想いほど重い呪いはない、、、、と思う ①
俺の言葉に明らかに動揺を隠せてないリュカさん。
冷静で落ち着いた人だけど嘘とか隠せないタイプの性格なんだって、一緒に居るうちに分かった。
それがこんな形で役に立つなんて、とは思わなかったけどね。
数分後、重苦しい空気の中、やっとリュカさんが口を開いた。だけどそれは真相を話す様な表情ではなく誤魔化そうとしている人の顔だった。
「何の、事かな?呪いって?、僕分かんないな」
「聖女の鑑定から逃げようなんて、良く出来ますね」
「ウグッ、、、、、、、、」
「ハァァ、、、、リュカさん、聞いて下さい」
「な、何?」
「俺は別に辛くないですし、苦しくだってないです」
「!」
「寧ろ、俺の事を思って苦しむ選択を取る方がよっぽど嫌です。もしそんな選択を取られたら俺は「俺のせいだ」って思います」
「そんな事h 「あるんです!」、、、、千結、」
思わず大きな声出しちゃった。
でも、それでも、俺は許せない。自分の命がかかっててそれを助けれる人がそばに居るのに頼らず、寧ろその人を思って苦しむ選択を取るなんて、普通に嫌だ。
あの時みたいに、助けられないなんて、嫌なんだよ!
「、、、、俺、双子の兄弟が居たんです」
「え?、、、、、、、、居た?過去形」
「はい、もう天国に居ます」
「!」
「双子の兄なんですけど生まれた時から病弱、で、、、、俺が小学生の頃ですね、持病が悪化して腎臓の臓器移植をしないと半年も生きれないってなって」
「、、、、」
「それで唯一適合したのが俺だったんです。今のリュカさんと俺みたいな感じですね」
「移植は、したのかい?」
「いえ、する前に亡くなりました」
「え?」
「自殺したんです。兄は」
「、、、、!!」
悲しそうな表情をした俺の言葉を聞いて目を見開いたリュカさん。
あの時の事、今でも忘れない。適合したのが嬉しくてすぐに移植提供しようって決断してその書類を書きに病院に行ってその前に屋上で待ち合わせをしてた兄に会いに行ったんだよね。
『お兄ちゃん!移植提供、僕しようと思う!』
『、、、、そっか』
『?、お兄ちゃん』
『千結、、僕はね、千結がとっても大好きだし、この先僕がとった選択に後悔なんてしないでね』
『???、うん!分かった!』
この時の俺は何も考えずにそう返事した。と言うか良く分かってなかった。同い年なのに兄の方が何十倍も大人だった。
俺はワクワクしてたと思う。兄を自分の力で助けられるんだ、やっと双子だけど勝てた気がしてた。
その日の夜、病院から兄が病室から飛び降りたって、電話がかかってくるまでは。
次に見た兄は静かに眠っている様に死んだ姿だった。
両親も兄も姉も泣いて、俺は訳が分からなかった。俺が居れば助かって長生き出来るのに、って。
病室から兄の遺書が見つかった。
だけど俺には読ませて貰えなかった。
それから数年後の小6の冬休み、家の大掃除で両親の部屋を片付けてたら、兄の遺書を見つけた。俺はすぐにその中身を確認したよ。
中身の内容は、要約すれば、
[自分のせいで、千結の体を傷つけたくない、辛い思いをさせたくない、人生の幅が狭まってしまう。長生き出来ないのに、無理に大事な弟を使って長生きしたくない。だから、死にます]
って感じ。
俺は意味が分かんないし、普通に、普通に怒った。
大事に思ってるんだったら、生きようとしろよ!って。
人の気持ちを無視して勝手に死んで勝手に人が辛くなるんだって決めつけた兄に怒りを沢山ぶつけた。ぶつけれないのに。
「だから、、勝手に人の気持ちを決めつけないで下さい。貴方が俺の事を思ってくれている様に俺だって貴方が大事、大切なんです!傷つけたくないって言うんだったら一緒に傷つき合いましょう!、、、、俺は、貴方だから助けたいんです」
「、、、、」
リュカさんは黙ってしまった。
そりゃあそうだろ、いきなり過去の話聞かされて、普通に重いって感じるよな。
