第27話
2度目の騎士団入団試験にやって来た。
前回は残念ながら不合格になってしまったので、今日こそは合格しないといけない。
みんなは形だけの試験だと言ったが僕はちゃんと合格したかった。
王都の騎士団本部で行われる試験は近隣の街でのものと違うらしい。
どうやらエリート集団がここに集まるというのだ。
僕はそれに混ざって試験を受けることになる。
だいたいの流れはライオットさんに聞いていた。
試験は身体検査から始まり、実技試験、筆記試験、面接と3段階あるという。
僕は面接なんて受けたことがない。だけどきっと苦手だと思う。
『僕も面接は苦手なんだよね』とレンも言っていた。面接の才能の印があればいいのに、そんなものはないらしい。
身体検査は難なくクリアした。
前回の検査のときよりも背が伸びていた。少し嬉しい。
試験には男女合わせて16人いた。
身体検査は全員クリアで実技試験へと移行した。
前回同様二人一組になる。
前回と違うのは今回は魔法使いがいるということだった。
僕は唯一の魔法使いの子とペアになってしまったのだ。
まわりからの「不運だな」という同情の声が聞こえてきた。
どうやら剣士は不利になるようだ。
「はじめまして。魔法使いのキリです。」
キリは僕と同じ15歳で、遠くの街からわざわざやって来たと教えてくれた。
物腰の柔らかな可愛い女の子だった。
僕は完全に見た目で油断していた。
彼女は試験が始まると恐ろしい魔女のようになった。
「さぁ!楽しみましょう!」
木製の杖を持ったキリは高らかに笑った。
まわりで試合をしている受験者たちもその声にビクッとしている。
キリは笑いながら僕に魔法を放ってくる。
それは雷のようだったり炎のようだったり、バリエーション豊富なようだ。
『逃げてばかりじゃ終わらないよ』
レンが見かねて終わらせるようにと言ってきた。
僕は呼吸を整え、一気にキリめがけて飛んだ。
キリはそれに気がついて僕に向けて大きな何かを飛ばした。
僕はその大きな何かを避けるのではなく、正面から受ける形でその魔法を斬った。
その瞬間のキリの驚く表情が見えた。
僕はそのままキリの脇腹を木の坊で叩いた。
キリは防御力がないようだった。
すぐにゴロンと倒れて「痛い」と泣いてしまった。
僕はオロオロした。助けようと駆け寄ろうとした瞬間、キリがニヤッと笑った気がした。
僕に向けてまた魔法を放ったのだ。
僕はすぐに気がついてまた魔法を斬って首に木の棒を当てた。
「試験じゃなかったら君の首は飛んでいたよ。」
僕は卑怯なやつは嫌いだ。
キリはさすがに怯えて杖を離した。そして両手を上げた。「参りました」と言ったのだ。
他の組はまだ試合をしている。
僕はキリを睨みつけた。キリはビクッとして控室の方へ行ってしまった。
笛の音が響き、実技試験が終了した。
結果は1時間後。僕はヤンさんに作ってもらったお弁当を食べることにした。
控室に行くとキリは僕から離れて部屋の隅に移動した。
「魔法使いをやっつけたんだって?」
振り向くと背の高い金髪の美しい男性が立っていた。
「あ、はい。」
「あ、ごめんね。俺はイグニス、イグって呼んでくれ。君はルイだろ?」
僕は「はい」と頷いた。
「神殿にいたって聞いたよ。神官になれなくてこっちに来たの?経歴が珍しいからみんな君に注目してるよ。」
僕は納得した。神殿でダメだったから騎士団に来たと思われているのだと思った。
「僕は剣士なので元々神官にはなれないんだ。実家のある小さな街で騎士団試験に落ちちゃってね。それで遠い親戚のセルジオさんの家で修行っていうか、勉強させてもらっていたんだよ。」
嘘ではない。イグも「なるほど」と納得してくれたようだった。
「俺は初挑戦なんだ。どうせ騎士団になるなら本部で働きたい。だから準備はバッチリなんだ。お互い合格できるといいな。」
イグはそう言って手を差し出した。僕はイグと握手をした。
「絶対に合格しよう!」
────
僕もイグもついでにキリも実技試験に合格した。
筆記試験に進めるのは全部で5人になっていた。
かなり厳しい試験のようだ。
筆記試験は騎士団の歴史や一般常識など様々な分野から問題が作られていた。
今回は作文がなかったので安心した。きっと面接がその役割を担うのだろう。
筆記試験は才能のおかげでスラスラ解くことができた。
試験が終わるとイグは「だめかも〜」と嘆いていた。
キリは絶対に僕の背後を取る。振り向くと僕を睨んでいて何かブツブツと言っているように見えた。
イグが小さな声で「呪いをかけてるんじゃないか?」と言った。
僕にもそうとしか思えなくなって怖くなった。
カオリさんに呪い避けのバリアを張ってもらうべきだったと後悔した。
筆記試験を合格したのは僕とイグとキリの3人だった。
僕は心の中でキリは落ちているといいなと思っていた。それはイグも同じようだった。
「魔法使いは少ないから優遇されるらしいんだよ。」
母もそんなことを言っていたのを思い出した。
そして面接試験が始まった。
ライオットさんと第1部隊の隊長と副隊長が試験官だった。
「ルイくんはなぜ騎士団に入りたいのかな?」
ライオットさんは怖い顔のまま優しい口調で質問をした。
「僕の家は父も母も兄も騎士団です。母は引退していますが、今でも素晴らしい魔法使いです。
僕は小さい頃からそんな家族を見て憧れていました。街のみんなから慕われる素晴らしい職業だと思います。危険なことがあるのは承知しています。僕はそれを踏まえてもどうしても騎士団に入りたいと思うようになりました。
僕は、僕の力が少しでも役立つなら、それを騎士団で発揮したいと考えて志望いたしました。」
