第五十四話 画策
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レビュー頂きました!
ありがとうございます!
——セック城前——
「ほらほら早く行こ!」
「待ってよシュン〜」
「あれって本当に破者様なの・・・?」
「本物なの。今は女体化して女になってるだけなの」
「嘘だろおい・・・」
現在シュンは顔を赤く染めながらセック城へ入城しようとしていた。
何故顔を赤くしているのか、それはシュンが酔っているからである。
シュンは酔うと『偽装』を使い女体化する癖があった。
何故そのような癖があるのか、それはナナが原因である。
幼い頃ナナと遊ぶ機会の多かったシュンはおままごとや人形遊びをする機会が多かった。
その時にナナに色々吹き込まれた結果、時々乙女になることがあったのだ。
だが成長し自我が形成されればそれが表に出ることは無い。
シュンはこれで安心だと思った。
しかし、酔うと話が別であった。
シュンは酒が好きなのでよく飲む機会があるのだが、その時には必ずと言っていいほど乙女になるのだった。
それは【グリフィルの血】を飲用した時に出会った〝与えしもの〟の力が弱まり、もうひとつの半身であるシュンの性格が色濃く出たからだ。
そして今は異世界、魔法の力がある。
シュンは無意識に女体化するので、誰もが見惚れる女版シュンの完成であった。
良いか悪いか分からないがそれをシュンは知らない。
フィーアとレンは女体化したシュンを気に入っているので、口が裂けてもそれを伝えなかった。
周りが一度伝えようとした時、フィーアは周りを吹き飛ばし、レンは言葉を巧みに操り論破した。
結局シュンの酔いが覚める頃にはいつもと変わらない日常に戻るのだった。
「フィーアこの服動きずらいよ」
「シュンが着慣れてないからだよ」
「・・・それもそうだね。可愛いから許す」
シュンはウェンドラゴンの服を脱ぎ、普通の白のカーディガンとピンクのロングスカートを着用していた。
服装こそありふれたものであるがシュンの可憐さはずば抜けており、道行く男子は釘付けである。
「フィーア様、破者様にお伝えしなくて良いのですか?」
「良いんですよ。そもそもこんな昼間から飲むなんて有り得ません。それなら存分に羞恥を覚えさせましょう。私もレンもシュンの女体化は可愛くて好きですから」
「そうなの。倫理的に良くないの。でもシュンはお酒を飲めてご機嫌で、私達は可愛いシュンが見れて満足なの」
「そういうものですか・・・」
「ほらみんな早く来て!」
「はいはい、今行きますよー。レンも行こ?」
「はいなの」
「私が呼んだのに・・・」
シュンの呼びかけでスピードが上がる。
既にシュンは報酬の2文字しか頭に無かった。
それをフィーアもレンも何となくだが察しているので何も言わなかった。
寧ろ楽しそうなシュンを見れて満悦であった。
セルナからすれば招待した自分に早くしろというシュンを見て、少なくとも良い感情を抱かなかったが、一応この国の伯爵の令嬢の名にかけて粗末な所作は出来なかった。
ジャックに至ってはシュンの女体化があまりにも可憐であったので何も言葉を発していなかった。
既に空気と化していた。
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——セック城内 宝物庫——
「凄い・・・」
「確かに、これだけの財宝をお目にかかる機会は中々無いよ・・・」
「ひとつひとつの価値が高い物ばかりなの・・・」
「皆様良い審美眼をお持ちなのですね。」
現在セルナに連れられて宝物庫へと訪れていた。
中には金銀財宝の山であり、国宝級の装備や道具などが積み上がっていた。
それを目の当たりにしたシュン達は息を呑んだ。
この場は限られた者しか入れない場所のため、シュン達とセルナしか入ることは出来ない。
ジャックは外で警護に当たっている。
「シュン様はどのような物を御所望ですか?」
「うーん、特に決めて無いね」
「シュンこれなんてどう?」
「・・・それは【転移札】ですね」
「【転移札】?」
「【転移札】は『転移』と同じで転移出来る札なの。でも少し違う点があって『転移』は飛ぶ場所に制限があるけど、【転移札】はそういう制限は無いの。でも【転移札】は消耗品だから一枚につき一回なの」
