第四十五話 洞窟
ブクマを増やしたいですねぇ。
——グラガ洞窟——
「こいつ本当に速かったな。」
「とっても早いし可愛いね!」
「私もケセランに乗るのは初めてだったの。でもケセランも嬉しそうなの。」
「ヒヒーンッ!」
シュン一行はグラガ洞窟の前に着いていた。
昨日の説得から1日経って出発し、今は昼頃である。
普通ウォール森林からグラガ洞窟に辿り着くには1日ほど有するのだが、シュンとフィーアは『風陣』を使って空を飛び、少女はケセランで騎行した。
『風陣』は調整可能なので幾らでもスピードを上げられる。
最初は弱く設定していたがケセランが余裕で着いてきたので加速した。
結局それを繰り返し、猛スピードで辿り着いたのだ。
結果としてはほぼ互角で、シュンとフィーアは空気抵抗に当てられて少々疲弊していたが、ケセランは寧ろ久しぶりに駆けることが出来て嬉しそうであった。
因みに道中何体か魔物と遭遇したがシュン達のスピードに追いつけなかったり、その速さに怯えたりと障害になり得なかった。
「でもケセランを洞窟に連れていく訳には行かないんじゃない?」
「そうなの。ケセランお留守番なの。」
「ヒヒーン!ヒヒンヒヒンヒヒヒーンッ!!」
「何て言ってるの!?」
「分からないの・・・。」
ケセランはシュン達に抗議するように嘶いた。
だがそれが通じるには中々難儀である。
「もしかして着いて行きたいのかな?」
「ヒヒーン!」
「・・・、どうやらそうみたいなの。ケセラン、折角連れて来てもらったの。我儘は厳禁なの。」
「ヒヒーン・・・。」
先程まで嬉しそうにしていたケセランの表情は沈んでいった。
だがここでシュンが意外なことを言う。
「その馬を連れていくことは出来るぞ。」
「「え?」」
「ヒヒン?」
「簡単だ。こうすればいいんだ。」
「「ッ!?」」
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グラガ洞窟。
歴史は古く、生物が誕生する前から存在していたと言われるほど長い経歴であった。
洞窟内は岩が所々隆起しているので大変歩き難い。
それも奥に進めば進むほど険しさは増していく。
だがこの地形を利用する魔物も多く、その強さは外界の魔物と比べて段違いである。
更に道は入り組んでおり、迷い込んで殺されたといったケースは後を絶たない。
石橋を叩いて渡るように進むのが肝要なのだ。
「でも驚いたの。本当に便利なの。」
「うん、まさか【収納袋】を使うなんて。」
「ま、まあな。」
(まさか漫画の知識が役立つとはな。フィーア、チビ、これは俺の考えた策じゃ無いんだ。悪ぃな。)
今回ケセランの運搬方法として上げられたのは【収納袋】であった。
【収納袋】は生物も収納出来るので、ケセランを安全に連れて行ける点では打って付けであった。
シュンは漫画でやっていたことを実際に試してみた所、見事適用したのだ。
そのことを彼女達には話さなかった。
シュンの手柄のように感じさせてしまい、言葉では言わないが心の中で謝罪するのだった。
「結構歩いたがまだかかりそうか?」
「ゴメンなの。まだ見覚えのある道にはたどり着いていないの。」
「でも、こんなに入り組んだ道を殆ど暗記してるなんて凄いよ。」
「暗記してるのは人間界への道のりなの。後はこの洞窟の魔物の特性だけなの。魔界からの道は詳しくないの。」
少女は人間界へと続く道のりは知っていた。
だが魔界は違う。
魔界は先入観もあってか、あまり近寄ることが無かった。
そのためシュン達を助けるにも助けられないため、少しだけ悔しく感じた。
だがここでシュンがフォローする。
「まぁあれだ、魔物と遭遇したらそいつの弱点とか教えてくれ。」
「!、ありがとうなの。」