うまく言えたとは思えない。しかし今の僕にはこれが精一杯だった。
試験官の3人はニコニコして頷いていた。
うまくいったのだろうか。
「ルイくんは騎士団の訓練に参加していたね?うちの団員たちは君にどう見えましたか?」
第1部隊の隊長ショウさんは、にこやかなまま質問した。
「みなさんの連帯感は素晴らしいと思いました。仲間を信じて任務にあたっていて、それぞれが自分の最大限の力を発揮しているように見えました。不安や不信感があるとそうはならないと思います。
それはきっと日々の訓練の成果だと思います。」
3人はまた「うんうん」と頷いていた。
「最後に私から聞かせてください。今回の試験ではルイくんは剣の腕も筆記試験の結果もずば抜けていました。前回の試験で落ちたのはどうしてだと思いますか?」
終わりそうな雰囲気の中、副隊長のメディアさんが手を上げて僕に質問した。
ライオットさんは眉をピクリと動かし、僕を睨みつけるように見た。下手なことは言えない。
「それは…僕がまだ子供だったからだと思います。憧れだけでは騎士団になれないのだとそこで気づかされました。
僕は落ちてから修練を積みました。神殿での学びも僕にとってはとても素晴らしい経験となりました。神官の方、魔法使いの人たちと訓練できたのもとても良かった。
僕は騎士団になるにあたって足りなかったものをこの王都に来てから得ることができたと考えております!」
僕は一生懸命話した。本当は別の原因があったがここで得た経験はとても大きいと思っていることは真実だ。
ライオットさんは安心したようにウンウンと頷いていた。僕はその顔を見て少し安心した。
「なるほど、それは素晴らしい経験でしたね。納得しました。ありがとう。」
メディアさんも厳しい顔から柔らかい雰囲気に変わっていた。
何かしら疑いを持っていたのだろう。洞察力の鋭い人なのかもしれない。
「結果はすぐにお伝えできると思います。控室でお待ちください。」
ショウさんにそう言われ、僕は「ありがとうございました」と言って部屋を出てきた。
次はイグの番だった。僕が笑顔で出てきたので少し安心したようだった。
「イグなら大丈夫だよ!」
僕はイグの肩をポンと叩いた。
「いってくる!」
イグは緊張した顔で笑顔を見せてくれた。
僕は控室に戻った。
キリは面接室へと移動するところだった。
また僕を見て何かブツブツ言っている。
僕は寒気を覚えて震えてしまった。
『大丈夫?』
レンが心配そうに声をかけてくれた。
『僕、あの子に呪いをかけられたりしていない?』
『キリっていう魔法使いの子?僕には彼女からは悪いモノは感じないよ。』
レンはそう言ったけど僕には信じられなかった。
油断しないでいこうと思う。
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3人の面接が終わって30分ほどたった。
みんな緊張しているようで口数も多くなかった。
部屋がノックされてメディアさんが現れた。
「みなさん合格です。これから説明がありますのでこちらへ来てください。」
イグは「よっしゃ!」と喜んですぐに「はい!」と敬礼をした。
僕も同じように敬礼をした。
形だけと言われていたけど合格すると嬉しいものだった。
僕は第1部隊に、イグとキリは第2部隊と第3部隊とそれぞれ別れることになった。
キリは別れ際に近づいてきて僕の手を握った。
「ルイくん、部隊は別れちゃったけどこれからもよろしくね。」
キリはそう言ってジトっとしたちょっと気持ち悪い笑顔を見せて去って行った。
僕は恐怖で固まってしまった。
イグは僕の背中を叩き「大丈夫か?呪われたか?」と笑っていた。
「冗談でもやめてよ〜」
僕は身震いして第1部隊の部屋へと向かった。
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第1部隊は花形と呼ばれ、優秀な人が集まっていると聞いていた。
隊長のショウさん、副隊長のメディアさん、そして隊員は26名いた。
「第1部隊だけ人数が少ないけど優秀な人がたくさんいるから安心してね。」
メディアさんはみんなに僕を紹介してくれた。
そして詰所の中の設備を軽く説明して宿舎へと案内してくれた。
騎士団メンバーは基本的に宿舎に住んでいる。
すぐに対応できるようにと言うことだ。
部屋は相部屋で二段ベッドが2台あった。
僕は部屋に入って右側の下段を使うように言われた。
「荷物は今日中にここに運んでね。訓練は明日から、質問はある?」
「いいえ!ありがとうございました!」
メディアさんは笑顔で部屋を出ていった。
すぐに部屋の3人がやってきた。
ワンさん、トゥイさん、サンドさんの3人で、3人とも騎士団に入って半年未満の新人だった。
「ルイです。よろしくお願いします。」
僕は深いおじぎをした。
3人とも気さくでいい人たちだった。
「第3部隊の訓練に参加したことあるんだろ?あっちはどんな感じなんだ?」
ワンさんは興味津々のようだ。
訓練は部隊ごとに行われ、その内容はお互い知らないのだそうだ。
僕は訓練の流れを話した。
「やっぱり、俺たちの訓練は異常みたいだな。」
3人はなんだか嫌な顔をした。
僕はそれを見て不安になった。
荷物を取りに行かなければいけないのでそれ以上の話はできなかった。
異常な訓練とはいったい何なんだろう。
僕は不安を抱え、騎士団本部を出た。
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