↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/32

第18話

騎士団の入団試験が始まった。

実技試験は二人一組で行う。

僕は1人余るので部隊長のハルクさんとやることになった。


ハルクさんはまっすぐな、剣の長さくらいの棒を持っている。

「ルイくん、不思議な棒を選びましたね。」

ハルクさんは僕を見てニヤリと笑った。


「好きに打って…」

ハルクさんは何か言いかけていたが僕はすでにハルクさんの胴のあたりを棒であてた。


「えっ?」

ハルクさんは棒を構えたままよろけた。

「すみません!もう始まってるのかと!」

僕は何かズルをしてしまったのかと焦った。体が勝手に動いてしまったのだ。


「いえ、始まってましたよ。問題ありません。ではこちらからもいきますよ。」

僕は顔の前で斜めに棒を構えた。

防御すればいいということなのだろう。


しかし僕は1歩前に出たハルクさんの足に棒を当てた。

ハルクさんはそのまま態勢を崩して転びそうになった。

まわりで見ていた騎士団たちがどよめいていた。

僕はそのままハルクさんの背後にまわり、背中を一太刀で斬るかのように棒の先を当てた。


「そこまで!」

団員の一人が僕とハルクさんの間に入って試合を止めた。

「部隊長大丈夫ですか?」

団員の一人がハルクさんのところに駆け寄った。

「はい、なんともありません。なぜ止めたのですか?」

ハルクさんはケロッとしていてそれを見た団員は困惑した顔を見せた。


「申し訳ありません!部隊長が背後から斬られたように見えまして…。そうですよね、ただの棒ですよね。」

団員はハルクさんの背中を見て首を傾げていた。


「申し訳ありませんでした。お続けになりますか?」

団員は僕にも頭を下げた。

「いえ、ルイくんの実力はもうわかりました。あなた方もわかりましたよね?」

団員たちは黙って頷いた。


「あの、僕…。不合格ですか?」

僕はなんだか急に不安になってきた。

ハルクさんも団員さんもなんだか様子がおかしい。


「いえ、ルイくんは実技試験合格です。他の皆さんの邪魔にならないように他の試合を見て待っててください。」

ハルクさんはにこやかにそう言うと他の人たちがやってる方へと行ってしまった。


『ルイくんはやっぱり僕と同じ刀使いだね。この世界に刀はあるのかなぁ』

『刀って剣の種類?聞いたことないな。』

『そう言えば金床の印があったよね?自分で作れるかもね?』

そう言われたらあったような気もする。

後で確認してみよう。


他の人たちの試合はなかなか終わらなかった。

みんな睨み合い、打ち合うまでが長い。

僕がさっきやったこととは全く違っていた。


ハルクさんはまた笛を吹いた。

「以上!やめ!」

誰も怪我することなく試験を終えた。


「結果は1時間後に発表します。合格したら次の試験になります。」


僕は母が作ってくれたお弁当を食べることにした。

食べていると隣にさっき漁師の印があると話しかけてきたナッチが来た。


「なぁ、お前何したんだ?途中でやめさせられてただろ?」

彼はどうやら僕を心配してくれているようだった。

「あ、あれは団員の人が見間違えで止めちゃって。もうわかったから続けなくていいって。」

「合格ってことか?やっぱり、剣士の才能はすごいな!」

ナッチは安心したように僕を見て笑顔を見せた。

「そうみたい。ナッチはどうだったの?」


ナッチは「わからん!」と言って笑った。

相手も同じようなレベルでお互い何度か打ち合ったけど牽制し合って勝負にならなかったといった。

「勝ち負けじゃないって言ってたからね。」

「受かりたいなぁ!!」

「うん。」


僕はお弁当を食べ終えてまわりを見回した。

みんな緊張しているのか受験者同士で話している人はいなかった。


────


実技試験の合格者が発表された。

僕とナッチとエムという女性が合格となった。

落ちた4人は悔しそうに帰っていった。

「では筆記試験を行いますのでこちらへどうぞ。」

ハルクさんは3人を別室へと連れていった。


机と椅子が3セット用意されている。

僕たちはそれぞれ座り、ハルクさんの説明を聞いた。

一般教養の問題と作文がある。

これは父と兄から聞いていたので対策済みだった。

しかも何かの才能が発揮されたようで、考えるよりも前にスラスラと解答していった。


他の二人も止まらずに書き続けているようなので順調だろうと思った。

作文は『騎士団の未来』というテーマで好きに書いていいと言われた。


僕は作文があまり得意ではない。

書いている途中で何が言いたいのかわからなくなってしまう。

しかしこちらも何かの才能が発揮されたのだろう。

騎士団の行く末から王国の未来の懸念まで綴る大作が出来た。


────


「入団式で会えるといいな!」

ナッチは帰り際に笑顔でそう言った。

明るくてそんなところが少し兄に似ている。

エムはクールなタイプのようで「あなただけいない可能性はあるわね」とナッチに言ってクスッと笑っていた。


こうして入団試験は終わった。

僕は才能をフル活用した。

なんだかズルをしたようで後味が悪い。


『ズルじゃないよ。君の才能は君のものだよ。』

頭の中でレンがそう言ってくれた。

『ありがとう!』

僕は少し元気になり、家族が待つ家に帰った。


家に帰るとみんな興奮しているようだった。

「おかえり!!すごかったみたいだな!」

父は僕の背中をバンバンと叩き嬉しそうにそう言った。

「え?なにが?」

