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第四十三話 堕神

少し中途半端な終わり方をしてしまいました。

——マルシャ家内——


「それにしてもどうして倒れたのよ?」

「確かに気になるの。」

「それは・・・。」


シュンはマルシャに喝を入れた途端に倒れてしまった。

改めて考えれば不自然極まりない。


「シュンって何か持病とか持ってたの?」

「いや持ってない。至って健康体だ。」

「じゃあ尚更倒れるのはおかしいよね。」


この時、シュンは唇を噛み締めた。

今回の件は自分がこの世界の事を話そうとしたから起きたことである。

その説明すら現段階では話せないのである。

歯痒さが否めない。


「その話はいつか必ずする。今は置いておいてくれ。」


シュンはフィーアに語気を強めて言った。

その目に偽りは無く、ただ純粋に信用して欲しいと訴えているだけであった。

フィーアも隠し事をされる事は良い感情を抱けないが、今回シュンが倒れたことで何かしら言えない理由が内包されていると悟った。


「前にも話せないって言ってたよね。それなら約束して。話せる時が来たら絶対に話すって。」

「あぁ約束する。」

「私にも話して欲しいの。」

「お、お前は今回の件に関係ないだろ。」

「仲間外れにするなんて酷いの。」

「仲間はずれ・・・。」


少女は既にシュンとフィーアに心を許していた。

それは先程命を救われたシュンもフィーアもそうであった。

しかしシュンは少女を仲間と言うには抵抗があった。

それは先程恥辱を味あわされたからでは無く、ただ純粋に巻き込みたく無いという意味合いが強かった。


「やっぱり()()お前を仲間と見なす訳にはいかない。そもそも今日あったばかりだ。確かに命を救われたことは感謝している。だがそれとこれとでは別だ。」


これから自分が歩む道は茨の道であろう。

そんな難所を少女に進ませる訳にはいかない、そう思っていた。

だから敢えて突っ撥ねるような、言い方をしたのだ。

だが少女の諦めは悪かった。


「〝まだ〟っていうには時間が経てば仲間と認めてくれるってことなの。そもそも私を仲間として見なしてくれないのは当然なの。会ったばかりで信頼も無いし、見た目も強そうに見えないはずなの。」

「・・・。」

「それでもまずは私の話を聞いて欲しいの。」

「・・・分かった。話は聞く。」

「ありがとうなの。私の話は襲われた理由の一つである私自身が供物であるってことなの。」

「確かにその供物って言うのは気になるな。」


少女が天使族に狙われたのは彼女が人神の供物であるからだ。


「実は私、()()()()()なの。」


------------------------------------------------------------


堕神。

それは天空界では取るに足らない者を指す言葉である。


天空界は現霊界(セルフィア)と変わらず、多くの住民が生活している。

だが市民のような存在はいない。

いるのは現霊界(セルフィア)の諸地域を統べる唯一神と堕神のみであった。


堕神は唯一神には逆らえないが現霊界(セルフィア)の市民と変わらない生活を営むことが出来る。

だが一つ特殊なことがある。

それが唯一神への供物であった。


唯一神、人神や魔神といった存在は姿を保つために天霞(あまがすみ)と呼ばれる物を摂取する。

普段食事を必要としない唯一神でも定期的に天霞(あまがすみ)を摂取する必要があった。

天霞(あまがすみ)は堕神の子供に多く内包されている。


そう、少女は天霞(あまがすみ)として選別されたのだ。

これは堕神の中では名誉なことである。

どんなに愛する子供が供物となっても笑って別れを告げるのが常識であった。


だが少女の両親は違った。

愛する我が子を供物になどさせられない、そう思った彼らは少女の頭に〝記憶の鍵〟をかけて現霊界(セルフィア)に逃がしたのだ。


しかし当然そんなことは許されない。

結局彼らは反逆罪と見なされて処刑されてしまった。


その後幾ら天空界に数多く存在する堕神だとしても現霊界(セルフィア)に神が存在するのは拙いと思い天使族を遣わせた。


「——というふうに、私も神に関わってる存在らしいの。このことはあの天使族の人から聞いたから確信はないけど嘘とは思えないの。」


少女はソルヴィンから堕神について聞いていた。

天使族は唯一神である人神を崇めていても堕神は崇めていない。

それ故に少女を供物として献上することはなんとも思っていなかった。


少女もソルヴィンの話を端から信じている訳では無い。

だが自分の幼い時の記憶に何かしらの細工が施されていて思い出せないのなら、全てを否定することは出来なかった。


「恐らく私は堕神の子供で間違っていないの。そうじゃないと態々天使族が私を狙うなんておかしいの。」

「堕神って存在は初めて聞いたけど、レンは普通の人とはなんだか違う感じがする。」

「私は光魔法が使えるの。普通光魔法は勇者か聖女しか扱えないの。光魔法を所有している人は普通の人と違うオーラを纏うと聞くの。言葉では表せない存在感があるらしいの。」

