聖女の手料理と王子達との距離感 ③
「ん、美味しい。このどら焼きって言う菓子は美味しいな、千結」
「それは良かったです、リュカさん(まぁそれ、俺が作ったのではないけど)」
リュカさんに料理を振る舞ってから数日が経ち、俺とリュカさんは3時のおやつの時間になって一緒に隣同士でソファに座りアルフレッドさんがお茶と俺が【インターネットショッピング】で買ったどら焼きを食べる。
俺としては、こし餡はなのだが、粒あんの方が人気なのでそっちも買ってリュカさんに食べさせたが、お気に召した様だ。
良かった、良かった。
お茶を啜りながら、外の鳥の鳴き声や風の音を聞きながら思っていると、リュカさんからの提案にお茶を吹きそうになった。
「そうだ。今度、千結が料理する際は僕も参加して良いかな?」
「ブッ、、、、ゴクッ、、、、ケホッ、、、、、、、、冗談」
「ではないね」
「ですよね〜」
「、、、、リュカ、貴方は」
近くに立って様子を見ていたアルフレッドさんも意外も意外、驚いている表情しながらリュカさんを見ていた。
予想もしてない事だったから動揺したんだろうと、察する。
俺でも動揺したから、しょうがない。
でも、何でいきなりリュカさんがこんな提案を?
食べる事が好きなのは分かるけど、作るってなるのかな?いや、なるか、俺の世界だとそう言うので仕事にしてる人結構居るし。
そう、頭の中でグルグル巡らせていると、俺の様子に察したリュカさんが優しい教えてくれた。
「千結がこの前料理をした時、レイ達、弟達も手伝っていたと聞いてね。もしかしたら、今度も弟達が参加してくれるんじゃないかな、って期待してて、、、、だから」
「リュカさん」
「だめだろうか?」
「!、いえ、全然!寧ろ、嬉しいです!」
あぁ言われて仕舞えば断るに断りきれない。
はなから断る気はなかったんだけどね。それに、もしかしたらこれでレイさん達弟組とリュカさんの間にある溝をどうにか出来るんじゃないか、そう思ってる俺も居る。
だから、リュカさんの想いを無碍には出来ない。
俺が了承したら、ホッとした様な嬉しそうな表情を浮かべ、数秒後お願いする様にアルフレッドさんの方に視線を向けた。
「ヤッタ、、、、アル」
「分かってますよ、リュカ。仕事の調整は任せておいて下さい。その代わり、、、、ワイン」
「分かってるよ、最高級ワイン入手しとく」
「頼みますよ」
目の前で取引が行われたが、言及はしないでおこうと心の中で決めた。これが2人の関係なんだと、心の中で思う事にした。俺って優しいからさ。
ヒューゴさんとの関係もだけど、リュカさんとアルフレッドさんの間には言葉に出来ない絆ってのがあるんだろうなって思う時がある。
どら焼きを食べ終わって、お茶で流し込んで作る料理を薄っすらと頭の中で思い浮かべる。
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次の日のオヤツの時間にレイさん、ステラ、ルーチェ、そしてサイラスの4人と俺が作ったスイーツを食べながら、次に作る料理を思いついた事を伝える。
そしたら、ビックリした表情でオウム返しする4人。
「「「「差し入れ???」」」」
「そう、確か今って西側諸国付近の領地に騎士と兵士さんの部隊が遠征してるんですよね?」
「え、ぁー、はい!丁度明日帰って来ますよ。確かそのまま、訓練を行うらしいです。俺も参加させられます」
「サイラス、頑張れ!、、、、アムッ、、、、!このパンケーキも美味しい、苺ソース、好き」
「ふふっ、ルーチェ、良かったですね」
ルーチェはすっかりパンケーキやホットケーキにハマったらしくほっぺを抑えながら美味しそうに食べる姿に雰囲気が優しくなるのが分かる。
自然と俺の雪豹の尻尾がピンッとなるのが分かる。
この世界に召喚されて獣人になってから、確実に感情が体に出てるのが分かるから、普通に恥ずかしい。
「それで、差し入れってどう言う事?兵士や騎士に料理を持って行くって事?」
「はい、そう言う感じです」
「料理の差し入れかぁ。なんか変な感じ。遠征した村とかで村人から料理を貰ったりとかはあるけど、自分よりも明らかに立場が上の人達から差し入れされるのって」
「え?そうなの?サイラス」
「えぇ、サイラスの言う通りですよ、千結。貴族は勿論、王族は騎士、兵士に差し入れをする人は居ませんから」
