第四十七話 死闘
——グラガ洞窟——
「ん・・・、レン。レンなのかい?」
「お母さん!」
「無事でよかった・・・。」
エディシンは倒れながら涙を流す。
身体には無数の傷がついていた。
「『回復』!」
「・・・無駄さね。」
「何で!?」
「あたしは闇属性と相性がいい。回復魔法は効かないよ。」
「うぅ・・・。」
少女は唇を噛みながら涙を零す。
ただただ何も出来ない自分が悔しい。
噛んだ唇からは血が流れていた。
「泣くんじゃないよ。あたしは泣き虫に育てた覚えは無いさね。」
「で、でも・・・。」
「はぁ・・・、レン、もっと近くに来ておくれ。」
「・・・。」
エディシンにそう言われ、倒れ伏している彼女の近くに腰を下ろした。
「見ないうちに立派になったね・・・。」
「お母さん・・・。」
「レン、この人達は誰だい?」
「・・・命の恩人なの。」
「そうかい。あんた達、この子を守ってくれてありがとうね。」
エディシンは素直にシュンとフィーアに頭を下げた。
そしてシュンもそれに応える
「偶然だ。」
「もうシュンったら・・・、コホン、えっと、本当に偶然なんです。最初にレンさんを助けたのはマルシャさんなんです。」
「ほう、あの弱虫マルシャかい。」
「弱虫?」
「あたしもロカファの里にはよく行っててね。だいぶ昔だが小さい時のマルシャとは顔馴染みなんだ。あの時のマルシャは臆病だったからね。弱虫はその名残さ。」
久しい名前を聞いて懐かしむエディシン。
その声からはマルシャがどうなっているのか知らないということが読み取れた。
「お母さん、おじさんはね・・・」
少女はエディシンにマルシャの現状を伝えた。
それを聞き、姿こそ龍だが顔の表情が難しくなっていくのが分かる。
「・・・そうかい、ロカファが滅んでマルシャ以外殺されたかい・・・。セファーラルの龍殲滅の話は本当らしいね。」
「お母さん・・・。」
「すまないねぇ。こんな情けない姿なのに、その上弱々しい声なんか出しちまうなんて、レンに泣くななんて言ったのに面目無いよ。」
「そんなことないの・・・。私も何も出来ないから・・・。」
お互いが貶し合っているとシュンが言った。
「なぁ、なんであんたがこんなふうになったのか教えてくれないか?」
「あ、あぁ、すまないね。客人を放置するのは礼儀知らずだったね。」
「饗しとか期待してないから早く教えてくれ。」
「そうかい、じゃあ話すかね。もう長くないからね。」
「「「ッ!?」」」
「どういうことなのッ!?」
焦るシュン達とは対照的にエディシンは淡々と語り出した。
その内容は少女だけでなく、シュンにとっても驚くべきことであった。
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シュン達が倒れているエディシンを見つける一週間前に遡る。
エディシンは大天使セファーラルと対峙していた。
「これで娘を逃がしたつもりですか。」
「『牢屋』は看守であるあたしが解かない限り絶対に抜け出すことが出来ない。さぁ観念するんだね。」
「ふん、その傲慢な態度、全く変わりませんね。」
「お前もね、セファーラル。」
セファーラルとその部下達はエディシンの『牢屋』により捕えられていた。
エディシンは大人しくするよう指示し、セファーラルは今すぐ解除するようにと警告した。
その時ある一人の男がセファーラルに声をかけた。
「セファーラル様、ひとつ面白いことが分かりました。」
「どうしましたかソルヴィン。」
「先程の少女、恐らく供物かと。」
「ほう、それは何たる偶然。これも神のお導きでしょう。何としても捕えなければ。」
「供物?何の話をしているんだい。」
エディシンは供物という言葉に興味を抱いた。
セファーラルは占めたという顔をして話し出す。
「そうですね、ではその話をするのでこちらの方を解いてくださいませんか?」
「はん、はい分かりましたって言うと思ったかい?甘いよ。」
