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惚れた相手は敵国の英雄だった  作者: おじゃっち
3章 少女の時辰儀
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50話 大人の判断

「う〜ん。駄目ねぇ。魔力、押し返されちゃうわ」

セゾニエ、中央都市に聳える城。軍部拠地として使用され、会議室には幹部が集結していた。


セゾニエ筆頭貴族ウラガン・シャルール・ヴァン侯爵当代。神帝教幹部【暗殺者】。

セゾニエ貴族代表フィルママン公爵。神帝教幹部【豪壁】。

セゾニエ宰相カルム・ベル・タン。【空白の大英雄】。

ヴォク・ラテク中立貴族フロンティエール・カテドラル伯爵。神帝教幹部【密告者】。

メル・オセオン有力貴族アムール・デテ・プロンジェ子爵。神帝教幹部【武器屋】。


「ティー! よく辿りつけたわね!」

ウラガンが微笑んで、カテドラル伯爵に帰還の歓迎を示す。

「今は手薄だからな。元より、代打を用意している」

「その様子じゃ、エムロード公爵は動けてないみたいだね。良かったね、フィルママン公爵!」

プロンジェ子爵が戯れに、公爵に笑いかける。公爵は無言で見つめる。

「仲良くしようよ。お互い、蕾を失ったんだからさ?」

「想定よりも使えなかったな」

二輪の蕾。その父である二人は愛情を持たず、武器が壊れてしまったという淡白な反応だ。

「薄情ねえ。まあ、変に情を持って、任務を放棄されても困るわ。ラジュネスちゃんは動いてないの?」

ウラガンは鋭い眼光で見つめた。尋ねた先でチェス盤を眺めるカルム貴が神妙な面持ちで頷いた。

ウラガンは彼の持つチェス盤を興味深そうに欲した。


(魔法道具は魔力の有無問わず、世界規模の効力を発することができるチート級の代物。空白の時代に製造された魔法道具は、特許(・・)と呼ばれ、誰もが欲し、争いの種となってから、多くの特許は破壊された。今は賢者の厳重な管理がなされ、記録上でしか拝見したことがないわね。

特に、索敵に長けた特許軍機プレミエ・エキシエ。所有者の面識がある者の魂や魔力を駒に宿し、行動を監視する。所有者と面識者の格差によって、遠隔で駒を動かし、洗脳機能を与えることができる。戦争指揮や政界の謀略に誂え向きの軍機…)


特許を個人で所有するカルム貴に、ウラガンは畏怖の念を示す。同時に、敵に回らなくてよかったと思う。彼が特許軍機プレミエ・エキシエを本格起動するときは、必ず勝つという吉兆だからだ。

「ウラガン。あなたの魔力探知ではどうですか?」

「動いてないわ。それよりも相手の情勢を探ろうとすれば、ラジュネスちゃんが魔力で防壁を張って押し返してくるの」

「さすが私の孫。そう簡単には攻略させてくださいませんね」

「あとね、ラジュネスちゃん…久しぶりに生命を創造するみたいなの」

「ほう」

ウラガンの魔力探知で得た情報を聞いて、カルム貴が興味を示す。

「随分と大胆な手法を使うのだな」

フィルママン公爵が論う。

「姫は隠し事が多いからね〜。でも、ボクたちは知ってるから。君のおかげだよ、カテドラル伯爵」

子爵が伯爵を褒める。

「ええ、伯爵のおかげで姫も監視でき、目障りな駒の全貌も知ることができているのです。さすがは【密告者】」

「褒めたとて、これ以上の情報は出んぞ」

「知っています。ですが、伯爵。あなたはまだ【密告者】の本領を発揮していません」

カルム貴が悪いことを企んだ。だが、それは敵にとっての不都合であり、勝つためには必要な事項だ。

「伯爵の家系はヴォク・ラテクの歴史を見ています。ヴォク・ラテクの起こした残虐な事件の一つや二つ、心当たりはあるでしょう?」

「ああ」

「その中には、真実が明らかになっていないまま、閉じられた事件もあります。ですが、未だ真実を求める人類の声は消えていません。人類に真実を与え、混乱に陥れましょう」

「…いいの?」

子爵が投げかける。

「あんたが知らしめようとしてる事件ってさ、何十年も前のことだろ? 今、掘り返しても世間は騒ぎ立てるだろうけど…非難の的はその事件とは無関係の姫だよ?」

子爵の疑問に、カルム貴は胸が締め付けられる。だが、その甘えを封じて、凛然とした態度で語る。

「姫はヴォク・ラテクの英雄。英雄は国の象徴であると同時に、悪評の的となる。総帥である姫はヴォク・ラテクの歴史の継承者。覚悟は決まっているでしょう。戦争に赴く勇敢な意思があるのだから…徹底的に潰しましょう」


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