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失意の剣士とアミーウェルス  作者: 隙織尾
第一章 西の国、ダルカン王国編
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9話 師との出会い

「...あぁ...ぅうう...」


 少年が目が覚ます。


「あれ?体が痛くない...それに傷もなくなってる!」


 少年の傷はきれいさっぱり無くなっている。しかし、そんなことよりもっと衝撃的なことが起こっていた。


「は?え?な、なんだ?ここはいったいどこなんだ?」


 少年の瞳の中に映り込んできたのは、むき出しの地層、鋭く天に伸びる尖塔、植生が乏しく荒れた大地、あたり一面に広がる荒野だった。そして、奥の方には三匹の狼型のミクレスがいるのが見えた。

 ここは少年の元いた場所とは全てが異なっていた。


 「は...は...ははっ、ははハハハ!そうか...そうか!これは、幼馴染一人さえ、救えなかった僕への罰なんだッ...!」


 目尻に涙が浮かぶ。地面に手をつき、嗚咽する。ボン、ボン、何回も硬い地面を叩く音が鳴り響く。


「クソッ...クソッ...クソックソックソクソクソ!!結局お前はなにもできない、魔法も使えない、ただの役立たずじゃないかッ...!」


 こぼれた涙が、荒れた大地に滴り落ちる。

 狼型のミクレスは少年に気付くと、勢いよく近づいてくる。


「あれは、ミクレス...。ここで死ねば楽になれる...」


 脱力してへたり込む少年にミクレスが襲いかかる。

 そのはずだった。

 突如、少年とミクレスの間に人影が割り込む。

 白髪の髪は辮髪にまとめ、顎髭は長く伸ばしている。着古されている修行僧のような服を着ていて、フード付きマントをはためかせた老人は、なんとつるぎ使ってミクレスと対峙している。

 老人はミクレスのクリスタルをものともせず、無駄のない横薙ぎで前足を削ぎ落とし無防備な胴体を一突きし絶命させる。そのままもう一体の首を切り飛ばし、三匹目には最初に回し蹴りを入れる。ミクレスがよろめき隙ができたところを、背中から腹にかけて両断した。


「他愛無い。おい小僧、無事か?」


 そう言いながら鞘につるぎを戻す。


「ええ、まあ」

「小僧、先程死んでもいいなどと思っていたじゃろ」

「いえ...そんなことは...」


 老人はボスンとあぐらをかいて座った


「図星か、どれこの老骨になにがあったかぶちまけてみろ」


  ◇◇◇


 少年はひとしきり今まで起きたことを話した。話し終えるとまた少年の顔は涙で濡れていた。


「魔法も扱えず、幼馴染を助けられなかったとな」


 老人は一息ついて話を続ける。


「じゃがの、いかなる理由があろうと死にに行こうとするやつは、愚か者だとわしは思うぞ。よく考えろ小僧。小僧が死んだところで幼馴染は助けられんし、救われん。どれだけ挫けようと進み続けるしか選択肢などないんじゃよ。戦え、抗え、喪失も恐怖も不安も、恵まれなかった才能さえも糧として立ち向かうんじゃ!」


 老人は少年の肩を掴みながら言う。


「でも...どうすれば...」

「わしが小僧に稽古をつけてやる」

「えっ?」

「聞こえんかったか?小僧を鍛えてやると言ってるんじゃ」

「僕なんかのために...いいんですか?」

「うむ、まあここまでしてやった以上、放っておけんわい」


 ほっほっほっとにこやかに笑う。


「僕はグラディオル・セルフォスっていいます。これからよろしくお願いします。...えっと」

「ああ、名乗ってなかったか。わしはスクリーバ、師匠でもなんとでも呼ぶがいい。よろしくな小僧!」

「じゃあ師匠。いくつか聞きたいことがあって、いいですか?」

「うむ。ではとりあえずここから離れるとしよう。またいつミクレスが襲ってくるかわからんからのぉ」

「わかりました。でも、どこへいくんですか?」

「わしの寝床兼修練場じゃ。あまりの大きさにびっくりして腰を抜かすんじゃないぞい。ほっほっほ!」


 老人は顎髭を触りながら笑う。

 少年はこんな荒野に本当にそんなものが存在しているのか疑問に思ったが、行く当てもないので老人について行くことにした。





――◇◇◇――


大陸日記 その1

「大陸簡単紹介編」


 この世界は大まかに東西南北にそれぞれひとつずつ、大きな国が存在する。

・北の国...オーラル王国

 ミクレスの脅威は他の国に比べて最も安全。主人公や幼馴染の故郷カルロスもこの場所に位置する。


・東の国...サリクレッド王国

 ミクレスの脅威は他の国と比べて比較的安全。氷塊の魔法士団団長のセシリア・アルフォートの本拠地もとい訓練所がある場所。


・南の国...ラトローナ王国

ミクレスの脅威は他の国に比べて危険である。緑豊かな景色に囲まれている。


・西の国...ダルカン王国

ミクレスの脅威により、破滅の危機がもうそこまで迫っているとされている。あたりは一面荒野で、とても人が生きていけるようには思えない。

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