「ふん・・・。」
少女はシュンをフォローするはずが、逆にフォローされてしまう。
だが素直に嬉しく感じた。
碌に何も出来ないが、シュンにそう言われるだけで自分がここにいてもいいと言われたように感じた。
「ふーん、お熱いですねお二人さん。」
「熱くないのッ!」
「そうだぞ?そんなに暑くないぞ?」
「「はぁ・・・。」」
「?」
面白くないと感じたフィーアが二人を揶揄う。
少女は赤面して否定するのだが、シュンは相変わらず抜けていたので理解出来なかった。
「だから!・・・ん?」
「どうした?」
「音がする。」
「この音は・・・、「ミルサラーク」なの!」
少女がそう言った刹那、大量の蝙蝠がシュン達を強襲した。
その数により巨大な黒玉のように見える。
「なんだあれッ!?」
「私を狙ってるよ!?」
「とりあえず逃げるの!」
少女がそう言うとシュン達はさらに奥へと駆け出した。
フィーアはシュンの速度に何とか着いていけるが、少女は明らか難しかった。
それに見兼ねたシュンは無理やり少女を背負った。
「きゃッ!」
「我慢しろ!フィーア、速度を上げるぞ。『風陣』を使う。」
「むぅ・・・、分かったよ。」
「何か不満があるか?」
「不満しかないよーだ!」
「ならいい案があるのか?」
「もういい!『風陣』ッ!!」
「あ、おい待てッ!『風陣』!」
(シュンゴメンなの・・・。)
拗ねたフィーアは『風陣』を使って、颯爽と進んでしまった。
シュンもそれに続くがフィーアが怒ってる理由までは分からなかった。
その全貌を理解している少女からすれば、無力な自分を悔やむだけであるが、役得なの、とも思ってフィーアだけには謝らなかったのだった。
その後も疾走するが遂に行き止まりに差し掛かってしまった。
「「「「「キキィ!」」」」」
「これは、超音波か・・・。」
「耳を塞ぐの!、ミルサラークの超音波、『超音破』は鼓膜を突き破るほどの高音を発するの!」
少女の声でシュン達は耳を塞ぐ。
するとミルサラーク達は一斉に口から音波を放った。
それは耳を塞いでいても辛いものであった。
「うっ・・・。」
「何よこれ・・・。」
「・・・、こうなったら一か八かなの。シュン、フィーア、目を閉じて欲しいの。」
「・・・分かった。」
「・・・うん。」
「『発光』!」
シュンとフィーアが目を閉じた瞬間に少女は唱える。
すると少女の身体から光が溢れ出した。
「「「「「キキッ!?」」」」」
ミルサラーク達はその閃光に呻き声を上げる。
少女はミルサラークの弱点を知っていた。
それがまさに光であった。
そもそもグラガ洞窟に潜む魔物は光に弱い。
大抵の魔物には効果抜群である。
幼少期に洞窟内の魔物に遭遇した時は、いつも使用していた魔法だ。
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『発光』
使用MP 20
身体から閃光を出す魔法。
目を開けている状態で使用すると最悪失明する。
だが目を閉じれば、ただの強い光である。
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『発光』は、いざと言う時に使うには打って付けの魔法だ。
だからこそ幼き頃の少女はよく当てにしていた。
だが一度「ローマッシュ」と呼ばれる蟷螂に遭遇した時に使ったのだが、彼らには効果が無かった。
それはローマッシュには『光耐性』の補助スキルがあったので意味を為さなかったのだ。
その後エディシンに助けられ、一晩中涙を流した。
それ以来大軍相手に『発光』を使うことを躊躇ってしまうようになった。
使っても意味が無いんじゃないか?
使って目を閉じている間に殺されるのではないだろうか?
