第二十一話 最弱
——ロステルラッテ 冒険者ギルド内——
「——で、説明してください!」
「だから俺達2人で倒してきたんだって」
「フィーアさんが倒したんでしょ!嘘言わないでくださいッ!」
「いえ、シュンが倒しました」
現在ギルド内では3人の論争が繰り広げられていた。
メンバーはシュン、フィーア、カルナの3人だ。
カルナはシュンが2人で倒したという説明に納得出来ないでいた。
それもそのはずで珠の光らなかったシュンはFランクと思われていたのだ。
FランクのシュンがSランクのウェンドラゴンを討伐できるはずがない。
つまり、銀色に光りSSランクのカードを貰ったフィーアが討伐したと思っているのだ。
これにはフィーアも追随し自分は何もしていないと、さらに論争はヒートアップしていたのだ。
終わらない論争にシュンは頭を悩ませた。
(これいつまで続くんだよ・・・)
そう思っていた時だった。
「うるせぇよ。」
2階から重たい声がギルド内に響き渡った。
そう声にしたのはオッサンだった。
ボサボサの髪に眠たそうな細い目、手入れのしていない無精髭が印象的で、何より頭の両脇から生えている角はかなり立派なものだった。
体格は細く、ブカブカの長衣を着用している。
栄養失調かのように頬がこけていて、今すぐ倒れてしまってもおかしくないほど消耗していた。
「ギルマスッ!? 何で起きてるんですか!」
「ぎゃあぎゃあうるせぇからだろ、チビ」
「チビィ!? 私今月5mmも伸びたんですよ! 撤回してください!」
「おうおうすげぇでっけぇな、声」
「声じゃなーいッ!!!」
そう、2階から降りてきたこの死にそうな男はギルマス、ギルドマスターであった。
「君らがこの喧騒の原因か?」
「俺は真実しか言ってねぇ。てか、もう用を済ませて帰りてぇんだよオッサン」
「お、オッサンって・・・、これでも25なのに・・・」
流石にオッサンは悲しかったのか、声がどんどん小さくなってゆく。
だがそれでも、ギルマスだけあるのか立ち直りは早かった。
「まぁ騒ぎを起こしたんだ、説明くらいしろ」
「チッ、面倒くせえ」
シュンは悪態をつきつつも、オッサンに説明する。
「なるほどな、確かに信じるにも信じられるものじゃねぇな」
「だから困ってんだろ。別にこっちは買い取って欲しいとか言ってねぇんだよ。だからもう用だけ済ませて帰らせてくれ。流石に登山して竜倒して疲れたんだ。特にフィーアが」
「わ、私は別に・・・」
「さっきまで爆睡してただろ」
「むぅ〜、意地悪・・・」
心配して言ってくれていると分かっているので、反論しづらいフィーア。
確かに今回の討伐は呆気なく終わってしまったものの、感情面では溌剌としていたフィーアはかなり疲弊していた。
だが、オッサンはそんなフィーアの気持ちなど露知れず、シュンの言った言葉に引っかかった。
「ギルドで何の用だ?その用とやらで帰れないんだろ?」
「あぁ実は解体場のジジイから聞いてな、【収納袋】ってやつを買いたいんだ」
シュンは【収納袋】というものを欲していた。
機能は『収納』と同じで見た目もただの麻袋だそうだ。
しかし、収納するのには限りがあり衣装部屋ほどの大きさらしい。
それでも今回鍛冶屋に素材を持っていくのにはうってつけである。
素材は今解体場に置いてある。
『収納袋』はギルドで販売しているとシルバに聞いたためカルナに適当に説明をして早く購入して素材を引き取り帰りたかったのだ。
現状足止めを食らってしまったのだが。
「なるほどな詳細は分かった。とりあえずお前は『収納袋』が欲しいんだな?」
「オッサン飲み込み早くて助かるぜ」
「・・・。だが、お前には売らない」
「「ッ!?」」
シュンとフィーアは驚愕した。
飲み込みの早いオッサンだと2人共思ったのだ。
話が分かるならこの状況は直ぐに終わると思っていた矢先、まさかの反応だった。
「なんで売ってくれないんだよ!?」
「まずは訂正しやがれ。俺はスージョって言うんだ。まだ25なのにオッサン呼びは気に入らねぇ」
「悪かったよ、そこは訂正する。だからってなんで売らないんだよ!」
オッサンもといスージョは、とにかくオッサン呼びを止めさせたかったので本名を名乗った。
そして、彼はシュンとフィーアが『収納袋』を所持出来ない理由を説明する。
