20話 最後の試練
わしはその後、生き残った者たちとともに、ミクレスの犠牲になったものたちを、道場の裏山の見晴らしのいい丘に弔ってやった。
じゃがそのすぐ後、魔法という世紀の大発見がされた。剣なんてやってられるか!と言わんばかりに、剣を捨てる者、魔法の道に行く者、家族とともに安全な場所で暮らすためこの地を離れた者。皆、嶺神流から離れていった。そして、気づけばわし以外の門下生はおらんくなってしまった。
青年が丘にある門下生たちの墓を一つ一つ見て行く。
「...ガイス...お前死んだのか」
ガイスは口の荒い男だったが決して悪いやつではなかった。異形が現れた時も、下級の門下生たちを庇うように戦っていたし、こんを詰めて鍛錬していた時もなんだかんだいって気にかけてくれていた。
そして、青年はある墓の前に立つと、憂いを帯びた顔持ちになる。
「オリヴィエ...俺、お前を越せるようになれるかな...」
そよ風が、木々を揺らし木の葉が舞う。
「俺絶対、嶺神流を絶やしたりしない、絶対オリヴィエより強くなってやるから、天国で首洗ってまっとけよ!」
涙を我慢しながら言うその声は少し乱れていた。
青年は墓に乗っかっている数枚の木の葉を払う。立ち上がり振り返りたいのをぐっとこらえ、青年はその場を後にした。
◇◇◇
「こういうわけでわしは今でも嶺神流を続けている。わしは負けず嫌いなんじゃ、それも大がつくほどのな。じゃからわしは、オリヴィエを超えるため今までも修練を積んだし、これからも励み続けると決めた」
「...師匠はその...ご友人を超えることができましたか?」
グラディオルは少し聞きづらそうに尋ねる。
「...うーむ。わからん」
「それってどういう...?」
「オリヴィエが強いということは覚えているんじゃが、どうしてもやつの型を、重さを、強さを思い出せんのじゃ」
腕を組み「うーむ」と首をかしげる。
「なにやともあれ、小僧に言いたいことは、剣の才があるということじゃ」
「剣の才...」
「そうじゃ、そこの部分がオリヴィエと似通っておる。凡人のわしには恵まれなかった才能じゃ」
肌を撫でるような風が吹き前髪が揺れる。
グラディオルを見つめるスクリーバの瞳がどこか、覚悟を決めたような、しかし同時に悲しさも混じっている、そんな目をしていた。
「そんな才を持つ小僧に最後の試練を与える」
スクリーバが放つ圧が今までで感じた中で1番強くなっていた。
「...ッ!?」
グラディオルは何か危険を感じ取り、咄嗟に後方へ大きく飛び退ける。
「さすがは、わしの弟子よのぅ。今のを反応できるとはな」
先程までグラディオルがいた空間に、スクリーバの剣が振り抜かれていた。
「グラディオル・セルフォスよッ!! このわしを打ち負かせてみせよッ!!!!」
――◇◇◇――
大陸日記 その6
「人物紹介 スクリーバ・ラーナー編」
性別...男
年齢...78歳
身長...169cm
好きなこと...盆栽の手入れ
苦手な食べ物...魚全般
ミクレスがこの世にはびこり始めたことが原因で、多くのものが死に、多くのものが道場を去っていった。今では一人、嶺神流を極めんとする人物である。
グラディオルを弟子に迎え入れ、優しくも厳しい、すごく温かみのある老人。
世界で唯一、剣のみで大陸渡りを可能とする実力を持つ正真正銘、最強の大剣豪である。
しかし、その名その姿を知る者はごく一部を除き知られてはいない。