「ふふふ、そうでしょうね。貴方がそんな簡単に促されるなら此方もここまで苦労しておりません。なら実力行使と参りましょうか。ソフィアやりなさい。」
「了解しました。『穿孔』!」
「ッ!?」
ソフィアと呼ばれる天使はそう言って『牢屋』で囲まれた結界を一部破壊した。
「ソルヴィン先に行きなさい。一応この場に供物を連れてくるのです。無理なら殺しなさい。供物である天霞は死んだ時に自然と天に還るそうです。」
「了解しました。この命、私の崇拝する神に誓って必ずや成就させて見せましょう。」
ソルヴィンはそう言うやいなや開いた箇所から出て行ってしまった。
「くッ!させるかってんだ!『束縛』!」
「『詠唱遮断』!」
「なッ!?」
「今です、ソフィア、サフィア!」
「「了解。『追随穿孔』」。」
逃げようとしたソルヴィンを魔法で捕獲しようとした時、セファーラルの魔法により解除されてしまった。
それを逃すまいと紫の髪をした天使の2人が『牢屋』を破壊してしまった。
「驚いたね、まさか『詠唱遮断』を使えるなんてね。お前さんは男だろ?『詠唱遮断』なんて上級魔法が使えるのは女くらいなんだがな。」
「いえいえ理論上正しいですよ。実は私の使える魔法は強力で、今使った『詠唱遮断』しかないんです。」
「これで他にも色々使えるなら本当に化け物だよ。」
「化け物・・・、コホン、その発言は私の美的感覚を酷く傷つけました。許してもらえるとは思わないことですね。」
「許してもらおうなんて思ってないさね。」
そういうとエディシンは『煉獄滅失業火砲』をセファーラルに向かって放った。
しかし・・・
「「『魔法結界』!」」
「チッ、またあんた達かい。」
「ソフィア、サフィア、よくやりました。」
「「お褒めの言葉、有り難き幸せ。」」
ソフィアとサフィアと呼ばれる者達がエディシンの放った炎を防いでしまった。
「何だか感情が抜け落ちていて気味が悪いね。」
「感情が無いのではないのですよ。元々こういう性格の子達なのです。」
「「・・・。」」
「まぁなんでもいいよ。あたしはあんた達を倒してレンを迎えに行く。」
「供物の話を聞かなくて良いのですか?」
「そうだったね、ならその話は戦いながら聞かせてもらうとしようかね!」
そしてエディシンとセファーラル、ソフィア、サフィアは互いにぶつかりあった。
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「一対三でよく生き残れたな。」
「ちょっとシュン!言い方!」
「ははは、確かに坊主の言う通りさね。勝った時は魔神様に祈ったさ。」
「魔神ってのはどう言った奴なんだ?」
「魔神様を奴呼ばわりするのは元来許せないんだが今回は見逃してやるさね。なんて言ったってレンの命の恩人だからね。そうそうあんた達あのソルヴィン?だったか、戦って勝ったのかい?」
「話の論点を変えるなよ・・・。」
「ははは・・・、シュン、あれを見せればいいんじゃない?」
「あれ?あぁ、あれか。」
「!?まさかそれは【収納袋】!?長年生きていて実物を見れるなんて長生きした甲斐があったよ!」
「お母さん・・・。」
エディシンの自分の死期が近いような発言に少女の不安そうな声が漏れる。
だがエディシンはそれを気にせずに興奮していた。
それほど【収納袋】はレアなのだろう。
そしてシュンはある物を取り出した。
「これを見ろ。」
「それはレイピア?」
「アイツはおっさんと戦ってたんだ。そしておっさんが油断して負けた。その後チビを殺そうとしたのを俺達で対処したんだ。これはあの性悪天使の遺品だ。」
「そう言えばあの天使は腰にレイピアを拵えていたね。」
「ほう、よく1週間も前のことを覚えているな。」
「記憶力には自信があるからね。うッ!?」
「お母さんッ!?」
エディシンは急に苦しみ出した。
少女は懸命に声をかけ続ける。
「それほど大天使セファーラルとの戦いは死闘だったのですね・・・。」
「違うさね・・・。」
「え?」
