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第31話

第3部隊所属の魔法使いキリについて、僕が余計な一言を言ってしまった結果、秘密裏に調査が行われることになった。

各部隊合同訓練と称して近所にある、中がとても広いダンジョンに行くことになった。


その中で第3部隊の隊長とメディアさんが彼女の動向を見て怪しいところがないかを見るというのだ。


訓練の内容は簡単でダンジョン内にある何かをみつけると言うもので、部隊単位で動くことになる。

つまり部隊というチームでのチーム戦だ。

レンは『ゲームみたいで楽しそうだね』とワクワクしているようだった。


ルールはシンプルで殺してはいけないということと回復魔法で治らないような怪我をさせないということだけだった。

つまり多少の怪我ならOKということである。


僕にそんなコントロールができるのかわからなかったので木刀を持参した。

初級ダンジョンなので魔物が出てきても木刀でなんとかなる。


────


入場してから30分は戦闘禁止の作戦会議及び事前移動の時間に充てられた。

メディアさんは「第3部隊から潰す」とやる気満々だった。

僕は前線で探知を任され、伝達係や後方支援など各人、細かく役割が与えられた。


回復要員として神殿から何人か派遣されていて、その中にはカオリさんもいた。

話はできなかったが遠くから僕をみつけると大きく手を振ってぴょんぴょん飛び跳ねていた。

嬉しいのと恥ずかしいのとで僕は小さく手を振り返して隠れるようにその場を去った。


レンは普段あまり出てこないのだが、今日はとても張り切っている。

『敵の配置から見るとここは囮でここからやって来るよ』などと教えてくれる。

僕はそのまま隊長に伝える。

「なるほど、第3部隊がやりそうなことだな。」

僕たちは第3部隊を潰す配置を取った。


僕がクリアは目指さないのかと聞くと、全部潰したあとでゆっくり探すという返答が返ってきた。

ここら辺が第1部隊が異常と言われる所以だろうと僕は思った。


『まるで忍者みたいだね』とレンが言った。

第1部隊は囮に向かって数人がわざとみつかるような行動を取った。

その両脇では出撃のサイン待ちの隊員たちが並んでいる。

その後ろから第1部隊の人たちが後ろを取り、一斉に制圧した。

さらには囮役の人たちも捕まえることができた。


メディアさんは捕まった人たちの中にキリがいないのに気がついた。

よく見るとロキ、マル、メイの3人もいない。

探知をするとこの近くにはいないようだった。


「数人は第2部隊の方に行ってるようです。」

僕がそう言うとメディアさんは「そうみたいね」と言った。キリを探していたのだ。

捕まった人たちは戦闘不能ということでダンジョンの出口へと連れられていった。


僕たちは敵の場所を把握して潰していく作戦を取ることになった。

第2部隊はどうやら5人くらいのチームに分けて探し物を優先させたようだった。

それも何チームかが減っていく様子を見るとロキたちのチームが活躍していると思われる。


第1部隊は2手に分かれた。

相手の倍の人数で囲む作戦はうまくいき、次々と第2部隊の人たちを捕まえる形になった。


そしてとうとう第2部隊は全滅との連絡を受けた。

あとはロキたちだけである。

それを彼らも察したのかもしれない。

僕たちの目の前に急に現れたのだ。


「隠れないとは勇気あるわね!こちらは全員残ってるのよ。」

メディアさんはロキに向かってそう言った。

ロキはニヤリとわかって戦闘態勢を取った。


『あの魔法使いの子、何か企んでるよ。こちらからいかないほうがいい。』

レンにそう言われ、僕はメディアさんに伝えた。

「そうね、あの第2部隊が次々とやられたのには何かあるわね。」


僕たちは睨み合いになった。

ロキたちは剣を構えるだけでこちらに向かってくる気配はない。


「どうしたんですか?第1部隊の人たちは腰抜けばかりなんですか?」

ロキはそう言ってこちらを煽るように笑った。

ショウさんは今にも出ていってしまいそうだったがメディアさんに止められていた。

「あの余裕は確かにおかしいわね。」


ショウさんとメディアさんは何かを話し合い、「敵の罠がわからないので引いてみる」と言った。

僕はメディアさんと少し離れたところで彼らを観察することになった。


一斉に第1部隊はその場から後退した。

ロキの表情に焦りが見えた。

「なんだよ!逃げるのかよ!」

ロキたちは追いかけてくることもない。


「探知の結果、彼らはずっとこの辺りにいます。あの場所に何かあるんだと思います。」

「そうね、私もそう思うわ。」

彼らが動かないと読み、第1部隊の他の人たちは探し物を始めることにした。


ロキたちはそれでもその場から動かず、ケンカが始まったように見えた。

「こんなのつまらないわ!私は行くわよ!」

メイが叫んでいるのが聞こえる。

「一人で行ったってどうにもならないだろ?ここにいたらまた倒しに来るだろ?」

ロキはメイをなだめようとしているように見えた。

マルは何も言わずにそれを見ている。


キリは空中に杖を向けて何かを詠唱し始めた。

杖からは煙のようなものが出てきて、まるで空飛ぶ蛇のように空中をグニャグニャと漂った。

「これを見た人が戻ってくるでしょ。」

