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第30話

僕たちはすぐに騎士団本部に戻り、ライオットさんにすべてを報告した。

ライオットさんはとても驚いていたがすぐに国王に報告すると言ってくれた。


「ルイくんはなぜあの竜族たちが人間の言葉を理解できると思ったんだい?」

ショウさんはライオットさんへの報告が無事に終わって安心した顔で僕に聞いた。

「それは…、ドラゴン…、じゃなくて竜族たちが僕たちに気がついていたのに攻撃してこなかったからです。それだけじゃなくて敵対心は一切感じませんでした。だから、話せばわかるんじゃないかって。変…ですよね…。」

「変だね。あの見た目だからこちらは恐怖心が勝ると思うんだ。それなのに君は友好的だと感じたんだろう?」

「それに、卵を温めていたんです。そんなまわりで戦ったら可哀想じゃないですか。卵には何も罪がないのに。」

ショウさんはそれを聞いて何も言えなくなった。ショウさんの家には生まれたばかりの赤ちゃんがいたのだ。


「まぁ、今回は結果オーライみたいなところがあるけど、まだわからないからね。国が彼らをどうするか議会にかけられるらしいよ。」

僕はそれを聞いて少し不安になった。


「彼らは火を吹きました。下手をすると街が火の海になるかもしれませんよ。体は硬い皮膚に包まれているし、牙も大きかったです。それに大きな翼、長い尻尾。もし倒せたとしてもこちらに甚大な被害が出ると思います!戦うべきではありません!」

