第24話
ダンジョン視察の話はとんとん拍子に決まり、僕たち3人と騎士団から3人の計6名で行くことになった。
僕は屋敷に来た時に持ってきていた防具を久しぶりにつけた。
そして行く前の日に磨き上げた刀も持ってきていた。
金床の印を持つ僕には刀の手入れも、才能によって簡単に行うことができた。
刀は刃こぼれしておらず、磨くとその美しい姿を取り戻した。
鞘は相変わらずボロボロだったが使えないことはない。
そうして僕は刀と短剣の二本を持ってきている。
カオリさんは神官の白い衣装を着ている。そして真っ白な杖の先には赤い大きな石がついている。とても美しい。
カイはセルジオさんのお下がりの杖を持ってきていた。
魔法は杖なしでも使えるのだが、杖があると、より高精度で、より高レベルの魔法が放たれるのだそうだ。
カイは初めての杖で嬉しそうにしていた。
中身は大人でもこの世界では15歳だ。
カオリさんもそうだけど大人びた感じの中で時々見せる年相応の表情はとても可愛らしく見える。
本人に言うと怒られそうなので言わないが。
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ダンジョンまでは馬で半日ほどかかる。
僕は馬になんて乗ったことなかったがきっと才能のおかげでうまく乗りこなせた。
馬の印はないが何かの動物の印がある。
おそらくそれのおかげだと思われる。
カオリさんもカイも馬の扱いに慣れていた。
貴族やお金持ちの家に生まれると小さな頃から乗馬を習うのだそうだ。
実はカイは貴族の家の子だった。神官の従者になると言って反対され、家出のような状態で勝手に出てきたのだといった。なかなかガッツがある。
騎士団から来たのはロキ、マル、メイの3人。
いずれも5年以上の経験を持つ人たちで安心だ。
3人は「お世話係」として任命されたと言っていた。
「新しい神官様が怪我をしないようにお守りするのが役目です。」
ロキはふざけながら僕たちにそう言った。
なんだか感じの悪い人だったがカオリさんは「どうぞよろしくお願いします」と礼儀正しく相手をした。
ロキはフンッとバツが悪そうにしていた。
マルは寡黙なタイプでふざけるロキをスルーすることが多い。
メイは女性で優しい雰囲気があるがとても口が悪かった。いや、素直な人なのだろう。彼女からは悪気が感じられない。
「初級ダンジョン視察のお供だなんてハズレ仕事なわけよ。出てくるちっちゃい魔物を倒すだけでしょうからね。それでも城で訓練してるよりは楽しいわけ。」
メイはそう言って笑っていた。
僕はメイみたいな人は嫌いじゃない。
昼過ぎには大きな山の麓についた。
植物も生えていない崖だらけの山だった。
そこに入り口はあった。
大きな岩と岩の間に穴がある。こんな所をよくみつけたなと感心した。
「中に入る前に昼食にする。」
ロキは近くの大きな木に馬を繋いできてくれた。
僕たちはヤンさんに作ってもらったサンドイッチを食べた。相変わらず美味しい。
メイさんがよだれを垂らしてこちらを見ていたので1つおすそ分けした。
「ルイ!お前、いいやつだな!」
メイさんは美味しそうに食べた。子供みたいでかわいい。
「神官長様からできるだけ3人に戦わせるように言われている。とりあえず先頭はロキとメイが行くが魔物が出てきたら前に出て戦っていい。危ないと判断したら私たちが助太刀する。それでよろしいかな?」
マルはそう言って僕たちを見た。
カオリさんは「よろしくお願いします」と言っておじきをした。
僕とカイも真似しておじぎをした。
騎士団の人はプライドの高い人が多いから、なんでも従っておいた方がいいとカオリさんが言っていた。
確かに揉めることもなく、うまくやれている。
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岩の間の穴はそんなに大きくない。
僕たちは四つん這いになってその穴をくぐった。
しかし中に入ると不思議な空間が広がっていた。
急にまるで神殿の中にいるような不思議な空間が広がっていた。
その光景があまりにも美しく、僕は少し見とれてしまった。
「これって山の中だよね?」
僕はついカオリさんに向かって聞いてしまった。
「そうだけどそうじゃないって感じかしら。ダンジョンって不思議なものなのよ。別次元にあるって感じね。出入口が決まってて、そこからしか出入りのできない箱の中って言うとわかりやすいかしら?」
「なるほど。」
ロキとメイを先頭に進んでいくことになった。
『ルイ、探知してみて』とレンに言われたので僕は集中してみた。
しかし歩きながら目を閉じて探知するのは僕には難しかった。
ぼやっと少し先に何かが数体いるかな?くらいのことしかわからなかった。
僕は隣を歩くカオリさんに「何かいるみたいです」と教えた。
カオリさんは頷き、杖を構えた。
広い通路じゃなかったので僕はいつでも短剣を抜けるように構えた。
「おっ、魔物がいるぞ!」
ロキは楽しげにそう言うと後ろに下がって僕たちに前へどうぞとした。
「こんなもの、私で十分です。」
カイはそう言って杖を向けると無詠唱でネズミのような魔物を倒した。
「やるじゃん!カイくん!」
メイさんはピューっと口笛を吹いた。
僕は止まっている今のうちにともう一度探知してみた。
ここはどうやら迷路のようになっている。
このまま進んでいくと行き止まりになりそうだった。