「あたしをこんなふうにした奴らはセファーラルじゃないさね。」
「何だと?」
「あれは戦いが終結した後だった。長い長い戦いだったよ。」
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「はぁ・・・はぁ、そろそろ終わりにするよ・・・。」
「はぁ・・・はぁ・・・、同感です・・・。」
エディシンとセファーラルは一週間ほど戦っていた。
常人では有り得ないことだが、彼らは不眠不休で食事も摂取せずに戦いに明け暮れていた。
もう二人とも限界が近かった。
ソフィアとサフィアは既にリタイアしており地面に倒れ伏していた。
そしてエディシンは決心した。
これでもう終わらせようと。
エディシンの身体が黒いオーラに包まれる。
そしてそれが消えると赤い髪の女がそこには立っていた。
「貴方の擬人化が拝めるとは・・・、長生きはするものです。」
「そりゃどうも。この姿になるのは好きじゃなくてね。レンがどうしても肉が食べたいって言わないとなることも無いんだ。だが動きやすさは天下一品だからね。これなら今までのようにいかないよ。」
「ふふふ、また私の【サルナマーナ】が貴方の肉を貫くでしょう。」
セファーラルは【サルナマーナ】と呼ばれた槍を構える。
エディシンもそれに応えるように軽く構えた。
エディシンは何も武器を持っていない。
正直セファーラルは呆れていた。
先程まで死闘を繰り広げていた彼女が、何も装備を身につけないで戦おうとしているのだ。
「・・・、その風姿は私を舐めているのですか?」
「舐めちゃいないよ。あたしは装備を使わない質でね。使うのはこっちさ!」
するとエディシンはポケットからある珠を取り出した。
「それは・・・、【幻覚玉】ですか!?」
「ご明察だ!喰らえッ!」
「うッ!?」
エディシンの取り出した【幻覚玉】は、指定した相手に幻覚を魅せる道具であり防ぐ手はない。
そもそも道具は魔法と違って有限である。
それ故に効果が絶大だ。
更に希少性が高ければ高いほどその効果を増す。
【幻覚玉】も非常に希少性が高く『幻覚』という魔法と似ているのだが、その効果では雲泥の差があるのだ。
そして現在進行形でセファーラルは【幻覚玉】を喰らっていた。
彼の魅せられている幻覚は最悪なものであり、神に見捨てられるものであった。
「か、神よ・・・、何故私を見捨てるのです!?あぁ・・・お許しください!どうか!どうか!私を!私も天へと!天へとッ!!天へとおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」
そしてセファーラルは【サルナマーナ】を自分の胸部へと突き刺した。
既にセファーラルは息絶えていた。
「擬人化しないとアイテムが使えないのが難儀さね。そうだ、えっと・・・。」
エディシンは再びポケットから珠を取り出し目を閉じた。
するとその玉は青く輝いた。
「よし、レンは無事なようだね。」
そう独りごちながら龍へと姿を戻した。
「少し休むさね。このままレンを追いかけても何処かで力尽きるのが分かるのが恨めしいね。」
長年の経験と勘で、今からレンを探しに向かっても途中で倒れるのは明白であった。
少なくとも祈った相手の生存を確認できる【生存玉】によれば、少女の安否は大丈夫そうであった。
安心感により疲れがどっと押し寄せる。
その感覚に飲まれ目を閉じた時であった。
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「——う、嘘だろ?」
「?、いや、本当さね。そこに現れたのは10代の人間達で、自分達のことを勇者と豪語していたんだよ。」
シュンはそれを聞き思考が停止した。
地の文を減らして会話文を増やすことにしました。
理由はテンポを上げるためです。
もし不都合な点や、やめた方がいいという方がいらっしゃいましたら教えてください。
今後も破者と勇者をよろしくお願いします。