「なるほどね・・・」
【転移札】の説明を聞き唸るシュン。
確かに転移出来るのは魅力的である。
ましてや制限無く何処へでも行けるのはかなり利便性に長けている。
しかし・・・
「やめておく。だって一回きりでしょ? なら覚えた方が早いよ」
「・・・? 破者様、どういうことですか?」
「ちょっとシュン! セルナさん今の話は忘れてください! 多分酔ってるから変なこと言っちゃったんだと思いますよ!」
「そうなの! 酒癖が悪いの! 暫くは宿だけで呑んで貰うことにするの!」
「えー宿? 宿のお酒美味しくなーい」
「私達の前から離れたら変な事言うでしょ!」
「言わないよー」
シュンが破者の中でも秘密にしている『挑みし者』の効果を普通に口走ったのでフィーアは慌てて止めた。
『挑みし者』はとても強力な補助スキルである。
そのためその効果が知れ渡ったら、何かに利用しようと画策する輩も現れるだろう。
だからこそ今まで秘密にしてきたのだ。
だがそれを自ら公言する形になってしまった。
それに呆れたレンは今後宿以外で呑むことを禁止する。
シュンは宿の酒が不味いので嫌だと言ったが、レンにとって一番目に届く宿にいるのが安全だと考えていた。
それだけではない。
レンはある事を考えていた。
「レン、貴方変なこと考えてないでしょうね?」
「そんなことは無いの」
「正直に言いなさい!」
レンはシュンの方を一瞥する。
シュンは装備を選別するのに必死であった。
セルナもその手伝いに明け暮れている。
こうして与太話をしているのはフィーアとレンだけであった。
「フィーア耳を貸して欲しいの」
「何・・・」
レンはフィーアの耳に自分の考えを伝えた。
すると最初はフィーアの顔が赤くなったが、比較的悪い案では無かったので最後には真剣な面持ちになっていた。
そして話し終わるとフィーアは真面目な表情でレンに言う。
「・・・レンの考えは分かったよ。その考えいいと思う」
「流石フィーア、分かってるの」
「でも条件がある」
「何なの?」
「私もその作戦に参加する」
「・・・・・・」
「レンだけそれは狡いよ」
「・・・分かったの。このことを話した私達は運命共同体。逃げることは許さないの」
「決まりね」
「作戦決行はこの国を出た後、次の街の宿屋でなの」
「了解」
レンの作戦は次々と決まっていく。
何がそこまでして彼女たちを駆り立てるのか。
それは今の所謎である。
だがよからぬ考えであることは確かであった。
そして彼女達が作戦を立てている時であった。
「これに決めた!」
「破者様、本当にこれで宜しいのですか?」
「だってこれ可愛いでしょ? それに効果も優れてるし」
「シュンそれドレスアーマーだよ?」
「私達とサイズが合わないの」
「私が着るから大丈夫!」
「「「・・・・・・」」」
シュンが選択したのは黒のドレスアーマー、【黒鉄鎧・乙女】であった。
このドレスアーマーはアダマンタイトと【マザースネークの糸】を余すこと無く使用した装備であり、製作者が不明であった。
だが絶対に切れることの無い鎧や布は高い防御力を有しており、見た目も艶やかであるためシュンは痛く気に入ってしまった。
「シュンがそれがいいと言うならいいんじゃない?」
「そうなの。シュンの好きなの」
「流石二人とも分かってる!」
(本当にこれで良いのですかね・・・)
セルナからすれば不安であるが、三人が良いと言えば自分は何も言うことは無い。
結局【黒鉄鎧・乙女】を手に入れたシュンはフィーアとレンと一緒に城を後にした。
その時、シュン達の背後で画策する影がいた。
(真面な情報は零ですね。まぁ良いでしょう。ですが彼が強力な能力を秘めていることを知れたのは収穫があったと捉えて良いでしょう。女装癖?は驚きましたがね)
影が動く日はまだ先である。
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——ウォール森林——
「よいしょっと・・・、よし終わりだな!」
ここはシュン達が訪れたログハウス、マルシャの家であった。
現在マルシャは薪を割っていた。
