第四十六話 絶望
遅れました。
すいません。
——グラガ洞窟——
◇◆◇◆◇
レン 年15. 女
<ステータス>
HP 600/600
MP 3000/3000
攻撃 200
防御 150
速度 330
的中 270
幸運 700
<スキル>
『発光』『光線』
『光球』『光雨』
『光針』
『手当』『回復』
『聖域』
『激励』『硬質化』
『速度』『僥倖』
『反射』『閃き』
<補助スキル>
『龍の加護』
『幸運化』
『頭脳明晰』
『分析』
『光攻撃・下』
『治癒向上・中』
<称号>
『光使い』『サポーター』
『忘れし者』
『龍に育てられし者』『マルシャの娘?』
『策士』
『傷つき者』
『頑固者』『照れ屋』
『好敵手』『初恋』『愛しの王子様』
◇◆◇◆◇
「思ったよりMPが高いな。」
「そうなの?」
「あぁ人間のMP平均は知らないが、魔人のMP平均は200~300くらいだ。HPも他のステータスも高いのはやっぱり堕神だからだろうな。」
「・・・。」
今までステータスに差程興味を抱いていなかったので気づくことは無かった。
「でもこれくらいステータスが高いなら全然私たちに着いてこれると思うよ。」
「本当なの!?」
「お、おう。これくらいなら大丈夫だが、何でそんなに嬉しそうなんだ?」
「シュンには内緒なの。」
「まぁこの事に関してはわからないだろうねー、シュンは。」
「はぁ?」
フィーアは少女のステータス欄を見逃さなかった。
『初恋』や『愛しの王子様』といった称号に敏感に反応した。
これはもたもたしていられない、そう思い再度気合を込めたのだった。
当然シュンはよく分かっておらず、
「幸運高いなー。」
と、ステータスに目を下ろしていた。
その後少女にも自分達のステータスを見せてあげようという話になり、シュンは最初こそ逡巡したが、期待の目で見つめてくる少女に何も言えず結局見せた。
少女はシュンとフィーアのステータスを見て驚愕した。
一般平均より高いと言われる自分だが、二人のステータスは比では無かった。
特にフィーアだ。
シュンがステータスが高くてぶっ壊れなのは察していた。
だがフィーアはあくまでも大魔人である。
大魔人でもここまで強いとは思えなかった。
「シュンがぶっ壊れなのは何となく分かってたの。でもフィーアがここまで高いとは思ってなかったの!」
「ぶっ壊れ言うな。」
「あはは・・・、普通ならそんなに高くはならないよ・・・。ここまでの道中ずっとシュンの特訓に付き合ってたらこうなったの。特にMPが凄いよね。大抵の事じゃ靡かないよ。」
「そ、そうなの。」
フィーアは『風陣』を取得するために日夜特訓を行っていた。
シュンは人間界に向けて旅を続けている時、暇さえあれば稽古をしていた。
それに付き合った結果これである。
シュンの稽古と『風陣』の指南、既に魔人離れしていた。
「でも成長するにつれてあることに気がついたんだ。今まではもう成長しないだろうなって思ってたんだけど、それを乗り越えたら今まで以上にパラメーターが上がるようになったんだ。」
「それは凄いの。」
「理由は分からないんだけどね。」
実際修行を続けても意味が無いと思っていた。
だがある日を境に急激にパラメーターが増加したのだ。
これには喜びよりも何故そうなったのかという疑問の方が強かった。
「ステータスについてはおいおい話すとして、そろそろ行くぞ。」
「もー行くの?」
「はいなの。」
暫時休息をとったシュン達は重たい腰を上げて再び奥へと歩き出した。
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「ただ無闇に歩くのもな。」
「そうだねー。」
休息をとって30分ほど経ち、シュンは呟く。
実際穴だらけの洞窟内では少女の案内があっても意味が無かった。
たがここで少女は良い考えを思いついた。
「そうなの、『閃き』!」
少女がそう唱えても外的影響は何も無かった。
「どうしたチビ?」
「——分かったの、こっちなの!」
「え?どういうこと?」
少女は先程からずっと着いてくるだけだったが、何かに導かれるように先導し始めた。
シュンもフィーアも少女の後を着いていく。
「ねぇレン、何が分かったの?」
「私は『閃き』を使ったの。」
「『閃き』?」
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『閃き』
使用MP 300
知りたい事象を瞬間的に思いつくことが出来る魔法。
利便性は高いが、使用者自身が詰んでいなければ発動しない。
また比較的MPが高い。
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「すげぇなそれ。」
「凄いけど行き詰まった状況下でしか使えないの。」
「でも聞いたことないなー、そう言えば『反射』だっけ?それも知らないよ。」
「『反射』は文字通りなの。」
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『反射』
使用MP 300
あらゆる魔法を跳ね返す魔法。
一人につき一回であり重複はできない。
比較的MPが高い。
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「それも便利だな。」
「どっちも使用MPが高いから連発できないの。」
「うーん、やっぱり聞いたことないなぁ。」
「フィーアが知らないなんて珍しいな。」
「もしかしたらレンだからかもね。」
「どういうことだ?」
「もう、シュンってばデリカシー無いなー。さっきのステータスの時もそうだけどもう少し考えて話した方がいいよ?」
「だから無闇にステータスを見せるよう強要するのがマナー違反だっていうのは知らなかったんだ。」
「それじゃないよ。」
「何?」
