21話 強さ、重さの源
――ものすごい威圧感だッ!これが師匠の本気なのか!?
グラディオルはすかさず剣を構える。だが正面を向いたときにはスクリーバの姿は見えない。
「...いない!?どこだ?」
「こっちじゃ」
「くッ...!!」
後ろに現れたスクリーバが頭上から斬りかかる。グラディオルは咄嗟に反応し振り下ろされた剣に対し、剣の腹で受け左手で刀身を支える。しかし、無理な体勢で防御したためか、力が乗りきらずジリジリと押される。
――...重い!どうにかして抜け出さないと!
「...ほう?」
グラディオルはあえて屈み、スクリーバの剣の勢いが増した瞬間に剣に入れていた力を抜くと同時に傾けてスクリーバの剣を受け流した。
受け流された剣は強く地面を叩く。その一瞬でグラディオルはスクリーバの斜め後ろに転がり抜ける。一度、間合いを外し体勢を整える。
そしてスクリーバも立て直すと、2人はまたすぐに間合いを詰める。
その後すぐ、2本の銀の軌跡が交差する。スクリーバは力や速さなど身体能力でグラディオルに劣るものの、今まで積み重ねてきた技術で対応する。
剣のぶつかり合い、フェイントの掛け合いが瞬きする間に、数十回、数百回と続く。
グラディオルの体の節々に浅い切り傷が刻まれていく。
「やっ!はあァ!」
「ふん!あまいわい!!」
焦ったのか、少し大きく足を踏み出してしまう。
その隙を見逃さなかったスクリーバは、すかさず出足を払う。
「...うわあ!」
大きく体勢を崩したところに、剣の柄先で顎を小突く。
グラディオルは大きくのけぞるとスクリーバは腹に強烈な蹴りを打ち込む。
「ぐはぁあ!」
そのまま吹き飛ばされ壁に強打した。
――やっぱり、師匠はすごいや。一瞬たりとも隙をみせないし、逆にこっちが隙を見せたら必ず仕留めてくる。あの強さは人知を超えている。
ガラガラと崩れた瓦礫をどけて、剣で体を支え片膝をつく。
スクリーバは剣をだらりとさせて立っている。
――でも。勝たなきゃいけない。サラのために強くならないといけないんだ!
なんとか踏ん張って立ち上がると、腹のそこから大きく声を上げる。
「師匠!!俺は今!ここであなたを超えてみせる!!」
「来いッ!バカ弟子ィイ!!」
両者とも同時に駆け出す。
――もう駆け引きなんて必要ない。ただ俺の全力を剣に乗せるだけだ!
そして、ガキンと金属同士が激しくぶつかり火花が散る。
ギリギリギリと鍔迫り合いの音が響く。
「うぉぉおおおおおッッ!!!」
「はぁぁああ!!!」
――乗せろ!込めろ!力も技術も、想いも全部!
グラディオルの剣がより一層、鋭さと重さを増していく。
その瞬間スクリーバの脳裏に、自分が生涯にわたり焦がれ続けた剣が浮かぶ。
◇◇◇
「なあ、オリヴィエ。俺とお前で何が違う?」
素振りをするオリヴィエにスクリーバが問う。
「さあな、あるとすれば剣に込める想い...じゃないかな」
「想いだ〜?!何いってんだ。剣に乗せるのは力だろっ!」
「想いは乗せるんじゃない。込めるんだよ」
「はあ?ますます意味わかんね」
スクリーバがぷすっと怒る。
それを見てやれやれと言わんばかりに「はあー」と息を吐き木剣を渡す。
「打ち合いをしようそうすればわかる」
「望むところだ!」
数分後。
「ぐぼふえええ!!」
オリヴィエの木剣がスクリーバの腹におもいっきり入ったことにより、打ち合いは終わった。
「ほら、わかったか?」
「ふむふむ、なるほどな。...ってなるかボケェエ!!」
「「ぷっ......はははははは!!!」」
2人は互いに見合って笑った。
一通り笑いあったあと、スクリーバが尋ねる。
「で、結局想いを込めるって言ってたけど、どんな想いを込めたんだ?」
風がふわっとなびく。オリヴィエは一息置いてから口を開く。
「それはね、この道場の人たちを、大切な仲間たちを、必ず守るっていう想いさ」
◇◇◇
ああ、思い出した。オリヴィエの強さ、重さの源は、剣に込められた想いだったんじゃ。
小僧のこの強さ。オリヴィエとそっくりじゃ。
小僧にもオリヴィエにも、剣に込められた強き想いが彼らに磨きをかけたんじゃ。
スクリーバにはグラディオルにオリヴィエが重なって見えていた。
ならばわしも、今持ちうる全ての...想いを込めようぞッ!
「はああああああ!!!」
スクリーバの刀身がさらに重くなる。
2本の最重量級の剣がぶつかり合う。あたりの空気は揺れ、ずしりと重さを感じるほどの気迫を両者ともども出しながら。剣を押し合う。
「うぉォォォォオオオ!!!」
「はああああああああ!!!」
オリヴィエ...わしはまだ、お前に勝てそうにないな...
刹那、スクリーバの剣にヒビが入り、パキンとへし折れる。
そしてグラディオルの剣がスクリーバ頬を軽く斬った。