「へぇー、そう言えばレンって博識だよね。」

「私が色々知ってるのはお母さんから教えてもらったからなの。その影響で勉強するのは嫌いじゃないの。」

「俺には考えられないな。」

「おじさんは身体で覚えるタイプに見えるの。」

「・・・脳筋。」


シュンは小声で呟いた。


「おい坊主聞こえてるぞ。」

「とりあえずデザートも用意したから続きはそれを食べながらだ。おっさんは固形物を食べるのはやめておいた方がいいな。」

「無視すんなよって構わねぇぜ、。」


マルシャがそう言うとシュンは席を立ち、()()()()()()を持ってきた。


「【マッハビーの蜂蜜】をふんだんに使ったハニータルトだ。」

「タルトッ!?」

「タルト?」


フィーアはタルトと聞いて嬉々とした声を上げる。

少女はタルトという単語を聞いたことがあっても、実物を見たことは無かった。

マルシャも同様に不思議そうな顔をしている。


「まぁ食べてみろ。」


シュンにそう言われフィーアと少女はハニータルトを口に運ぶ。

すると・・・


「「美味しい(の)ッ!!!」」


部屋中に声が谺響(こだま)した。


「本当に美味しい!シュンの料理の中でも1番2番を競うくらい美味しいよ!これなら店を出してもおかしくないレベルだよ!」

「美味しいの。私が生きてきた中で一番美味しく感じたの。他の料理もそうだけど、シュンは本当に料理上手なの。」

「そう言ってもらえると作った甲斐があるな。」

「いいなー、レン俺にも一口・・・」

「おじさんはもう寝るの。それと今は話しかけないで欲しいの。」

「レンが反抗期!?」


シュンの作ったハニータルトが、あまりにも美味しいので少女はいつにも増してマルシャの扱いが疎かになっていた。


結局その後スイーツを楽しむことに夢中で、話を続けることなくお開きとなってしまった。

シュンとフィーアも詳しい話はまた明日と言われ、マルシャの家で一泊することになるのだった。


------------------------------------------------------------


翌日、軽く朝食を済ませた後、昨晩のように話し合いが行われていた。


「——なるほどなの。通りで強いわけなの。」

「俺も長年生きていたが、破者に会うのは初めてだ。」


既にシュンとフィーアの身の上話は済んでおり少女とマルシャは改めて二人の強さを思い出していた。

魔王に従う大魔人は魔界でも有名で、その強さは折り紙つきである。

破者も伝説の存在として扱われていた。


シュンもフィーアも他言しないならという条件で自分達の立場を話した。

それは少女もマルシャもただの人間や魔人では無く、これからも関わることがあるだろうと思ってのことであった。


「俺達のことはこんなところだ。」

「分かったの。じゃあ何でこの森に来たの?」

「それはだな、」


シュンは少女達に自分がこの森に来た理由を話す。

セックの農業を支えるこの森の土壌が荒蕪していたこと。

その原因を探るためにウォール森林に入ったこと。

犯行はワールドウッドによるものであったこと。


「もしかしてあの巨木が犯人だったのか?」

「なんだ?おっさんはアイツにあったのか?」

「あぁいきなり現れたんだが反撃したら逃げてったんだ。まさかアイツが犯人とはな。」


マルシャは少し後悔した。

あの時仕留めていれば被害を最小限に抑えることが出来たかもしれない、そう思っていた。

しかし、


「おっさんは何も知らなかったんだろ?なら悔やむ必要は無い。」

「だがな・・・」

「悩むくらいなら行動しろ。もし罪悪感が消えないなら復興作業を手伝うとかして気を紛らわせ。」

「そ、そうだな、その通りだ!俺は考えるよりも行動する方が性に合ってる。善は急げだ。早速支度を・・・。」


そう言いながらマルシャは席を立った。

しかし少女はそれを良しとしない。


「その身体で何をするの?先ずは自分の身体が最優先なの。今はゆっくり療養して欲しいの。」

「うっ、分かったよ。」


しぶしぶマルシャは諦めた。

そして今度は違う話題になる。


「そう言えばお前達これからどうするんだ?」

「俺達は一度セックに戻って報告をする。その後は・・・。」

