14話 基礎と型
「さあ、では始めるとするかのぅ」
二人は木剣をもって向かい合う。もちろんグラディオルは腕輪をつけたままだ。
「小僧よ。嶺神流の基礎は覚えておるか?」
「はい。たしか...力を乗せる技術でしたよね」
「ああ、そうじゃ。今の小僧は力こそあるが、乗せることができておらん。じゃから、総合的な力量ではわしに劣る。まあ...なんだ、習うより慣れろってやつじゃ。わしと小僧で打ち合いをして、適宜指摘を入れるから聞き逃すんじゃないぞい」
「はいっ!」
スクリーバはひょいひょいと手招きをする。先手を譲るようだ。
それを見たグラディオルは地面を蹴り、一気に間合いを詰める。この時点でグラディオルは常人の域を超えているスピードを出す。
そしてスクリーバに対し木剣を全力で振り下ろす。だが木剣が途中でピタっと止まる。
「...ッ!? びくともしない!?」
グラディオルの木剣は力んでブルブル震えているが、スクリーバの木剣は寸分の揺れもない。スクリーバはただ、グラディオルの木剣を刀身の中心で捉えながら涼しい顔をしている。
「小僧、体重が乗っておらん! もっと重心をまえにもってこい。そんなんじゃ、力を乗せられんぞ!」
続けてスクリーバが反撃を入れる。
「ほれ、隙だらけだぞ小僧!」
「...ちょ!? まッ......ぐぶほぉお!!」
木剣がおもいっきり横腹に打ち込まれる。そのままグラディオルは横腹をおさえながら地面に伏す。
「...いったぁぁー...」
――...でも、いま食らったことでなんとなくわかった。師匠の言う力が乗っている状態っていうのが...! 師匠の剣は、刀身が一番重いんだ。力が、体重が、技術すらも乗せることで、刀身を極限まで重くしている。逆に言えば、身体が極端に軽い。それこそ風が吹いてしまえば、軽く飛んでいってしまいそうなほど。
「でも、どうやって再現しろってんだよっ!」
グラディオルは頭を振りながら言う。
「どうした小僧、もう終わりにするか?」
「いえ...まだできます...!」
その後、しばらくの間、グラディオルはスクリーバと共に打ち合いをし、力の乗せ方を教わった。
◇◇◇
「はあ、はあ...」
グラディオルが肩で息をする。
「今日はこの辺にしておくか。じゃあ、次は嶺神流の型についても教えておこう」
「...型ですか?」
「うむ。基礎と平行して進めるぞい」
軽く肩を回し、咳払いをして話を続ける。
「講義でも伝えた通り、嶺神流は入門者しだいで型が変わる。つまり、同じ型をもつ者はほぼおらん、十人十色じゃ。小僧もさっき身をもって体験したように、わしと小僧で剣に乗せる体重も力も違う。そんなわしらの型が揃うはずも無かろうて」
「ああ!もしかしてそのための横薙ぎですか?」
「よく講義を聞いておるではないか。その通りじゃよ。嶺神流の入門者は全員、共通して横薙ぎを会得する。なざ横薙ぎかというと、その後の技に繋げやすいからじゃ。小僧と初めてあったときもわしは横薙ぎを使ったぞい」
ほっほっほと笑う。
「そうして横薙ぎを習得したあと、力を乗せやすい剣の角度や、体の動きなどを各々が研究し深めるのじゃ」
グラディオルはその後スクリーバ監督の元、ひたすら横薙ぎを練習し、自分のポテンシャルを一番引き出せる型を考える時間を過ごした。
気づけば、周りが暗闇につつまれてしまっている。
流石に夜遅いため、スクリーバは今日の講義は無しにした。それを聞いたグラディオルは少しうれしかった。