僕は必死に訴えた。ショウさんは「俺に言われてもなぁ」と困っていた。


「ルイくん、ちょっといいかな?」

そこにライオットさんが僕を呼びに来た。

僕は城の中の入ったことのない場所に連れて行かれた。


────


「君がルイか。竜族の件、聞かせてもらった。わしにはどうも信じがたいのだが、君の才能をもって真実だと言いきれるかの?」


王様と大臣と呼ばれる人とライオットさんと僕だけが部屋にいた。

きっと僕の才能のことを知っている人だけで話したかったのだろう。


「はい、彼らから敵意は少しも感じませんでした。彼らは隣の大陸に来た魔女の被害者です。全滅させられそうなところを命からがら海を渡って逃げてきたのです。

それを倒してしまおうだなんて、僕たちも魔女と同じことをするのと一緒です。」

国王はウンウンと頷いた。


「ちなみに君は竜族を倒そうと思えば倒せると思うかね?」

「おそらく倒せます。」

かなり強いだろうけど負ける気はしなかった。


「わかった。竜族についてはこちらから手出しすることはないよう各国に通達しておこう。しかし彼らから攻撃されたら全力で守るし、こちらも武力を使う。それでいいかな?」

僕は「ありがとうございます」と言って頭を下げた。


「ライオットが戦うことになったらこちらの被害は大きかっただろうと報告を受けたと言っておった。それを自信満々に倒せますと言うのはさすがじゃな。

竜族には君からわしの言葉を伝えてくれるかね。

お互い干渉しないでいこうとな。しかし、魔女がこちらに来たら…協力する日が来るかもしれん。できるだけ友好的に話をつけてきてくれ。」


「はい!」

僕は敬礼をした。


────


僕はメディアさんの馬を借りてショウさんと二人で竜族がいる山へ戻った。

ガロンは僕をみつけると空から降りてきてくれた。


「ガロンさんこんにちは!今日はこの国の王から伝言があって参りました。今少しお話よろしいですか?」

「時間はいくらでもある。どうぞ話してくれたまえ。」

ガロンの横にジュウトもやって来た。

「ジュウトさんこんにちは。」

「ルイ、よく来たな!」

ジュウトは嬉しそうに翼を広げてバタバタさせた。

すごい風が巻き上がり、僕の髪の毛はボサボサになった。

「こら、ジュウト暴れるでない。」

ジュウトはガロンさんに怒られて「エヘヘ」と笑っていた。


「ではお伝えします。我が国王は竜族の存在を認めた上でお互い干渉しないでいきたいと言っております。それでよろしいでしょうか?」

「ふむ。我々もそうしてくれると助かる。」

「あともう一点、隣の国にいる魔女がこちらに渡ってくる可能性がないとは言えません。その時には協力しあって魔女を倒したいと言ってました。」


ガロンは魔女という言葉が出て嫌そうな顔になった。

「我々は魔女に対して激怒している。しかしアレにはどう足掻いても勝てなかった。力になれるかはわからない。逃げ出す者もいるかもしれない。

しかし私は魔女を倒せるなら力になると約束しよう。」

「私もその時は駆けつけます!」

ジュウトは興奮したようで火を吹き出した。

僕は反射的に避けたが危なく燃えるところだった。

「ごめんごめん。」

ジュウトはまたガロンに怒られていた。


「今回のこと、こちらの王も喜んでおります。ありがとうございました。新転地でお困りごとはありませんか?もし我々にお手伝いできることがあれば言ってください。」

ショウさんはにこやかにそう言った。

きっと卵のことが心配だったのだろう。


「お気遣い感謝する。今のところ何も問題ない。この近くには餌場となる森や湖がある。我々の棲家としては素晴らしいところだ。」

ショウさんは「よかったです」と安心していた。


話しているうちに暗くなってしまい、僕とショウさんは竜族の棲家にある洞穴に泊まっていくように言われた。

最初は躊躇したのだが、結局泊まることにした。


他のドラゴンたちも僕たちに興味津々のようで遠くから見ていたドラゴンたちも近づいて話しかけてきた。

「魔女と人間は違うの?」

若いメスと思われるドラゴンがショウさんに聞いた。

「魔女に会ったことがないけど、多分、魔法が得意な元人間なんじゃないかと思ってるよ。魔女っていう種族がいるなんて聞いたことないからね。

しかしひどいことばかりする魔女と同じ人間だと思うのは嫌だな。」

「ここにも来たら嫌だな。」

ドラゴンたちは悲しそうな顔をした。


「僕は全力で人間も竜族も守りたいって思ってるよ!何もしていないのに攻撃してくるようなやつは絶対に許さない。」

僕がそう言うと「ありがとう」と言ってドラゴンは僕たちにフルーツを分けてくれた。

僕たちはそれを食べて洞穴に入った。


中には藁のようなものが敷いてあり、暖かかった。

「まさか竜族の棲家で寝ることになるとはな!」

ショウさんはそう言って笑って「明日は朝一番で出るぞ」と言って寝てしまった。

僕もなんだか疲れていて目を閉じるとすぐに眠ってしまった。


────


外が騒がしくて僕は目を覚ましてしまった。

洞穴から出るとドラゴンたちが嬉しそうに空に向かって炎を吐いていた。

「どうしたの?」

僕は燃やされないように近づいて聞いてみた。

するとみんなが囲んでいたものが見えた。


そこには小さな小さなドラゴンがよちよちと歩いていたのだ。

「生まれたんだ!元気な男の子だよ!」

ジュウトは嬉しそうにまた空に向かって炎を吐いた。

温めていた卵の一つが孵化したようだった。

竜族の卵は生まれるまでに何年もかかることもあるのだと言った。


小さなドラゴンは僕の方に向かって歩いてきた。

転びそうになったので思わず手を出してしまった。

「おまえ、エサか?」

小さなドラゴンは僕に向かってそう言った。生まれたばかりなのに話ができたのだ。

「僕はルイだよ。エサじゃないから食べないで。」

ドラゴンたちは一斉に笑った。


薄暗かった空に朝日が射し込んだ。

ドラゴンたちが輝いて見えた。それはとても美しかった。

僕は戦わなくてよかったと心から思った。


ショウさんも起きてきて帰る準備を始めた。

僕も戻って荷物をまとめた。

ガロンや他のみんなに「ありがとう」と言い、僕たちは山をあとにした。


「エサにされなくてよかったな。」

ショウさんは帰り際に僕にそう言って笑っていた。

見られていたのかと恥ずかしくなった。


僕もショウさんもなんだか清々しい顔をしていた。

馬を止めることなく、僕たちは進んだ。


────


僕たちが竜族の巣の中で一泊したと、すぐに噂が広かった。

すごいと褒める人や嘘だと疑う人もいて、確かに信じがたいだろうと僕も思う。

レンはドラゴンと友達になれたと喜んでいる。


僕は今回の功績が認められて馬を与えられた。

竜族と渡り合ったのだから文句を言うものはいなかった。

騎士団本部内を歩いているときにキリにみつかった。

僕はできるだけみつからないように過ごしていたのだが、彼女は第1部隊をみつけるといつもキョロキョロして僕を探しているように見えた。


キリは光の如く僕の前に現れ、僕の両手を握りしめる。

「ルイくん、竜族を倒したんだってね。すごいわ。これからもがんばってね。」

キリはそう言ってまた嫌な笑顔を見せた。

「ありがとう。でも倒したんじゃなくて友好関係を結んだだけだよ。」

僕は握られた手を離そうとしたがキリの握力はすごい。

「そうなのね。さすがルイくんだわぁ。優しいのね。」

キリはなかなか離してくれない。

僕は呪いをかけられているんじゃないかと気が気じゃない。


「ごめんね、ルイくんを離してくれるかな。」

メディアさんが見かねて無理やりキリの手を剥がしてくれた。

キリは「チッ」と舌打ちをしてこちらを睨んでいる。

僕とメディアさんはその場から逃げるように去った。


「あの子、何なのかしら?」

「わかりません。まさか魔女の手先だったりしませんよね?」

僕が冗談でそう言うとメディアさんは歩くのをピタッと止めた。


「調べたほうがいいかしら。」

振り返るとメディアさんは眉間にシワを寄せて険しい顔をしていた。

「いや、冗談です。さすがにあんなに怪しすぎるのはおかしいですよ。潜り込むならもっとみつからないようにするのでは?」

僕は焦って発言を訂正したが手遅れだった。

「彼女は魔法使いだったわよね。ちょっと隊長に会ってくるわ。」


メディアさんは僕の言葉を聞かずに行ってしまった。

まさか本気にするとは思っていなかった。

『確かに少し様子がおかしいけど悪意はないと思うんだけどな。』

レンはいつもキリを擁護する。

『でもあんな感じの子は対応を間違えると刺してくるからね。気をつけてね。』

レンは恐ろしい言葉を付け加えた。

『気をつけるよ』


何をどう気をつけるのかわからないから、できるだけ接点を持たないようにしようと思う。


────


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