第三十五話 爆発
——ウォール森林——
「フィーア、木の弱点って知ってるか?」
「木の弱点?」
シュンは笑いながらフィーアに聞く。
聞かれたフィーアは顎に手を当て思案する。
「やっぱり火じゃない?」
「正解だ。」
「でも火って・・・、まさか、アレを使う気なの!?」
「それも正解だ。」
「だ、だめだよ!あれを使ったら周りに色々な被害が出ちゃうよ!」
そんな魔法を放ったら自分達だけでなく、周囲に影響を与えてしまう。
だがシュンは涼しい表情でフィーアに語った。
「安心しろよ。何も一発放つだけじゃない。そもそも使うなら最初に使ってたさ。」
「確かに・・・。」
「いつまでも敵は待っていないからな、簡単に説明するぞ。」
「うん、分かったよ。」
シュンはフィーアに説明すると、フィーアは訝しそうな表情をした。
本当に上手くいくのかといった顔であった。
それでもやってみる価値はあるとシュンの熱意に同意する。
「作戦開始だ。」
「うん!」
シュンがそう言うとフィーアはその場に残り、シュンは詠唱を開始した。
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ワールドウッドは理解出来なかった。
この森に来て二度も殺されそうになったのだ。
偶然この森に来て、元の場所より質の良い栄養分が吸収できると狂喜乱舞していた矢先これである。
最初の敵は恐ろしい男であった。
自分のことなど眼中に無いような目で見てきたのを覚えている。
それで自分が憤怒し男の近くにいた少女を殺そうとしたらその男は口から火を吐いたのだ。
そして殆どの根を焼かれてしまった。
危機を感じた自分は死ぬ気でその場から逃げ出した。
あの時は生きた心地がしなかった。
明らかに自分を殺そうとしていた。
今までは自分の住むスティグマの森に侵入する者を蹂躙するのが自明であった。
しかし、現実に相反する事が起きている。
今の男にしてもそうだ。
先程自分の『デススラッシュ』で死にそうにしていたので嘲笑っていたのだが、隣の女が魔法を唱え癒してしまった。
今ではピンピンしていて最初よりも好戦的になっている。
そして何故か背筋が寒い。
自分の方が強者の立ち位置にいると自負しているのに、それがまるで虚偽であるかのように感じてしまう。
このままでは自分の利にならないことが起きる。
それは最初にこの森で戦った男と同じ感覚だった。
何か起こる前にこの場から去ろうと向きを変え歩き出した時であった。
「何処行くんだよ?」
「ギギィ」
「『暴風』!」
「ギギッ!?」
逃亡しようとした途端、風圧の壁により塞がれた。
そしてその壁に当たった箇所の樹皮が削れていた。
向きを変え周りを見ると周囲にも同じような壁が張られていることが分かった。
「どうした、逃げないのか?」
「ギギ・・・。」
この男は自分が逃げられないことを知っていてこのような言い方をしていると本能で察した。
口角の上がっている顔が妙に神経を逆撫でする。
「ギギギギギギギギィ!!」
「何言ってるか分かんねぇよ。」
自分が激怒し威圧しているというのに、この男は涼しい顔をしている。
自分がこの雰囲気を出せば大抵の生物は怯えて逃げ出すのだが、この男は違い肝が据わっているようだ。
だが感心してはいられない。
一刻も早くこの場を切り抜けなければ・・・、
「考えているところ悪いが詰みだ。」
「ギギギギ?」
「魔氷!」
「ッ!?」
この男がそう言った途端、自分の口元が固まり声が出せなくなった。
すると口元を起点にして自分の下半身が冷凍されて行った。
動こうにも凍らされているため動かせない。
身の丈のお陰で唯一、枝や葉まで凍ることは無かった。
「凍らされるのは初めてか?」
「・・・。」
「って聞いても答えられないし、そもそも聞いても分からないか。」
この男は愉快そうに喋る。
拙い、嫌な予感がする。
このままではこの二人を殺すことは愚か、逆に殺されてしまう。
恐らくこの男に攻撃しても無駄であろう。
それなら少しでも現状を切り抜けるために、自分への攻撃を逸らそう。
「ギギギギィ!」
自分の生えている葉を男の近くにいた女へと放つ。
自分の葉は堅牢であり、人の皮膚など容易に切り刻むことが出来る。
