命を狙ってるなら普通はそうするはずだね」
「そうなんです。それか、毒は第三者が作っていてその第三者の方の近くに居る、と言う可能性もあります」
「!、どう言う事だ!?」
「これは仮説ですけど、俺が習った限りだと毒は魔法で生成可能性らしいですが、基本的にオリジナルの毒、既存の毒以外は生成出来ないんです。であれば人工的に作られた毒を作ってる施設とかあるんじゃないかな、と毒のレベルも高いので」
治療していた4日間で分かったのは、毒のレベルが高い事。
治癒魔法自体は効くが、すぐに治る訳ではない代物と言う点や魔力を吸い取り毒の力を上げる点を考えれば習った毒のレベルの中でもトップクラスに降臨する。
そう考えるといち盗賊がそんな代物を作れる可能性はなきにしもあらず、であれば第三者、それも毒など研究が生成している施設が関与している可能性は少なくない。
俺はそう考える。
「、、、、ぁ、近くに毒の研究もしている施設が確かあったよ、兄さん」
「本当かい!?レイ、なら明日の朝早くから調査を始めてくれ」
「分かった。その方向で調べてみる」
「千結、助かったよ。君はやっぱり聖女として力になるよ」
「いえいえ、そんな」
リュカさんから褒められると結構照れ臭く感じるけど、良い事をしたなぁ、って思えるから結構嬉しい。
お茶を飲んでもう少し休憩しようかな、と思った矢先、外が少し騒がしくなった。
子供の焦ったそれも泣いた様な声が耳に届いた。
思わず椅子から立ち上がり、お茶の入ったカップをテーブルに置いて外を出る。
「聖女様を出してくれ!」
「だから聖女様はお疲れなんだ!」
「母ちゃんが、母ちゃんがヤバいんだ!!赤ちゃんが生まれそうなんだよ!!」
「!、それ本当!?」
「聖女様!」
外を出るとこの前の男の子が泣きながら兵士に詰め寄っていた。
男の子の言葉を聞いて俺は目を丸くして駆け寄る。俺が来たのを分かって安心した様な顔に一瞬なった。
足元を見ると裸足で急いできたんだって言うのが分かる。
するとポロポロと大粒の涙を流し始めた。
「母ちゃん助けて、妹も助けて。オレが沢山スープ元気になるからって食べさせたから、だから」
「お兄ちゃんになるんでしょ、泣いちゃダメ。そしたらお母さんも妹ちゃんも悲しくなっちゃうよ。大丈夫、俺が絶対に助けるから」
「!」
子供の涙には弱いんだよね、俺。治癒魔法で男の子の足の怪我を少し治し、目元を擦らない様にし頭を撫でて手を繋ぐ。
兵士に必要な物をお願いして、男の子のお母さんの居る家へと急いで向かう。
家の中に入ると既に何人かの女性が男の子のお母さんの周りに集まっていた。
既にお母さんには陣痛がきておりいつ産んでもおかしくない状況だった。
だが、毒の影響もあり、体力的に考えて治療と出産の同時並行をする必要があった。
「千結!話は聞いた!お前は出産の方に力を入れろ!」
「僕達が治癒の方をするから」
「イーサン師匠!アルバート師匠!」
服の袖を捲りどうしようかと思った瞬間、師匠2人が来てくれたのが嬉しくてちょっと舞いあがっちゃった。
そんな状況じゃないけど。
でも師匠2人がいれば何でも出来る気がしてしまうのはどうしてだろうか。
それから急いで出産の準備に入った、今まで聖女授業の一環と言って出産現場に立ち会わされてきた経験を活かす時だ。
「お母さん、まずは力みましょう。ひっ、ひっ、ふーです。俺の言う通りにして下さいね、ひっ、ひっ、ふー」
「ひぃっ、ヒィッ、ふぅー!!」
「はい、良く出来ました。少しずつ頭出て来てますからね」
「よし、毒の成分完全に浄化完了!兄貴続き!」
「任せて、、弱った内臓や皮膚、骨に治癒魔法を一斉にかける!」
「母ちゃん頑張れ!!」
師匠達の協力もあっての事だ。
産婦人科医の人達が凄いし助産師さん達ももっと凄いんだって分かる。
普通は帝王切開が良いんだろうけど、弱った体にメスを入れれば産後にウイルス感染の可能性を考えれば出来ない。
だから同時並行って言うのは事前に話していたが、まさかこんな早くなるとは思わなかったけどね。
それから1時間後、、、、
「オギャア、オギャア、オギャア」
「、、、、ぅ、産まれたぁ」
最後はスルンッと体から出て来てくれて、急いで抱き上げて、綺麗なハサミで臍の緒を切る。
タオルも兵士に用意させた新品で暖かいのにして、包みこ上げる。
赤ちゃんの泣き声は赤ん坊特有って感じだけど産まれたって証でもあるよね。
赤ちゃんは小さくて泣いてるからちょっと赤くて湿っている、のは言葉としては言わないけど。
「よし、臍の緒切った、綺麗なタオルに包んで。はい、元気な女の子ですよ」
「ぁ、あり、がとう、ございます、聖女様、ハァ、」
「いえいえ、産まれたよ。君の妹が」
「ッ〜〜、ありがとう、聖女様!!!!!!」
終始不安そうな顔をしていたけど、妹ちゃんが産まれた瞬間緊張の糸が切れたかの様にまた号泣し始める男の子を宥めるのは苦労した。
だけど改めて感謝されるのは結構嬉しいしむず痒さも感じた。
次の日、リュカさんを連れて男の子とお母さんの所に行った。
リュカさんにとっては新しい国民が増えたって事だし、因みにレイさんは朝から盗賊探索に出かけちゃった。
「どうぞ、リュカ殿下、娘を抱っこしてあげて下さい」
「ぼ、僕が」
「はいはい、リュカさん、俺が教えた通りの抱っこですからね、はいどうぞ」
「!、、、、可愛い。命、ってこんなにも暖かいんだな」
「急に哲学みたいな事言わないでくださいよ、リュカさん」
「?」
慣れない抱っこに苦戦しながらも、赤ちゃんを愛おしそうに可愛い物を見る目で抱っこしているリュカさんの姿に何故かキュンと来たがリュカさんのトンデモ発言に思わずツッコんでしまう。
聖女じゃなかったらこんな経験は出来なかったし、生命の神秘を味わえた気がする。
だからこそ妊婦であるお母さんを苦しめた毒キノコを作った犯人、盗賊を俺は絶対に許せない。