「後は?」


フィーアがシュンに問いかける。


実はフィーアはシュンが旅をする理由を聞いていない。

そもそもシュンがクラスメイトと転移していることは誰にも伝えていないのだ。


それは自分以外が人間界で勇者に転移したなど知られた日にはどう思われるかということである。

恐らく良い感情は抱かないだろう。

幾ら人間より敵対心が薄いと言っても敵であることに違いない。

そのため決心するのが遅くなってしまった。


「フィーア、それとチビもだ。話しておくことがある。」

「俺は?」

「おっさんは・・・、まぁ適当に聞いてろ。」

「扱い・・・。」


マルシャが自分の扱いに小言を言いながらもシュンは話し始めた。


「実は俺がこの世界に来る時に、他にもこの世界に来ている奴らがいる。」

「そうなの!?」

「あぁ、30人は転移している。」

「30人ッ!?」


フィーアは先程からの爆弾発言に驚かざるを得ない。

しかしシュンが止まることは無かった。


「そしてそいつらは現在人間界で勇者をやっているはずだ。」

「・・・。」

「そいつらにだな・・・、って聞いてるかフィーア?」

「聞いてるよ・・・。」


既にフィーアの許容量はオーバーしていた。

それくらい衝撃な内容であった。

少女もシュンの話を聞いて驚いていた。

だが彼女は不思議に感じていた。


「なるほどなの。でも気になる箇所があるの。なんでシュンだけ魔界に転移したの?」

「確かにそれは不思議だよね。」

「それも含めてだ。俺一人だけ魔界に転移された理由を話すには、その人間界に転移した奴らに会う必要がある。」

「どうしてそんな手間なことをする必要があるのさ?」


フィーアがごく普通の疑問を投げかける。

そこでのシュンの回答は


()()()()。」

「また隠し事ー?シュンって秘密主義だよねー。」

「違うッ!言いたくても言えないんだ!それがどれだけ辛いか分かるか?俺がこのことを伝えられればどんなに良かったか・・・。」

「ご、ごめん。そうだよね、シュンにも言えないこととかあるよね。」

「すまない・・・。」


フィーアはシュンの秘密主義に呆れていた。

それなりに長い付き合いでもあるというのに、旅の目的すら話さなかったのだ。

だからこそまた秘密にされるのは度し難いことであった。


だがシュンの悲痛なる叫び声を聞き、自分勝手な考え方であったと反省した。

シュンもこんなことを言うつもりは無かったので、素直に謝罪した。

隠し事を好かないシュンに今の現状はかなり酷なものであった。


「ただこれだけは言える。俺が今話せないことを話した場合、俺は死ぬ。」

「「「ッ!?」」」


シュンの発言に全員驚愕する。

話すだけで死ぬという現象に理解が追いつかない。

しかし3人は昨晩のことを思い出していた。


シュンが何かを言おうとした時、酷い頭痛に見舞われそのまま呼吸困難で死にそうになってしまった。

今、何故シュンが倒れたのか僅かだが理解出来た気がした。


「察していると思うが昨晩の件も同じだ。これで以上だ。これ以上話すのは拙いからやめる。」

「分かったよ。これ以上詮索するのはやめる。それでシュンの仲間(?)と会うつもりなの?」

「仲間ではなくてクラスメイトだ。会えれば俺が話せない理由もわかる。」

「クラスメイトはよく分からないけど今後については分かったよ。」

「まさか着いてくるつもりか?」

「当たり前じゃない!」


フィーアは胸を張って答えた。


「角はどうするんだ。」

「あ・・・。」

「大体魔人のフィーアが人間界に入るのは拙い。だから今この話をするのは丁度いいと思ったんだ。」

「そんな・・・。」


シュンは人間界にフィーアを連れていく気は無かった。

それもそのはずで、魔界と人間界では訳が違う。

フィーアは『偽装(ダウト)』を取得していないので、人間に変化することが出来ない。

然る所バレたらアウトなのだ。


フィーアもその危険性を分かっていたので、言い返すことが出来なかった。

しかしここで助け舟が出された。


()()()()()()()()()()()。」


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