でもね、言わないと変えられないと思った。
未来を変えたい。辛い道に行こうとしてるリュカさんを止めたい、幸せになる道に一緒に行きたいんだって。辛い道を1人で歩くんだったら、俺も一緒に歩く。それで幸せの道に変える。
勝手に1人で抱え込まないで欲しい。
そう思いながら俯くと、リュカさんの声が耳に届いた。
「ごめん」
「!」
「俺、全部自分で解決しようとしてた。ヒューゴやアルに心配されても平気だって言って、、どうせ死ぬんだからっめ何もかも捨てようと思った、、、、でも」
「でも?」
「君達がこの世界に召喚されて、俺の見る景色が変わった。特に千結、君は聖女だから俺と一緒に居る時間は増えて、色んな話をして、そんな時間が楽しくて。長く続けば良いなって思った」
「対等に話せる存在がこんな年下の子かぁ、って思ったけどね、でも大人数の怪我人を一生懸命、だけど真剣に治してる姿を見て「あぁ、この子は強い子なんだ」って思った」
「そんな事は」
「あるんだなぁ笑、これが。適合率99.9%って出た時も正直嬉しかった。生き続けれるんだって思った。だけど、同時にね、君を傷付けたくないって気持ちになった。君は優しいから、絶対に引き受ける。でもそうすれば辛くなる事だってあるって思った」
「だけど、勝手に人の気持ちを決めるな、って言われてハッとした。自分だけは死んでも良いって思ってた。周りの人達はそんな事1ミリも思ってないって今やっと気付いた」
「、、、、」
思わず、言葉を失った。
まさかここまで素直に色々言ってくれるとは思わなかったから。
だけど嬉しかった。
俺と言う存在がこんなにもリュカさんの考えを変えていたんだって分かって。
だから、自分の独りよがりで死ねば、そのあと苦しむんだって事を、大切に思っている人達の気持ちを分かって欲しい。
残された側は、ただ、辛いだけになるんだから。
「千結」
「はい、何ですか?リュカさん」
「多分僕はこれから君の事を思って自分の事を蔑ろにすると思う」
「はい」
「でも、君の願いを叶えないのは、大人としてそして君を大切に思う自分を裏切る事になる。だから」
「はい」
「俺の呪いを解呪するのに協力、してくれないか?」
「はい!お任せ下さい!」
リュカさんの言葉に俺は笑顔で返事をした。
嬉しかった。ちゃんと頼れる存在だって言われている様で。
すると、コンコンッと部屋をノックする音がして、ヒューゴさんの声がした。
「千結様、お飲み物をお持ちしました」
「入って下さい」
ガチャ
「失礼します、、、、って、リュカ起きて居たのか」
「あぁ、さっきな、、、、ヒューゴ、ちょっと良いか?」
「ん?、何だ?、、、、千結様、こちらココアです」
ヒューゴさんからココアを受け取りながら、2人のやり取りを見る。
リュカさんの様子から呪いの話なんだろうなってのは察しはつく。どんな反応するかな、って内心ワクワクしてる俺がいるけど何とか隠しながら熱々のココアをフーフーする。
「、、、、その、千結に呪いの解呪をして貰う、事にした」
「!!、本当か!?嘘じゃないだろうな!」
「本当、だよ、、、、ね?、千結」
「はい、本当ですよ」
「そうか、、、、そうか、良かった」
驚きの表情から安堵の表情に変わって涙を流すヒューゴさん。本当にリュカさんが大切なんだって分かるし、解呪しようって決めた事が嬉しいんだって伝わってきた。
そして長年、大変だったんだろうな、って想像すると頑固なんだな、リュカさんって思ったり思わなかったり。
「よし、そうなったら公務の量を半分に減らす様にアルさんに伝えてくるか」
「いや、別に減らさなくても」
「「そうしたら、解呪に集中出来ないでしょうが」」
「ウグッ、その通りです」
明日からビシバシと解呪に勤しむ、と言う訳じゃないけど、呪いの事も俺なりに調べたり、知ろうと思ったり、だけど受け入れられた、って事だけが嬉しさを感じさせる。
明日でこの世界に来て2ヶ月になる。