使う度に疑心暗鬼に駆られることが殆どであった。
だが今回はその感情は湧いて来なかった。
それよりもシュンとフィーアを助けたいという感情の方が強かった。
多少の不安があったものの、口から自然と言葉を発していた。
そして少女のそんな考えは杞憂であった。
「チビ、フィーア行くぞッ!」
「うん!」
少女の『発光』でミルサラークは動けなくなり、あちらこちらへと飛び回っていた。
それを見逃すまいとシュン達は何とか逃げ切ることが出来た。
「このまま先に進むぞ!」
「了解!」
「・・・。」
少女は僅かに震えていた。
やはり以前のトラウマがあるのか直ぐに復帰出来なかった。
「レン、さっきは助かったよ。ありがとね。」
「え?」
「まぁ俺も助かった、感謝する。」
「え?」
シュンとフィーアは感謝していた。
剣では対処できず、魔法を使うにも最適なものが無かった。
風魔法と言えどもシュンとフィーアの使う風魔法は威力が絶大で極力使用したくなかった。
せめて広い空間ならまだしも、狭い洞窟内では使えるものも使えない。
だからこそ少女の『発光』は最適解であった。
「・・・こちらこそありがとうなの。」
素直にお礼を言われるとは思っていなかったので、顔を赤らめながらシュンの背中に顔を埋めた。
それから暫く奥へと進み、少女は気づく。
「この場所は・・・。」
「どうした?」
「この場所は知ってるの!シュン、右に曲がるの!」
「分かった。」
そこからは少女の指示に従って道を進んだ。
魔物と何体と遭遇したが苦戦することは無かった。
そして小一時間歩いてある事に気づく。
「おかしいの、こっちに行き止まりなんて無かった。」
「この場所も知ってるの?」
「そうなの。でも普段ここは通らないの。さっきからおかしいの。こんな穴、前には無かったの。」
「前には無かった?ってことは生き物の仕業ってことか?」
「多分そうなの。でもこの洞窟の岩は堅牢なの。それはこの洞窟にいる魔物でも穿孔するのは難しいの。」
「じゃあどうして・・・。」
「恐らく天使族なの。」
「どういうこと?」
少女は大天使セファーラルに襲撃された時のことを思い出していた。
エディシンに言われ逃げた時にジャイアントスネークに襲われた。
普段ここにはいないジャイアントスネークは、穿孔された場所を通って来たと考えられた。
恐らく今ここで道に迷ってるのはその穴を開けた天使族のせいであろう。
「参ったな・・・。」
「そろそろ休憩しない?、もうずっと進みっぱなしだよ?」
「それもそうだな。チビもそれでいいか?」
「構わないの。そもそも自分の足で歩いていない私が言えた義理じゃないの。」
「そう言えばずっと背負ったままだったな。」
シュン達は適当な場所で休憩することになった。
既に洞窟に入ってから数時間経過しており、外は夜になっていた。
今いる場所はシュンの『探索』を使って安全だと確認した。
最初から『探索』を使っていればいいのだが、『探索』を使っていると妙に疲れやすくなるのだ。
そのため必要最低限使いたくなかった。
だがミルサラークに襲撃されてから使うようにしたので、それからは敵と必要以上争うことも無かった。
「そう言えばチビのステータスってどうなってるんだ?」
「シュン、あんまり人のステータスを見せるように強要しちゃダメだよ。ステータスって言わば個人情報なんだから信頼してないと見せないものなんだよ?」
「そうなのか、以後気をつける。」
「よろしい。」
「でも私は別に気にしないの。寧ろ気にしてくれて嬉しいの。あ、そうだ、見せるかわりに私をパーティに加えて欲しいの。」
「パーティか。だが組んだらチビはこれからも着いてくるんだろ?」
「嫌なの?」
「嫌じゃないが、チビの保護者がな・・・。」
シュンはマルシャを想像していた。
少女が着いていくと知れたら絶対に面倒になると思ったのだ。
「おじさんにいつまでも迷惑をかけられないの。おじさんだけじゃない、お母さんにもなの。」
エディシンには幼い時から育てられた。
だが自分は実子ではない。
いつまでも迷惑をかけるわけにはいかなかった。
「ダメなの・・・?」
「うっ・・・。」
(上目遣いはダメだろ・・・。)
少女の姿はシュンがロステルラッテ城から出る時に懇願したフィーアの姿と同じであった。
あの時のフィーアも少女のように縋ってきた。
それをまさに今思い出していた。
「うぅ・・・、レンやるなぁ・・・。」
フィーアは少女がなかなか出来ると唸っていた。
シュンとフィーアが困惑していると少女は言った。
「まぁ今はいいの。とりあえずはお母さんに会うのが先決なの。でもシュンとフィーアになら私のステータスを見せて構わないの。」
「いいのか?」
「ステータスを見せるだけで信用を勝ち取れるくらいなら幾らでも見せるの。」
少女はそう言いながらステータスを開いた。
評価をお願いします。




