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農場へ行こう(後編)

前回のあらすじ

鶏と豚が飼われていた


僕達は牧場を後にして、畑へと向かった。移動中、僕は何も話すことができなかった。新しいことを知れば、新しい疑問が湧いて出てきたし、アポロの過去を知ってしまったことに対する罪悪感があった。


「これが、畑だよ」


トールさんに声をかけられて、俯いていた顔をあげると一面に畑が広がっていた。凄い広さだ。数十画分の畑に様々な野菜が植えられていた。


「凄い、これを全部トールさん一人で…?」


「私と妻の二人だよ」


トールさんは誇らしげに言った。これだけの畑をたった二人で管理するなんて、やはりプロは凄い。そんなことを思っていると、何者かに手を舐められた。ざらりとした舌の感触が気持ち悪い。


「うひゃあ!!!」


「おお、ケンちゃんが懐くなんて珍しい」


見ると、白いヤギがペロペロと僕の手を舐めていた。


「ヤギも飼ってるんですか?」


「そうだよ。この白いヤギがケンちゃん、あそこの黒いヤギがハナちゃん。この畑は正確に言えば、私たち二人と、この子達の二匹で管理してる」


「この子達?」


「うん、この子達には雑草を食べてもらってるんだよ。それにミルクも頂いてる」


「有機農法ってやつですか。それにヤギのミルクも聞いたことがあります」


「このミルクを使って、バターやチーズも作っているんだよ」


カプレーゼに使ったチーズは、この子達のおかげだったか。ありがとう。頭を撫でてやると、気持ちよさそうにメエと鳴いた。考えるべきことは山ほどあるけど、何だかどうでも良くなってきた。


畑には様々な野菜が植えられていた。トマト、玉ねぎ、ピーマン、ニンジン、ブロッコリー、キャベツ。それに米や小麦、とうもろこしといった主食。まだ実はなっていなかったが、スイカまであった。


「どれも本当に美味しそうですね」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。君は料理が好きなんだって?」


「はい、趣味は家事ですので」


「変わった趣味だね。だけど、大切なことだ。結局誰しも生きるためには家事が必要だからな。私たちが野菜を育て、君のような人が調理する。そうして、アポロちゃんのような子供が笑顔になってくれたら何よりだな」


「そうですね」


僕たちはしばらく畑を歩いた。トールさんは、僕とアポロのために山ほど野菜を取ってくれた。


「ただいまー」


畑を後にした僕たちは、アポロとトールさんの奥さんが待つ小屋に入った。


「おかえりなさい、お昼ご飯できてますよ」


中からは、とても綺麗な女性が現れた。肌は健康的に焼けていて、とても若々しかった。トールさんと結婚しているということはかなり年上なはずだが、そんなことは少しも感じさせなかった。


「紹介するよ、妻のデールだ」


「はじめまして、タカキさん。アポロちゃんからお話は聞かせてもらいましたよ」


どんな話を聞かせたのだろう、あの勇者は。


「タカキ、私たちもお昼ご飯にしようよ!」


アポロは弁当箱をブンブンと振った。そんなに振るとおにぎりが崩れてしまうじゃないか。


「あらお弁当?これ、タカキさんが?」


「はい、今朝作ったものです。すごく簡単なものですけど」


「いいわねー。アポロちゃんも、タカキくんの料理は美味しいってずっと言ってたのよ」


「ちょっとおばさん、やめてよ!!!」


アポロは顔を赤くして弁当箱を振り回した。だから振り回すなっての。


僕たちは昼食を取ることにした。僕たちの弁当はおにぎりと卵焼き。デールさん達はトマトと千切りキャベツのサラダ、それにベーコンエッグとトーストだった。僕たちは少しずつお裾分けすることにした。


「あら、このおむすび美味しいわね!キャベツとごま油が効いてるわー。卵も絶妙な甘さね!この層になってるのはどうやって作ってるの?」


「ありがとうございます!キャベツとごま油は鉄板ですよね!卵焼きは、フライパンに薄い卵の層を作ってくるくる巻くんですよ。しかし、このサラダ、シャキシャキでとても美味しいです。キャベツの甘味がすごく出てる。それにこのベーコン、ひょっとして自家製ですか?」


「そうなのよ。キャベツはやっぱり鮮度が大事だから。採れたてのキャベツだから甘いでしょ?ベーコンは一週間前から塩漬けして、しっかり1時間は燻してやるのよ。面倒だけど、これを怠ると保存が効かないし、何より美味しくないでしょう?」


「ねえ、おじさん。あの二人、なんであんなに早口なの?」


「同じ趣味を持ってるからだろうな。私たちには普段話しても伝わらないから、溜まってたんだろう」


僕とデールさんはすっかり仲良くなり、お互いにレシピを教え合うことを約束した。何故だか、トールさんとアポロの結束も深まっていた。


食べ終わり、片付けをした僕たちは家に戻ることにした。トールさん達は、両手が一杯になるほどの野菜と、搾りたてのヤギのミルクを渡してくれた。


「良い人達だったね、あの二人」


「そうでしょう?私も久しぶりに話せて楽しかったー」


「ここの野菜が美味しい理由がわかったよ」


あの二人の誠実な仕事があるから、こんなに素晴らしい食材ができるのだろう。


「また近いうちに遊びに来よう」


「うん!」


僕は家に帰る間、トールさんから言われたことを思い出していた。アポロの過去、腐敗した城の人、何故だか僕は入ることができる聖地、そして


「あの子を支えてやってくれ」


トールさんの真剣な目つきと、そのセリフが頭から離れなかった。



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