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第25話

大きな両開きの扉がギギギと音を立てて開いた。

中は暗く、ズズズズという変な音がしている。

カオリさんが中に向かって光る系の魔法を1発撃ち込んだ。

中はやはり広く、円形になっている。

そこにとても長い何かがぐるぐると回っていた。


「ひぇっ蛇じゃん!きもちわるっ!」

メイが嫌な顔をした。

「中に入ります。」

カイが先頭になって中に入っていく。

「いきます!」

カオリさんとカイは一斉に蛇に向かって魔法を放った。

今までとは比にならないくらいとても強い魔法に見えた。

それは蛇に当たり、蛇は動きを止めた。

そしてこちらを睨みつけているようだった。


チチチチチという鳴き声が不気味に響く。

とぐろを巻いた姿は普通の2階建ての家一軒分くらいの大きさだろうか。


カオリさんたちは間髪入れずに魔法を放ったが言っていたとおり貫通している感じがない。

蛇はこちらに向かって移動してきた。


僕はその瞬間スイッチが入った。

気がつくと蛇を真っ二つに斬っていた。

それでも蛇は暴れてまわりの壁にぶつかりまくっていた。

僕は頭めがけて飛び、蛇の首を落とした。


その時、しっぽ側の半分がカオリさんたちに向かってぶっ飛んでいった。

それをメイが魚をぶつ切りにするかのように切り刻んでいた。

メイはかなりの剣の使い手のようだ。


丸い部屋の中で切り刻まれた蛇の体がドスンドスンと地面に落ちた。

切り身になってもまだうねうねと動いている。

すごい生命力だ。


「ルイくんやったね!」

メイはいつの間にか僕の隣に来て蛇の頭から何かを採集していた。

「毒蛇って口の中に毒の袋があるんだよね!高く売れるんだ〜。」

この空間でメイだけ楽しそうだった。


他のみんなは蛇があまりにも強かったことにショックを受けているようだった。

「確かに10000のレベルだな。」

ロキは蛇の覇気にやられて動けなくなったと言っていた。

マルもそれは同じようだった。


カオリさんとカイは「もっと精進しないとね」と言っている。

僕は刀を布で拭いてから鞘に戻した。

この刀の斬れ味は短剣の比じゃない。

斬っている感覚すらない。


「ルイくん、前みたいにおかしな目をしていなかったね。」

「本当ですか?」

それは僕も感じていた。

目の前にある敵を純粋に倒そうとしている自分がいただけのように思った。


「鍛錬はここまでみたいね。」

部屋の向こう側が明るく光って見える。

「あれって?」

「ダンジョンクリアですね。出口が出現したようです。」

マルはそう言い、蛇の切り身を嫌な顔で避けながらそっちへ進んで行った。


「また来ましょ。」

カオリさんはニコっと笑って僕の腕を引っ張った。

出口は入口と同じくらいのサイズの穴だった。

その穴の手前にきれいな箱がある。


「クリア報酬だ!」

メイはぴょんぴょん飛び回って喜んでいた。

「神官殿、開けてください。」

ロキはもう馬鹿にするような顔も発言もなくなっていた。


カオリさんはゆっくりと箱を開けた。

中には大きなきれいな石が入っていた。

「わぁ!高そう!」

メイの目がハートになっているように感じた。


「これは…すごい魔力です…。」

カオリさんが持ち上げるとそれは眩しすぎるくらいに輝いた。

「共鳴してるみたいですね。」

カイは目を細めながらその様子を見ていた。


僕はきれいな布を渡した。

カオリさんは石を布で包み、カバンにしまった。

箱には金貨も入っていて、カオリさんは全員均等に分けた。


「こんなにもらっていいのかよ?」

ロキは怪訝そうな顔をしていたが「みなさんのおかげです」とカオリさんは最後まで礼儀正しくおじきをした。

僕とカイもそれに倣う。


騎士団の3人は横に並び敬礼をした。

そして握手をして「おつかれさま」と言った。


出口の穴を四つん這いになってくぐり抜けるとそこは入ってきた場所だった。馬が木に繋がれ、桶から水を飲んでいるのが見えた。

辺りは暗くなっている。


「へぇ…、本当にダンジョンって不思議ですね。」

僕は入り口の穴に首を突っ込んでみた。

さっきの部屋も宝箱も消えていた。

「ルイくん!今日はもうおしまいだよ!」


僕はロキに引っこ抜かれる形になった。

「もう遅いからここで野営する。」

ロキはそう言って馬に餌と新しい水をあげに行った。


────


騎士団の3人は手慣れた感じで火を起こし、テントを張ってくれた。

メイはいつの間にか採集していたなんの肉かわからないものを焼いていた。

僕は鍋を渡され、料理のスイッチが入ったようだった。

森に向かい、キノコや野草をどんどん鍋に入れ、メイの焼いていた肉も入れて火にかけた。

マルの持ってきていた調味料も迷うことなく入れると、たちまちいいにおいが漂った。


「何ができるのかしら。」

カオリさんはクンクンとにおいを嗅いでいた。

「多分、シチューみたいな…感じだと思います。」

僕にもそれが何になるのかわからなかった。


グツグツ煮えるのをみんなで待った。

僕はなんとなく感覚で出来上がったのがわかった。

テキパキと盛り付けてみんなに配った。


「今日はみなさんありがとうございました。」

カオリさんがそう言い、みんなでいただきますをした。

「なんだこりゃ!めちゃくちゃうまいじゃないか!」