「シュンさっきレンのパラメーターを見て堕神だからって決めつけてた。レンの気持ちを考えてみて。」
「・・・そうか。」
「・・・。」
あまり深く考えず考えていなかったシュンだが、フィーアにそう言われると自分が如何に空気を読めていなかったか痛感した。
少女もなんとも言えないというふうに黙り込んでしまう。
堕神である少女はこの現霊界で唯一の存在である。
堕神は唯一神の供物であり、現霊界では全く知られていないが特別なのは変わりない。
だからこそ少女は疎外感を感じていた。
人間、魔人、亜人、獣人、龍人、天使、のどこにも属さない。
この世界でたったひとりの存在なのだ。
だからシュンが堕神だからと決めつけるのは、お前は他とは違う、と言われたように感じるのだ。
フィーアはシュンの不用心な発言を野放しに出来なかった。
それは少女を思ってのものである。
「チビ・・・、悪かったな。流石に俺も配慮が足りなかった。」
「いいの・・・、でもお願いがあるの。これからは普通にこの世界にいる人間や魔人のように扱って欲しいの。」
「あぁ約束しよう。」
「何ならレンって呼んでもいいの。」
「よし、先に進むぞ。」
「・・・。」
シュンは何も聞かなかったかのように進む。
少女も無視されたことに少しだけ傷ついた。
だがフィーアが落ち込んでいる少女の耳元で囁く。
「安心して、あれは照れてるだけだから。」
「そうなの?」
「シュンって何かから逃げる時は頭を掻く癖があるんだ。」
「よく見てるの・・・。」
「ふふふ、一応ずっといるからね。」
「羨ましいの。」
「いいでしょー。」
「でも負けないの。」
「最後に勝つのは私だよ。」
フィーアのフォローにより少女は明るくなっていく。
最初はシュンのことで剣呑とした雰囲気を漂わせていたが、最後にはお互い微笑んでいた。
「おーいチビ、案内してくれー。」
「分かったの。」
少女の案内でさらに奥へと足を運ぶのだった。
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「間違いないの、ここを進めばお母さんがいるはずなの。」
『閃き』を使ってから暫く経って、順調にエディシンのいる場所へと向かっていた。
「そういえばレンのお母さんもそうだけど、どういう生活をしてたの?」
「食事は洞窟の周辺に生えている木の実を食べたり、お母さんが擬人化して狩りに出かけたりしていたの。寝床は「グラッファホーン」っていう魔物の皮を敷いてたの。」
「サバイバルみたいな生活だな。」
「でも不満は無かったの。そもそもそれしか分からなかったの。人がどういう風に日々の営みを送るのか露ほどにも知らなかったの。でもお母さんが色々教えてくれたの。」
「お母さんはどんな人なの?」
「お母さんは強いの。そして凄く優しいの。」
エディシンは紛うことなき龍である。
当然マルシャのように擬人化も可能だがそれは必要最低限しかしなかった。
それもそのはずで龍も龍人も人間をあまり好まないからだ。
だから龍の姿で時を過ごした。
龍の姿であれば空腹を感じるまでのインターバルが長い。
人間のように毎日食事を摂取する手間が省けるのだ。
それでも問題はある。
龍の姿を保つのには公の場ではいけない。
伝説の存在として扱われてきた龍が近隣国の森の中に生息しているなどと知られたら溜まったものでは無い。
恐らく有力な冒険者が討伐へと向かってくるだろう。
そんな面倒事は避けたい、と思ったエディシンが選んだのがグラガ洞窟であった。
グラガ洞窟は人間も魔人も寄り付かない。
近寄るには危険すぎるのだ。
魔物の跋扈する洞窟内に好き好んで入るのは何も知らない脆弱な魔物くらいだろう。
だからこそエディシンは喜んでここを住処にした。
エディシンからすれば洞窟内の魔物など塵芥同然である。
絶好の空間であった。
そしてある日少女と出会った。
たまたま狩りに出ていた時に人間界側の洞窟の入口に、幼気な幼子が捨てられていた。
その子は静かに寝息を立てていた。
太陽に映える銀髪は見るものの心を離さないほど美しかった。
龍は普通人を食べない。
人間は龍は人を食べる残忍な存在として見ているが、実際は違う。
普通に人と同じような食事をする。
また人を食べるのは竜である。
それが形を変え、竜も龍も人を食べる恐ろしい存在だと言うようになってしまった。
人を食べることが無いエディシンは困ってしまった。
この子をどうしようか。
普通はこの子が死んでしまっても自分には全く関係の無いことである。
だが何故か見捨てることが出来なかった。
エディシンは既に少女に魅せられていたのだ。
堕神と言えども人とは違う美しさを持つ彼女は、幼くとも群を抜いていた。
自分がこの子を守らなくては、という庇護欲に駆られてそのまま少女を養うことになったのである。
「——ってお母さんは言ってたの。でもこれを聞いて思ったの。私がただの人間だったらどうだったのって。」
実際、人並外れた容姿を持っていたから育てられたと言っても過言ではない。
最初はそこまで深く考えていなかった。
だが自分が堕神と知って不安に思った。
自分が堕神では無かったらエディシンに育てられていないのでは、と。
「だから私はお母さんに聞きたいの。自分がただの人間であっても育ててくれたかを。」
「レン・・・。」
「・・・なら聞けばいい。それを聞く権利はお前にはある。」
シュンの言葉に少女は強く頷いた。
そして遂にエディシンの元へと辿り着いた。
そこは巨大な空間で、今まで歩いていた狭い道のりが嘘のようであった。
「「「ッ!?」」」
シュン達は絶句した。
そこには一体の龍が倒れていた。
「お、お母さん・・・。」
少女の声が震える。
「お母さーんッ!!!!!」
そして少女の叫び声だけが洞窟内に響き渡った。
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