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クリームシチューを食べよう

前回のあらすじ

洗濯をしたら水が真っ黒になった


トールさんから貰った食材を確認してみた。ヤギのミルク、バター、レタス、ブロッコリー、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、それにトールさんの家で焼いたバゲットと、鶏肉。鶏肉は僕たちが出る直前に捌いてくれた。アポロには何とか見せずに済んだけれど、中々ショッキングだった…


これだけの食材があるということは、あれを作るしかないな。


「シチューを作ろう」


まずは鶏肉の皮と脂肪を取る。あんまり油っぽいシチューは好きじゃない。皮は勿体無いので、フライパンで弱火でじっくり焼いてやる。鶏皮せんべいだ。その間に鶏肉を一口大にカットし、塩胡椒をかけておく。


「もう美味しそうな匂いがする」


リビングで座っていたはずのアポロが後ろに立っている。本当に油が好きな娘だな。カリカリに焼けたので、塩胡椒をかけてお皿に盛ると、アポロはいそいそとリビングへと持っていった。


「食べてて良いぞ」


「いや、待ってるよ…」


口ではそう言っているが、さっきからグーグーとお腹の虫が鳴いているようだ。待たせても可哀想なので、少し料理を中断して鶏皮せんべいを頂くことにした。


「うわ、美味しい!パリッパリというかカリカリ?おやつみたいだね!」


塩胡椒もしっかり効いていてうまい。これはビールが欲しくなるな…ビールは流石に売っていなかったので、我慢するしかない。酒造法は流石にないだろうから手作りもできるけど、流石にホップは売っていないし。


いつのまにかお皿は空になった。アポロはじっとお皿を見つめている。放っておくとお皿を舐めかねないので、急いで料理に戻ろう。


野菜の皮を剥き、にんじんとじゃがいもを乱切りにする。玉ねぎはくし切りにして、ブロッコリーは手で一口サイズにちぎる。


鍋にバターを加え、野菜を炒める。ある程度火が通ったら水を加えて一煮立ち。


その間に鶏肉だ。薄く小麦粉をまぶして、フライパンで炒める。あんまり火を通すと硬くなるから気をつけないと。


表面に色がついたら、フライパンの肉を鍋に移してしばらく煮る。ここからはアポロの出番だ。


「おーい、アク取りめいじーん」


「ちょっと、その呼び方やめて」


アポロは不服そうにアクを取る。やっぱり上手い。


「20分くらい見てて」


「はいはい」


「はいは一回でしょ!」


「急に何!?」


特に意味のないやり取りをしながら、僕はホワイトソース作りに取り掛かった。フライパンを洗い、バターを溶かす。溶け切ったら火を止めて、小麦粉を加える。ヘラで混ぜて、再び火をつける。焦げないように、慎重に、慎重に…


「ねえ、タカキ」


「ごめん今無理」


「はいはい」


「はいは一回!」


「それは良いんだ!?」


何とか焦げることなく上手く混ざってくれた。ここで焦げちゃうと、風味が台無しだ。トールさんが作っている姿を見ている分、失敗できない。


後は牛乳を少しずつ加え、ひたすらにヘラで練る!練る!練る!ダマになったら最悪だ!!!


うん、とても滑らかなホワイトソースができた。後は塩胡椒で味を整えてやればほとんど完成だ!


「ねえ、いつまでアクを取るの?もう20分経ってるんだけど」


「ああ、もう大丈夫。ありがとう」


ずっとアクを取り続けていたようだ。アポロも単純作業に文句を言わなくなってきた。


火を止めて、鍋にホワイトソースを加える。しっかり混ざったら、完成!!!


「完成、クリームシチュー!!!」


後は付け合わせだ。レタスを水にさらし、ザルでしっかりと水気を切る。オリーブオイルと酢と塩を混ぜた単純なドレッシングを混ぜたら、簡単レタスサラダの完成!


「お腹減ったよー」


「さっき鶏皮煎餅食べたじゃないか」


「あれで余計お腹が減ったの!」


怒られてしまった。よっぽどお腹が空いているようだ。早く食べてしまおう。


トールさんから貰ったバゲットをちぎり、クリームシチューにつけて、食べる。


「美味しいいいい!!!滑らかな口当たりと、野菜と鳥の旨味、さらに何よりミルクの優しい味がバゲットに絡みついて、絡みついて!!!」


落ち着いて食べてくれ。しかし、気持ちはわかる。これは本当に美味しい。これまでもこの世界の食材は高品質だと思っていたけど、今日のは段違いだ。やっぱり野菜は鮮度が命なのか。にんじんの甘味や、ブロッコリーの食感がたまらない。レタスのシャキシャキ感とほのかな苦味も最高だ。バゲットも表面はサクサク、中はもっちりしていてシチューによく合う。今度作り方を教えてもらおう。


僕たちは話すことも忘れて無言で食べ進めた。作り過ぎてしまったかと後悔したが、全て食べ尽くしてしまった。これはやばい。流石にそろそろランニングでも始めないとメタボになってしまう。


「あー、美味しかった…あっ」


「どうした?」


「ごめん、また出たみたい。行ってくるね」


「食べたばかりなのに、大変だな。気をつけて」


「へへ、ありがとう。先にお風呂入ってて!」


お言葉に甘えて、風呂を沸かした。湯船に浸かりながら、風呂場の天井を見る。少しカビは残っているが、もう慣れてしまった。まあ、いつか綺麗にしてやるさ。


慣れたとか、いつか、なんて言葉を使うとは、この家に来た時には思いもしなかった。ここでの生活が、日常になりつつある。ゴミ屋敷でも、聖地でも、住めば慣れるものだな。住めば都とはよく言ったものだ。


風呂を出て、水で冷やしておいたミルクを飲む。うまい!!!この一杯のために生きている!!!


「あー!美味しそうなもの飲んでる!」


「風呂上がりのミルクの旨さに驚け。お風呂沸いてるから、入ってきて」


「はーい」


魔物を倒してきた後とは思えないほど、軽快な足取りで勇者は風呂場へ消えていった。蛇口を捻り、水を出す。ミルクをうんと冷やしておこう。

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