8話 白と黒の狐面
――あぁ、寒い。出血が止まらない。
体が弱っていくのがわかる。
町の人間は皆、魔法士団に釘を刺されていたのか、助けてくれる奴は誰一人としていなかった。そのまま魔法士団とともに隣町に避難していった。
そして、サラの両親は僕を見るなり唾を吐いた。なんでサラを助けれなかった、と。少年はなにも言い返せないまま俯いていた。
◇◇◇
少年はか細い呼吸を続ける。
「フュー......フュー......」
呼吸をするたびに傷口が痛む。
このまま少年は自分は死ぬと思っていた。
ビチャ、ビチャ、と遠くから濡れた地面歩く音が聞こえる。この町に人が残っているはずがない、少年はこの音の正体はなんだと思っていたが、足音はしだいに大きくなっていき、少年の目の前で音が止まった。
「かわいそうに。誰もあなたを助けてくれなかったのね」
その声は、気を抜くと吸い込まれてしまうような妖艶さを醸し出していた。
少年は顔を上げると、そこには鼻から上を隠すように白の狐面をつけた、しっかり手入れのされた黒髪おかっぱで、黒装束の巫女のような服を着た女がいた。
「でも、大丈夫。あなたはこれから世界を変える存在になる」
そう言いながら、狐面の女は和柄の鉄扇を取り出し。
「ウィルイグノートゥス」
そう唱えると赤黒く光るクリスタルが浮かび上がり、少年の胸元にめり込んでいく。
「うがぁあ!」
少年の体はいきなり悲鳴を上げ出した。全身がうだるように熱くなり、強烈な痛みを催した。
クリスタルが吸収されると、しだいに痛みが引いていく。
「これだけは忘れないでちょうだい。魔法が扱えないかわりに、あなたの心にはいつだって剣が眠っているわ。その剣がこの混沌の世界を導く光となるでしょう」
――なにを...言ってるんだ...?
少年は力を完全に使い果たしたのか、徐々に意識を手放していった。
◇◇◇
「あら眠ってしまったようね...。サクラ」
「は〜い、なんですか〜?」
サクラと呼ばれた口調の緩い女がどこからか現れる。こちらは打って変わって、普通の巫女のような風貌をしていおり、きれいに毛先を整えてあるおかっぱで、雪白の髪色をしている。黒装束と同じ顔の黒の狐面をつけている。
「彼をダルカンまで連れていってちょうだい。そうすれば自ずと力を求めて、鍛錬を積むでしょう」
クスッと黒装束が笑う。
「姉さんって〜、たまにとんでもない事考えますよね〜。この子かわいそ〜」
「あら、そうかしら?あなたもまんざらでもないって顔してるわよ」
「えへへ〜、こういうの嫌いじゃないですしね〜」
「それじゃあ、おねがいするわ」
「りょ〜かいで〜す!いってらっしゃ〜い!ゲート」
黒装束とお揃いの鉄扇を取り出しそう唱えると、空間が歪み紫色の渦が発現した。少年が歪みに吸い込まれていく。
少年が完全に吸い込まれると歪みはきえた。
そして、謎の2人は袖で口元を隠し、クスクスと笑いながら夜の闇に消えていった。