僕は紙とペンを出して地図のようにここの構造を描いた。
みんなは僕のしていることを不思議そうに眺めた。
そしてとんでもなく強そうなやつがいるのがわかった。
「カオリさん、ここにすごく強いのがいます。」
僕は手書きの地図をカオリさんに見せた。
「強いってどれくらい?」
「さっきのネズミが1だとしたら…そうですね、10000くらいですかね。」
それを聞いていたロキが笑いだした。
「ネズミが10000いたって魔法があればちょちょいのちょいだろう!」
そう言ってロキは進んで行ってしまった。
僕たちは急いで追いかけた。
僕の描いた地図と魔物の位置はほとんど合っている。
「ルイくんはどうしてそんなことまでわかるの?すごいね!」
メイさんはいつの間にか僕の隣に来ていて地図を見ながら歩いていた。
僕は少し悩んで「僕の剣士の才能はちょっと人と違うみたいで。」と言い訳をした。
それはメイの手首にも剣の印があったからだ。
「へぇー!便利でいいね!」
メイは何も疑う様子もなくそれを信じてくれた。僕は少し心が傷んだ。
「ねぇロキ!ここ曲がらないと、そっちは行き止まりだよ!」
メイは一人でスタスタ進むロキに向かって叫んだ。
ロキはそれを無視してまっすぐ進んで行った。
「ほらぁ。だから言ったじゃん。」
目の前は崖になっていて危なく落ちるところだった。
「なんでわかるんだよ。剣士ってそんなこともできるとか聞いたことないぞ。」
ロキはブツブツ言いながら道を引き返した。
それからはロキも素直に僕の地図に従ってくれた。
魔物もそこそこ出てきてカオリさんとカイはサクサク倒していった。
まだ僕の出番はない。
進むとトラップも出てきた。
僕は一度みんなを止めてトラップの探知をした。
探知しながら歩けたらいいのだが、僕にはまだ無理そうだった。
レンが言うには使えば使うほど練度が上がる。
僕はがんばってたくさん探知した。
踏んだら発動するトラップや壁にスイッチがあるトラップなどいろいろあった。矢が飛んできたり、岩が落ちてきたり穴が開いたりする。
ロキは言っても避けられなくてカイの無詠唱魔法に助けられていた。
大きな魔物は素材として価値があることがある。
僕にはさっぱりわからないがメイが喜んで採取していた。
ダンジョンに入ってから2時間くらいたっただろうか。
ダンジョンの中は建物っぽかったり、ジャングルっぽくなったり、めちゃくちゃだった。
道もたくさん枝分かれしていて、行き止まりやトラップなどたくさんある。
「少し休憩しよう。」
後方のマルがみんなの足を止めた。
「ルイくん、さっきの大きな魔物はネズミ1に対してどれくらい?」
マルは少し前に倒したガイコツのオバケみたいな魔物のことを聞いてきた。
「そうですね、50とかそのくらいですかね。」
僕はなんとなくで答えたがマルはそれを聞いて顔をしかめた。
「この先に10000相当がいるんだよね?」
僕は「はい」と頷いた。
「このダンジョンさ、本当に初級なのかな?出てくる魔物はたいしたことないけど、行き止まりに崖とかトラップも多すぎだし、初心者なら少し進んだだけで死んじゃうかも?」
メイは眉間にシワを寄せてロキとマルに言った。
「私もそう感じていました。魔物のわりに内部構造が複雑で迷ったら大変なことになりそうだなって。」
「確かに地図がなかったら俺は崖から落ちていたかもしれん。」
3人は意見が一致したようだった。
「と言うわけで進むのをやめて戻ろうかと思う。」
ロキは大真面目な顔で僕たちに言った。
「どうして?もうすぐボス部屋でしょ?」
「そうだ。だからそこに入る前に戻る。」
「それは私たちにボスが倒せないだろうという判断ですか?」
カオリさんとカイは納得いかないという感じだった。
「ルイくんの探知が正確なのはわかりました。その探知が10000という数値を出したんです。私には倒せる自信がないです。」
マルは正直にそう言った。
ロキとメイもウンウンと頷いている。
「僕、倒せる気がしてます。」
僕は探知でそう判断した。かなり強いだろうけど危険な感じはしなかったからだ。
「ルイくんが倒せるって言うなら倒せると思うわ。もちろん私だって自信あるけどね。」
カオリさんはそう言ってニコっと笑った。
多数決をしても3対3である。
視察は神殿の仕事なので主導権はどちらかというとこちらにある。
カオリさんは一歩も引かないという構えだった。
「わかった。無理だと判断したら全員ダッシュで逃げる。それでいいか?」
ロキは真剣な顔になってそう言った。ロキが戻ると言ったのはそれなりの理由があってのことだったのだろう。
ボスはダンジョンの、ど真ん中にいるようだ。
気配が丸い部屋の中でぐるぐると回っているように感じた。
「私とカイが魔法で注意を引きつけるわ。多分二人の魔法じゃ貫通しない気がしてるの。そこでルイくんの出番よ。魔法を避けながら剣でブスっとやってほしいの。」
「わかりました。」
僕はそこが広い部屋のようなので刀を使ってみることにした。
ぶっつけ本番だけど失敗する感じは一切なかった。
刀を持つと勝手に構える格好になった。
刃を斜めにし、重心を下げ、敵に集中する。
ロキとマルは扉をみつけ「じゃあ開けるよ」と言った。
僕たち3人は扉の前で臨戦態勢になった。
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