「そもそも『収納袋』は高ランカーパーティしか所持出来ないんだよ。個人じゃまず持てないし、坊主はパーティ登録もしていないそうだ。ましてや坊主Fランクらしいじゃないか。隣の嬢ちゃんならまだしもまず無理だな」
「パーティ登録だって!?」
パーティ登録は冒険者登録をしている者達が2人以上でさらに登録することをいう。
弱い者と強い者がパーティを組んだ場合、弱い者に比重が置かれる。
つまり、今ここでシュンとフィーアがパーティを組んでもFランクのシュンがいる限り、パーティランクはFランクのままなのだ。
「最低でもSランクパーティじゃないと売れんな。まぁSランク以上のパーティなんて、魔界一と謳われるここのギルドでもなかなかいないがな」
スージョの言う通り、Sランク以上の冒険者はまず少なく、さらにその集まりのパーティなどほぼいないに等しかった。
そして高ランカーになればなるほど依頼料金を独り占めできることから個々で活動する者が増える。
そのためパーティが組まれるのは緊急依頼が入った時に臨時パーティを組むか、低ランカーの集まりくらいであった。
「クソッ! はいそうですかって言って帰ると思ってんのか!? FランクFランクばかり言って門前払いされるこっちの身にもなれってんだッ!」
シュンは白眼視される状況に憤りを感じていた。
どこにいっても最弱扱いされ冷遇されるのだから今まで平然と振舞っていたのは精強な理性の為せる技だろう。
「あぁお前の気持ちなんぞわかんねぇな。だが内の従業員が迷惑かけたんだ、詫びくらいさせろ」
「あぁ詫びだぁ?」
「まぁそうピリピリすんな、悪くない提案だ。お前の実力を見てそれ相応の実力なら無料で『収納袋』をくれてやるし、ランクも嬢ちゃんと同じでSSランクにしてやるよ」
「ほう・・・。」
「ちょ!? ギルマス無理ですよ! シュンさんFランクで弱いんですから!!」
「うるせぇぞチビィ! そもそもFランクならウェンドラゴンの住処にすら近寄れねぇだろうが!」
「それは・・・、お留守番してたとか?」
「バカ言うのも大概にしやがれッ!!」
「ひぇ〜!」
(なんだこの茶番・・・)
憤っていたシュンもスージョとカルナの寸劇に呆れざるを得ないでいた。
そしてフィーアが口火を切る
「あの、凄くこちらの利になる話だと思うんですけど、実際どうやって実力を見分けるんですか?」
「利になるかは知らんがそうだな、軽く模擬戦とかどうだ?」
「模擬戦ねぇ・・・」
シュンは〝模擬戦〟と聞き右腕を触った。
シュンは過去の模擬戦でフンフに右腕を切断されているため、忘がたい記憶として根付いていた。
それをたった今思い出し、顔を顰めた。
だがあれは過去の未熟な自分が起こした愚行故の結果であり、因果応報であった。
「その話乗った」
「シュン大丈夫?」
フィーアは過去の事を知っていたため憂慮してしまう。
幾らウェンドラゴンをほぼ一撃で屠ったとしても、一抹の不安は隠せなかった。
「心配すんな、負ける気はねぇよ」
「シュン・・・。」
「・・・それで、俺はオッ、スージョと闘えばいいのか?」
「お前なぁ・・・、はぁまぁいい。普通なら俺がやらなきゃいけないんだが、俺はこのチビ助に寝ろ寝ろと叱咤されててな」
「チビ言うなぁ!」
「だから俺は相手出来ねぇんだよ。だが、このギルド内には俺程ではないがそこそこ出来る力量連中はいるからな」
スージョがそういった時だった。
「じゃああたしが相手しようかしらん」
「うげッ!? きゃ、キャサリン!?
そう言ったのはあの異類異形の怪物、キャサリンであった。
その場にいた男性達の血色が次第に薄くなってゆく。
たが、キャサリンはそんなもの眼中に無かった。
「大好きなスージョの頼みなら断れないわん」
「いや、頼んでないんだが・・・」
「気にしたらダメよん」
「お、おう・・・」
「そういう訳だからあたしが御相手するわん」
「そ、そうか、分かった」
(に、逃げたい・・・)
どんな危険モンスターでも物怖じしない『不屈の精神・上』がガンガン警鐘を鳴らしているのだった。
次回、シュンVSキャサリンです。
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