「まぁ、アレだな。守って貰ってるのが当たり前、だしな。料理する貴族とか王族もレアだし」
「ルーチェは、お料理好きだよ!」
「ふふっ、そっか。良かった」
ルーチェ以外のサイラス、ステラ、レイさんの説明を聞いて尻尾がゆっくりと垂れるのが分かるから、気分が落ちてるんだって気付かされる。
でもそっか、そう言う感じがこの世界にはあるんだ。
俺の世界と言うよりも俺の国では立場が上とか下とか関係なく、頑張っている人達に差し入れをするのは普通だったし。社長さんとかも部下達に差し入れとかしたり、大臣の人達も差し入れするって聞いた事がある。
この世界には、この異世界には、それがないんだな、って分かるとちょっと悲しいな。
頑張ってる人を当たり前だと、それで目上の人は料理をしないのは当たり前だって常識だって生きて行くのは、嫌、だな。
「みなさんは料理、ご飯食べて美味しいって思いますよね?」
「?、何急に当たり前の事言ってんだ?」
「俺は思u、います!王宮勤めの料理人が作る料理は超美味しい!」
「栄養も偏り過ぎず、味も適切で食べ応えもありますしね」
「ルーチェは、千結の作ったパンケーキ、好きだし美味しい」
「それはありがとう。みなさんの言う通り、料理を食べたら美味しい、って思いますよね。でも、その背景には必ず料理を作っている人が存在するんですよ」
「「「!、、、、ぁ」」」
「???」
俺の言葉を聞いて、何を言いたいのか分かった3人と何にも分かってない顔をしてるルーチェの四者四様の反応に思わず笑みが溢れる。
理解出来るって事が良かったし、ルーチェはまだ分からなくて当然だと思うから、それはそれで良い。
そして神妙な表情になって、サイラスが口を開く。
「そっか、俺料理作られるのは当たり前だって思ってt、ました。料理人が居る事も当たり前で良く分かってなかった」
「俺もだ。ずっと作られるのが当たり前だって、作られる事への背景を考えた事なんて一度も考えてなかった。作られるのは当たり前じゃない人だって居る、、、、って事だな」
「そうです。サイラスとレイさんその通りです。料理を作ったり、料理に使う食材を作ったり育てたりする人達は必ず居て、それが当たり前だって思ってしまったら、感謝と言う事すら忘れるんです」
「、、、、なんか、俺、まだまだ未熟です。国民達の頑張りをちゃんと見れてない部分があったんですね。料理人も農家も勿論食に関わる人達も、生活に関わるモノを作っている人達が居る事が当たり前だと思って仕舞えば、感謝と言う事すらしないのは王族である前に人として、駄目です」
「ステラ、良い事言うね(頭良いな。言いたい事を言語化出来るってのを)」
「料理作ってくれる人、良い人!ルーチェはありがとうっめ言いたい!」
「ぁー、なんか俺今無性に料理人に感謝伝えたい気持ちになって来ました!」
「悔しい事に俺もだ。前に千結と一緒に料理を作った時、難しかった、けど楽しかった気持ちがある。でも大変だった。料理人は大変な事をいつもやっているんだ、って分かったら感謝は伝えたいな」
「そうですね。レイ兄様、それに騎士や兵士達と同じですね。居る事が当たり前で感謝なんて考えた事がなくて、もし居なくなれば困るのは俺達の方。だから、料理で気持ちを伝える。良い考えです、千結」
「いやぁ、褒められちった」
分かってくれて嬉しくなった。料理は、それを食べる人も居てそれを作る人も居る。
必ずしも物事には背景と言うものが存在するんだって、料理をする事が好きになって分かって来た。料理を食べて美味しそうな表情をされれば嬉しくなるし、間接的にも農家さん達と喜ぶ事、なんじゃないかって思ったりするんだ。
食べる事も守られる事も家に住める事も当たり前の事じゃなくて、心の中だけでも言葉にする事だけでも感謝をしないといけないと思う。
「ルーチェ料理作るの楽しいから食べて欲しいな」
「そうだね、ルーチェ。だから、差し入れに作る料理、考えよ〜!」
「「「「おー!」」」」
リュカさんとも一緒に作って、レイさん達との距離も縮まれば良いな。
ただそう思うだけだ。
料理を作る事で食べる事で感じる気持ちって人それぞれ違うから、それで生まれる絆も関係もあるんだと思う。
パンケーキを食べながら、心の中で思って笑みが思わず溢れる。