大方この女は男の大事な者であろう。
そんな存在が傷つくのなら黙って入られない。
ましてやこの男より貧弱に見える。
狙うならこの女しかいない。
だが、予想外のことが起きた。
「『風陣』!」
「!?」
驚くことに葉が女に当たる前に上へと上昇したのだ。
まるで最初から当たることは無かったかのように。
「シュンのお陰だね。風魔法の修行をしてたから『風陣』で簡単に避けれたよ!」
「あれだけ練習したからな。にしてもコイツ、フィーアに手を出しやがったな。」
「!?」
女と和やかに会話していた筈が、この男、今まで以上に魔力が膨大になっていた。
拙い。
本当に拙い。
この女に手を出したのは失策であった。
今まで感じたことの無い感情に陥る。
逃げたい、泣きたい、叫びたい。
これらの感覚は今まで生きていた中で味わったことの無い感覚であった。
この男の魔力に充てられたストレスからか落葉が始まる。
既に葉は一枚も残っていなかった。
「死ね、『魔炎』。」
最後に聞いた言葉は酷く冷たく、自分が生まれたことに強く後悔した。
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シュンは『魔炎』を放った。
すると氷で覆われていたワールドウッドは爆発した。
ワールドウッドの枝や樹皮、根などが辺りへと吹き飛ぶが『暴風』により遠方へと飛ぶことは無かった。
「『風陣』。」
シュンとフィーアの方へ飛んできた破片はシュンの『風陣』により接触すること無く、上方へと舞い上がる。
暫くすると周りにはワールドウッドの残骸が散らばっていた。
「無残な光景だね・・・。」
「あれだけの巨体だ。これでも最小限だろ。」
「それもそっか。」
ワールドウッドは全長10mで幹も太い。
そんな巨体を自らの剣術だけで切り抜けるのは不可能に近い。
それならば魔法を使うしかない。
だが魔法にも生まれ持った素質がある。
シュンは『挑みし者』の効果で後天的にも覚えることが可能だが都合良くその場に適した魔法を持ち合わせている訳では無い。
勿論最強と謳われる魔系をシュンは4属性覚えている。
これを連発すればワールドウッドに楽に勝てることが出来ただろう。
だが戦いの場所はセックの経済を支える農地である。
『魔炎』を放ち続けたら火事になることは言うまでもない。
そうなったらセックに莫大な被害を与えてしまい、犯人探しの自分達が一番の罪人になってしまう。
そこでシュンが考えたのがこれであった。
『暴風』で被害を抑え、『魔氷』で相手を凍らし、『魔炎』で火を放つ。
つまりシュンは水蒸気爆発を狙ったのだ。
水が火を消すのは常識だが、水が非常に温度の高い物質に触れると急激に気化し爆発を起こす。
例えると、熱した鉄板に水を垂らすと弾け飛ぶ。
同様のことを大規模化したのが今回の事象である。
『魔氷』の氷でワールドウッドを覆い、『魔炎』の大熱をワールドウッドの内部に放つことでワールドウッドの中心から爆発させることが出来たのだ。
本当は普通の魔法使用者は自由自在に魔法を放てる場所を選択出来ず、大抵は視認できる表面上である。
だがシュンは補助スキル『魔法使い』を使用していた。
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『魔法使い』
魔法を指定した範囲に放つことが出来る。
しかし好きに操ることは出来ず、属性ごとに訓練が必要。
全属性を使える者は極めることで『真の魔法使い』を獲得可能。
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指定した範囲に魔法を放つことが出来たが、魔法自体を操るのは本人の技術による。
操るとは魔法自体を伸長したり、拡張したり、縮小したりすることである。
シュンは風属性の訓練を馬車馬の如く行ったので、好きに操ることが出来た。
その証拠に称号欄に『風魔法の使い手』が存在する。
恐らく『○○の使い手』と記されているのが全属性揃っていれば『真の魔法使い』を手に入れることが出来るのだろう。
それについてはまた別の話である。
何はともあれ今回は上手く魔法を駆使してワールドウッドを退治したのだった。