「ハルクから聞いたよ。ルイの剣筋が全く見えなかったと笑っていたよ。」

そのことについては僕にもあまりわかっていない。

体が勝手に動く感じだったからだ。

確かに速かったのはわかる。


「剣士の才能ってすごいね。」

「え、うん、まぁそうなんだが、父さんはそこまで速くは斬れないよ。ティムも素早い方だがさすがに剣を見失うほど速くは動けんよな?」

「そうだね。そんなこと言われたことないもんな。」

父と兄は「見てみたい」と言った。


外はすでに暗かったが僕たちは庭に出た。

庭には剣の訓練をするための道具が何個かある。

木にぶら下げられた枝や太い丸太、魔物の皮で作った人形のようなものもある。


父はそれらを棒で順番に打ち込めと言った。

いつも練習している木の棒は短いと感じた。

「もう少し長いのがいいんだけどな。」

僕がそう言うと母が魔法で木の枝を折り、いい感じに削ってくれた。

「ありがとう母さん。」


僕はそれを持った。

僕の中でスイッチが入ったのがわかる。

目で的を確認した瞬間に僕は飛び出していた。

すべての的に一瞬で当ててまわった。


父と兄はそれを呆然と見ていた。

的は当たったときの独特な動きをしている。

「父さん、見えた?」

「いや、なんとなくしか。でも確実に的をとらえてたみたいだ。」

的には細くて長い傷が薄っすらついていた。


「ルイ!すごいぞ!」

「うん、素晴らしい。」

家族みんなに褒められて僕は嬉しかった。


────


しかし現実は残酷だった。

僕は騎士団の入団試験に合格しなかった。

どうやら他の二人は合格したらしい。

才能に任せて書いた作文がよくなかったのかもしれない。


家族はそんなはずないと怒っていたが僕はそれを受け入れた。

「また3ヶ月後の試験を受けるよ!」

「そ、そうだな!合格するまで何度も受けたらいい!」

今にも騎士団に文句を言いに行きそうな勢いだった父が僕の言葉で冷静になった。


不合格の通知と一緒に1枚の手紙が入っていた。

それは王都にある騎士団本部への召集命令のようであった。

父に見せるとすぐに険しい顔になった。


騎士団は街ごとにある。

父と兄がいるのはアルデール王国の中の僕らがいる街イチルの騎士団である。

王都の騎士団は本隊と呼ばれ、各騎士団から優秀な人材を集めてできた言わばエリート集団である。

各街にある騎士団が各街を守る存在だとすれば、本隊は国を守る存在である。


「本部が不合格者になんの用事だよ。」

父は嫌な顔をした。

「私がついていくわ。」

父と兄は騎士団の仕事がある。そこで母が同伴を名乗り出てくれた。

「それがいいな。ルイ、母さんの言うことを聞いて、本部では勝手なことをしないようにな。」

「わかりました。」

父の様子からして本部とはいろいろめんどくさい場所のようだ。


母と僕はすぐに支度をして王都に向かった。

王都へは徒歩だと半日かかるが馬車だと1時間くらいで到着できる。

母は商人の馬車に乗せてもらえるように交渉した。


「レイラさんの頼みなら断れないよ!」

商人はすぐに馬車の荷台に僕たちを乗せてくれた。


王都に行くのは久しぶりだった。

数年に一度大きなお祭りがある。その時は家族みんなで王都に行った。


今日はあいにくの天気で雨が降りそうだった。

徒歩じゃなくてよかったと思った。


『ねぇ、ルイ、嫌な予感がするよ。』

森を通り抜ける道に入りかけたときにレンが話しかけてきた。

確かに僕にも何か嫌な感じがした。

『探知のスキルが有効かもしれない。目を閉じて耳を澄まして。敵の気配がわかる?』

レンには敵がどこにいるかがわかっているようだった。

僕は馬車の荷台の中で目を閉じて集中した。

道の先に何かがいる。

道を挟んで両脇にそれぞれ3人ずつ、6人いることがわかった。


「母さん、この先に盗賊がいるみたいだ。」

「えっ?わかるの?」

僕は静かに頷いた。

母は僕に荷台に積まれていたスコップを渡した。

そして何かを詠唱し始めた。

馬車全体が光ったように見えた。

「馬車にバリアをかけたわ。盗賊が来たら倒すわよ。」

母は見たことがないかっこいい顔をしてそう言った。

「はい。」


程なくして馬車が急に止まった。

「6人います。」

母は静かに頷き、「行くよ」と言って馬車の荷台から降りた。僕もそれに続いた。


「荷物をよこせ!死にたいか?」

汚い格好の男たちが剣やナイフを構えて馬車を囲んでいた。

母は魔法で攻撃すると小さな声で言った。

しかし僕は母の詠唱が終わる前に6人ともスコップで倒してしまった。


「えっ?」

母の魔法は誰に当たることなく空に向かって放たれた。

「ルイがやったの?」

「そうみたい。」

スコップの金属の部分が少し曲がってしまっていた。

僕は商人のおじさんに「ごめんなさい」と謝った。

おじさんは両手を上げたまま呆然と立ち尽くしていた。


「レイラさん、これはいったい…?」

「実はうちの子、剣の才能を賜ったんです。なかなかやるでしょ。」

母がそう言って笑うと商人のおじさんは僕に抱きついた。

「ありがとう坊主!スコップは気にするな!少しくらい曲がってても使えるだろ!」

と言ってガハハハと笑った。


おじさんは倒れている盗賊を森の方に寄せてロープでぐるぐる巻きにした。

「王都についたら騎士団に連絡するよ。」

おじさんは「それまで生きてるといいな」と付け加えた。


僕たちは何事もなかったかのように森を抜け、王都に到着した。


────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。