愛刀【ガラシャ】により感覚は消えていたが、日頃の習慣は脳裏に固着していたので、ある程度の生活は可能であった。
「レンと別れて一週間って所か・・・」
エディシンの供養が終わった後、シュン達は一度マルシャの元へ戻って来ていた。
それはレンがマルシャの身を案じていたからである。
少なくとも不自由な生活をさせたくないというレンの願いであった。
しかしマルシャはそれを承諾しなかった。
それはエディシンがレンを外の世界に連れて行って欲しいと願ったからである。
マルシャもレンには様々な経験を積んで欲しいと考えていたのでそれに賛成であった。
従って自分に構うことなく旅に出て欲しいとレンに言ったのだった。
「あの時のレンは拗ねてたっけな・・・。普段からあれくらい本性を表すと嬉しいんだがな」
去り際のレンは涙目であった。
足でまといになると言って着いてこなかったマルシャに怒っていたのだ。
だが実際今のマルシャは戦力にすらならない。
そんな彼が瀕死の時に誰が助けるのか。
そうレンに伝えると自分が守るとは口が裂けても言えなかった。
それはレンが自分の力量を正確に理解していたからである。
「レンには悪い事をしたな。だが俺が行っても意味が無い。俺は俺でやるべきことをやるだけだ」
マルシャは一度故郷に戻ろうと考えていた。
今でこそ殲滅されたロカファの里だが、自分はしっぽを巻いて逃げただけなので実際の所里の最期を見ていなかった。
天使族は全て殲滅したと言っていたが自分の目では確かめていない。
百聞は一見に如かず、望みは零に近いが生存者がいるかもしれない。
そう考えるだけで里帰りをする価値はあった。
「その為にも先ずは感覚を取り戻すんだ」
マルシャは今感覚を失っている。
それは二度と戻ることは無い。
しかし、無くなったのなら構築すればいい。
そう考えたマルシャは再び修行を開始した。
それは今までよりも辛く厳しいものであった。
だがそれくらいしなければ感覚など掴めない。
それほどマルシャは覚悟していた。
「よし、じゃあ稽古でもするか」
「こんにちはマルシャさん」
「あははこんにちはー」
「ッ!?」
マルシャの前に現れたのは2人の男女であった。
一人は水色の髪をしていて額に1本の角を生やし、眼鏡をしている。
アカデミックドレスと手に持つ杖から学者の雰囲気が漂っていた。
見るからに好青年である。
そしてもう一人は短めの金髪で小さい角が頭の左右から生えていた。
黒のブレザーとミニスカートを着用していて、胸元には青いリボンが着いている。
背丈が低いので世間で言われるところの幼女であった。
「誰だお前達!」
「まぁまぁそう焦らないでください。危害を加える気はありません」
「名前を言え」
「あはは、普通名前を聞く時は自分から言うんだよー?常識がなってないなー」
「・・・・・・」
「すいませんね。この子、人を煽る癖がありまして気にしないでください。それで私の名前はヴィヴィと申します。この子はキラリ、以後お見知りおきを」
「ヴィヴィにキラリ、俺の名前はマルシャだ。覚えておいて構わない」
「あはは、もうおじさんの名前は知ってるよー」
「・・・・・・」
キラリがマルシャを煽るので、どんどん怒りのボルテージが上がっていく。
しかし見た目は幼女。
ここで切れたら大人の面目が無い。
「それでお前らの目的はなんだ」
「あはは、そう急がなくてもいいのにねー。それともおじさん死に急いでるの?殺そうか?」
「ッ!?」
キラリから尋常では無い殺気が溢れ出す。
マルシャは身体中から汗が吹き出した。
この少女は間違いなく強い。
もしかすると自分と同格、またはそれ以上だと長年の経験で悟った。
「キラリ、物騒なこと言わないでください。えっとですね、私達はマルシャさんに着いてきて貰いたいのです」
「着いてきて貰いたい? 何が言いたいんだ」
「そうですね、簡単に言えば人質です」
シュンはおねぇキャラではありません。
幼き頃の癖です。
ナナのせいだと思ってください。
そして第十話のタイトルを変更しました。
素質→絶叫です
そして豹変前の訓練内容を厚くしました。
そのため1日目と30日目しか描写していませんでしたが、15日目と25日目も追記しました。
もしよければ第十話を拝読して頂けると嬉しく思います。