流石にシュンもフィーアも少々疲れたようだ。
「やっと終わったな。」
「疲れたよぉ。」
「ステータス確認するか。」
◇◆◇◆◇
アベ シュン 年.16 男
<ステータス>
HP 4000/4000→3000/4200
MP 6500/6500→4550/6800
攻撃 650→670
防御 540→560
速度 750→780
的中 590→610
幸運 800→830
<スキル>
『破者の手』
『魔炎』『魔氷』
『魔風』『魔雷』
『終焉』
『風球』『風針』
『風陣』『暴風』
『手当』『回復』
『大回復』
『激励』
『速度』『硬質化』
<補助スキル>
『挑みし者』
『痛覚耐性』『不屈の精神・上』
『剣の達人』
『魔法使い』
『偽装』『真視』
『探索』『気配遮断』
『料理人』
<称号>
『超越者』『殺戮者』『ストイック』
『急成長』『剣術に長けし者』『竜の装備を纏いし者』
『魔王の血を継承する者』『青髪碧眼』
『オレ系』『勘違い系男子』『鈍感』『バカシュン』
『魔法に長けし者』『風魔法の使い手』
『巻き込まれ体質』
『受け』『調理狂』
『投獄されし者』→new
『サディスト』→new
『炎魔法の見習い』→new
『氷魔法の見習い』→new
『未知の生物を破壊し者』→new
◇◆◇◆◇
◇◆◇◆◇
フィーア=グルラージ 年.16 女
<ステータス>
HP 1500/1500→1200/1700
MP 4000/4000→3450/4300
攻撃 290→340
防御 260→300
速度 510→560
的中 420→500
幸運 420→440
<スキル>
『風球』『風針』
『風陣』『暴風』
『魔風』
『手当』『回復』
『大回復』
『激励』
『速度』『硬質化』
<補助スキル>
『小剣の達人』『偽装』『料理人』
『風攻撃・上』
『治癒向上・上』
<称号>
『風使い』『回復役』『剣術に長けし者』
『貴族令嬢』
『魔王に仕えしもの』『メイド』『ボッチ』
『初めての友達』『初めての親友』『初恋娘』
『おっちょこちょい娘』『素直な感情』『気の毒娘』
『大食漢』
『投獄されし者』→new
『虫殺し』→new
『シュン症候群』→new
『風魔法の使い手』→new
◇◆◇◆◇
「僅かだが成長してるようだな。」
「やったよシュン!『風魔法の使い手』手に入れたよ!」
「ほう、これで飛んで移動できるな。」
「う・・・。高いところは嫌〜。」
シュンもフィーアもワールドウッドは強敵だったのでたった一体倒しただけでも成長を味わうことが出来た。
またシュンの献身的?な特訓により、遂にフィーアは風魔法を極めることに成功したのだった。
シュンはようやく空を飛行して移動出来ると愉悦に浸ったが、フィーアは高所が得意ではないので乗り気では無かった。
「とりあえず依頼は成立だ。樹皮は恐らく素材になるから拾ってくぞ。」
「はーい。」
シュンとフィーアはワールドウッドの木の枝を拾っていく。
ワールドウッドは未知の生物なので相場が分からない。
予想では高値で取引されるだろう。
根は大きいので【収納袋】に入れやすいように【ウェンソード】で切断していく。
葉は一部枯れており、全てを拾うと日が暮れてしまうので適量でやめておいた。
「何これ?」
「何だその珠?」
ワールドウッドの体内から緑に輝く珠が出てきた。
何処か【竜玉】に似ている。
「分からないから【収納袋】に閉まっておけ。」
「分かったよ。」
結局考えても分からなかったので保留することにした。
そして大方作業が終わった時であった。
ドンッ!、カンッ、カキンッ!
「「!?」」
作業途中にまだ進んでいないこの森の奥地で破裂音が聞こえた。
その後に何かが響く音が聞こえる。
「フィーア、行くぞ!」
「う、うん。」
シュンとフィーアは手を止めて音のする方へと走り出した。
『暴風』の説明が載せれないかったので今度本編で出します。(多分)
シュンの補助スキルは
『挑みし者』
『痛覚耐性』
『不屈の精神・上』
が常時発動しています。
他の補助スキルは使う時に発動します。
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