ロキは一気に口に流し込むように食べ、おかわりをした。


みんな美味しいと褒めてくれた。

「ルイくんは料理もできるんだね。」

メイはニコニコとしていたがどこか品定めでもしているような感じがした。


「はい、得意みたいで。」

僕は目をそらして「エヘヘ」と笑って見せた。

メイは僕の手首を掴み印を見た。

そして剣の印を指でなぞった。

「私の印と変わらないのになんでだろうなぁ。」


僕が困っているとカオリさんがメイの手を掴んで離してくれた。

「ルイくんが食べられなくて困ってます。」

カオリさんは少し怒っているようにも見えた。

「あ!ごめんね!私って空気が読めないタイプで!」

メイはそう言って笑っていた。


メイはがさつなように見えるが実はそれは仮の姿に見えた。

本当はとても優秀で鋭い感性を持った人だろう。

しかし僕はそれに気がつかないふりをした。

きっとカオリさんとカイも気がついている。

だから二人は僕の両隣に座り、なんとなくガードしていた。

メイはそれを見てクスッと笑った気がした。


夜は更けて、僕たちはテントに入った。

大きなテントは6人が寝てもまだスペースがあった。

寝る前にカオリさんがテントと馬たちにバリアを張ってくれた。


僕は安心して目を閉じた。


────


翌朝、「もう一回入りたい」と言うメイを引き剥がすようにダンジョンをあとにした。

とりあえず報告が先である。

カオリさんは報告書を書くために騎士団メンバーたちの所見を聞いた。


みんな口を揃えて初級ダンジョンではないと言った。

あの迷路のような道は入ってきた人たちを惑わせ、最終的には真ん中にいるボスのところへ誘導されているような構造になっていた。

そしてあの蛇はそれを餌としている。


「上級ダンジョン相当として報告書を書きます。」

みんな異論はないようだった。

「あの蛇を倒すには少なくとも腕のいい剣士が2人以上いないと厳しいかもしれないな。魔法攻撃が効きにくい感じがあっただろう?たまにいるんだよな。そういう物理攻撃特化みたいなやつ。」

僕はなるほどと思った。

カオリさんたちが弱いのではなく、魔法攻撃が効きにくいタイプとかもあることを知った。


僕には知らないことが多すぎる。

もっともっと修行をしないとだめだ。


────


僕たちは王都に戻り、騎士団メンバーたちと別れた。

去り際にメイは「また料理作ってね」と言って僕の手を握りしめてカオリさんに睨まれていた。

どうやら二人は相性があまり良くないようだ。


カオリさんはすぐに部屋に入り、報告書を書くといった。

僕とカイは荷物の整理をしていた。


「あのメイっていう女性ですが、とても強いですよね。ヘラヘラしてるように見えましたがその奥には別人がいるように思えます。」

「うん、僕もそう思ってたよ。」

「ルイくんに興味を持ったようです。印のことを探ってくる気がします。十分に気をつけてくださいね。」

カイは心配そうに僕を見ていた。

兄とは全然タイプが違うのに、僕は故郷の兄を思い出した。

「はい、ありがとうございます。」


カオリさんはすぐに戻ってきて「報告に行くわよ」と言った。

セルジオさんの部屋に行くと「早かったですね」と驚いていた。

どうやら普通はダンジョン攻略するには何日かかかるようだった。


「視察といったのにクリアしてきてしまったのですか?」

宝箱から出てきた石を見てセルジオさんは明らかに呆れた声を出した。

「騎士団メンバーは帰還を提案しましたが、私がそれを退けました。倒せると判断したからです。」

「それでそこにとんでもないバケモノがいたというわけですね。」

「はい、魔法攻撃が効きにくいタイプでした。腕の立つ剣士がいないとまず討伐は難しいでしょう。」


カオリさんはそう言って僕を見た。

「ルイくんはまだ経験が足りません。もっと彼に修行を積ませるべきかと思います。今回はもう一人剣士がいたので誰も負傷しませんでしたが、彼女がいなかったら私たちの誰かが大怪我をしていたと思います。」

僕とカイも頷いた。


「わかりました。視察ご苦労様でした。しかし騎士団の助言を無視して討伐を強行したのはいただけませんね。それが初挑戦のダンジョンならなおさら。」

セルジオさんはカオリさんを睨みつけた。


「私の判断が甘く、申し訳ありません。次からはもう少し慎重に進めます。」

カオリさんは深いおじぎをした。

僕とカイもすぐに倣った。


「よろしい。またお願いすることもあるでしょう。みなさん精進を続けてください。」

僕とカイは宝箱の中身の金貨をセルジオさんに渡した。僕たちにお金はそんなに必要ない。二人でセルジオさんに渡そうと話していたのだ。


「これは…あなた達の報酬でしょう?神殿に渡さなくていいのですよ?」

「いや、僕、家賃も払ってませんし、食費だって。」

僕がそう言うとカイもウンウンと頷いていた。

「なるほど、それでは預かっておきます。食費など気にせずにたくさん食べるように。」

「はい!」

僕とカイは笑顔で返事をして神官長室を出てきた。


「今日はもう休んでいいって。ヤンさんに美味しいもの作ってもらいましょ!」

僕たちはニコニコで神殿をあとにした。


初めてのダンジョンは刺激的でとても楽しかった。


────


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