キリはそう言ってニヤリと笑った。


「あそこまであの場所にこだわるのはなぜかしらね。」

「わかりません。何かしらの罠があるとは思うのですが。」


僕は痺れを切らして1人ずつ倒すことを提案した。

地面に何かあるのだとしたら踏まなければいいだけだ。

「最悪、僕が戦闘不能になるだけなので、あとの対応はメディアさんに任せます。」

メディアさんは何か言いたげだったが、「わかったわ」とだけ言った。


僕は回り込んでロキたちの後方に移動した。

メイはふてくされて地面に座り込んでいた。僕はまずメイを狙った。

メイはすぐに僕の気配を察知したようだったが声を出す前に僕の攻撃を受けて失神した。

僕は他の人に気づかれないように一旦引いた。


マルが「寝ることないだろ!」とメイの腕を掴み、失神しているのに気がついた。

僕はそのマルを次に狙った。

そして間髪入れずにロキも倒した。


キリは僕をみつけて嬉しそうに笑った。

「ルイくん、やっと来てくれたのね!」

僕はゾワッとするのを感じた。

僕はキリを観察した。キリはニコニコと僕を見ている。攻撃してくる素振りはない。


「君は魔女の手下なの?」

僕はなんだか腹が立ってキリに直接聞いてしまった。

「魔女ってもしかして隣の大陸にいるとかいう魔女のことかしら?」

キリは驚いているように見えた。

「そうだよ。」

僕がそう言うとキリは声を出して笑いだした。


「そうだったのね。だからみんなで私を観察してたのね!」

キリの顔から笑顔は消え、僕を睨みつけた。

僕は木刀を構えたままキリを観察した。キリは怒っているように見える。


「私が優秀だからって疑うなんてひどいわ。傷ついたわ!」

キリは杖を空に向けて何かを詠唱しだした。

するといろんなところで爆発したような音が聞こえ、森が燃えだした。


僕はすぐにキリを拘束した。

メディアさんもすぐにやって来て「離脱しましょう」と言った。

メディアさんは笛を吹いた。

「離脱の合図をしたわ。私たちも出口に向かうわよ。」

僕は失神したキリを抱えてメディアさんの後ろを追いかけた。


ダンジョンの中は炎に包まれていた。

出口は第1部隊の人たちで混み合っていた。

「よし、全員を確認した。早く出よう。」

僕たちをみつけたショウさんがそう言って、僕は出口に押し込まれた。


ダンジョンの中はひどい煙だったが外に出ると何事もなかったようだった。

キリはまだ目を覚まさない。

「すみません。魔法を使われる前に倒すべきでした。」

「まさかあんな魔法が使えるなんて想定外だったわ。彼女すごいわね。」

ショウさんもメディアさんもキリが魔女の手先なのかどうかわからないと言った。しかし彼女が敵になるとかなり大変だろうということはわかった。


「うちの子がやり過ぎたみたいで申し訳ない。」

第3部隊の隊長のダイさんがやって来た。

「彼女の魔法の才能がすごいことだけはわかったわね。」

「そうだな。思ってたよりもすごい魔法使いだったな。」


話しているとキリが目覚めた。

「隊長!すみません、捕まってしまいました。」

キリはダイをみつけすぐにそう言った。

「怪我はないか?」

ダイは拘束していたロープを解いてあげた。

「大丈夫みたいです。ルイくんは強いけど優しいから。」

キリはそう言ってまた気持ちの悪い顔で僕を見た。

そしてハッとしてショウさんとメディアさんを睨みつけた。

「私が魔女の手先だって疑ってるんでしょ?ひどいです!」

キリは金切り声を出してワーワー騒ぎ出した。


「あなたがルイくんに向かって何かを詠唱していると聞いたわ。それが呪いか何かなら疑われてもしかたないわよね?」

メディアさんは負けずにそう言い返してキリを睨んだ。


「私がルイくんを呪う?!なぜそんなことを?!」

「それはこっちが聞きたいわよ。魔女の司令か何かだと疑われてもしかたないんじゃないかしら?」

「私は呪いなんてかけてません!私…私は…ただ…。」

キリは突然顔を赤らめた。


「私はルイくんが好きなだけです。ルイくんが私を好きになってくれるようにおまじないをかけていただけです…。」

キリはそう言って「キャッ」と両手で顔を覆った。


みんなはそれを聞いてポカンとなった。

「嘘じゃないみたいですよ。彼女からは邪悪なものを感じません。」

声の方を振り返るとカオリさんがいた。

「カオリさん?」


カオリさんは「たまにいるのよね」と言って苦笑いをした。

僕たちは神官からお墨付きをもらったキリをこれ以上疑うことはできなかった。


「疑ってごめんなさいね。でもおまじないはやめてあげてくれるかしら?呪いと間違われるのはあなたも不本意でしょう?」

「はい…。すみませんでした…。」

キリはそれ以上文句を言わず俯いてしまった。

僕はなんだか悪いことをしてしまったようで「ごめんね」と謝った。


「大丈夫。こんなことくらいじゃ私の気持ちは変わらないわ。」

キリはそう言ってまた不気味な笑顔を見せた。


結局、キリは魔女と無関係だとわかり、演習は終了した。

ダンジョンの中はまだ燃えていて進入禁止になった。

誰も隠した物をみつけられなかったということで引き分けとなった。


────


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