第十八話 邪竜
ついに・・・
——ケルー山脈 山頂——
「GYAAAAAAA!!」
「こっちだ灰色トカゲ!」
シュンに挑発されたウェンドラゴンはすぐさま自分に向かって走るシュンにブレスを吐いた。
このブレスは橙色で明らかに触れると拙いと分かるものだった。
だが、シュンは軽く跳躍しそれを回避した。
「『激励』!」
フィーアがシュンに向かって魔法を唱える。
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『激励』
使用MP 50
この魔法をかけられた者は攻撃が50%増加する。
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魔法をかけられたシュンは、相手の巨大な図体を利用し死角に入り首元めがけて鉄剣を振るった。
ボキッ
「チッ」
しかし、量産型の鉄剣では当然硬いウェンドラゴンの鱗は刃が通らなかった。
それでも攻撃力はフィーアの魔法で増加していたため打撲攻撃として陥没させることは出来た。
「GYAAAAAAAAAAA!!!」
ウェンドラゴンは味わったことの無い痛みに悲鳴をあげた。
そしてシュンを狙っていたが標的を変えフィーアを狙いだした。
「GYAAAAAA!!」
「えッ!? 私〜!?」
フィーアはまさか自分が狙われると思っていなかったようで油断していた。
ウェンドラゴンはフィーア目掛けて突進する。
「こうなったら〜!」
そういうとフィーアは腰から小剣を取り出し、ウェンドラゴンに向かって走る。
そして衝突する刹那、
「『風陣』ッ!」
フィーアがそう叫ぶとフィーアの足元から猛烈な風が吹き上がり、フィーアは素早く上昇した。
そしてまたもや獲物を見失いキョロキョロしているウェンドラゴンの胴体に小剣を突き刺した。
ザクッ
「GYAAAAAAAAAAA!!!」
あまりの激痛に悶えるウェンドラゴン。
しかし、やられ続けている訳ではなくウェンドラゴンは着地したフィーアに向かって尻尾を薙ぎ払った。
(ま、拙いッ!)
フィーアがそう思い動こうとしたが間に合わないと悟り目を閉じる。
だが、ここでフィーアの身体が妙に軽くなった。
それもそうだろう。
フィーアはシュンに抱えられていたのだから。
「危ないところだったな」
「え? え、あ、はい!!」
吹き飛ばされると思っていたため、頭の処理が追いつかない。
そして、自分が抱えられて助けられたと気づき恥ずかしさと同時に胸の奥が熱くなるのを感じた。
(な、なんでこんな気持ち・・・)
先程「ビッグボアー」の時も似たような感覚を覚えたが今回はその比では無かった。
胸が熱くまともにシュンのことを見ることが出来ない。
抱えられている今、この胸の高鳴りがシュンに聞こえてないかと考えるとさらにその速度は加速するのだった。
「にしてもすげぇな」
「ふぇ?」
「おい、大丈夫か? 頭でも打ったか?」
「あ、はい大丈夫です! ご心配なさらず! そして凄いとは?」
いきなりシュンに声をかけられ間抜けな返事をしてしまいさらに頬を朱に染めるが、改めて気持ちを落ち着かせつつシュンに聞くのだった。
「さっきフィーア飛んだだろ?」
「あ、あぁ『風陣』ですね」
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『風陣』
使用MP 100
好きな範囲に上昇気流を発生させることが出来る。
強弱を調整出来るため攻撃にも防御にも使える。
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「すげぇ便利だな」
「シュンも文字化けして名前は分からないですが、練習すれば覚えられると思いますよ?」
「本当かッ!?」
「ひゃッ!? ひゃいッ!!」
シュンは『挑みし者』を持っているため、努力さえすれば普通は先天的に決まっているスキルを覚えることが可能になるのだ。
それをフィーアは名前は分からないが知っていたためシュンに伝えたのだ。
そしてシュンは自分も『風陣』を覚えられると知り、やや興奮気味でフィーアに問い詰めたのだ。
『風陣』を使えば飛行するのも夢ではないと子供心に笑みを浮かべたため、それを間近で、ましてや抱えらた状態で直視したので情緒不安定のフィーアはまた心臓が高鳴り出すのだった。
(本当に私どうしたのよ〜!)
自分の感情が理解できないためかなり焦燥に駆られていたがここでトドメの一撃が放たれた。
「じゃあ帰ったら俺に教えてくれよな」
その無邪気な笑みを見て半ば呆然としたフィーアだが頬を染めつつ自然と言葉は出ていた。
「はい・・・」
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「さて、そろそろこの灰色トカゲを駆除するか」
2人が話している間ウェンドラゴンは身体を休めていた。
ウェンドラゴン自身、経験したことのない痛覚に半ば動くことが出来なかったのだ。
ただ2人を睨みつけるしかできなかったのだ。
それでも時が経ち、痛みこそ取れないものの気持ちの整理は着いたため再度2人を見据える。
そして・・・、
「GYAAAAAAAAAAA!!!」
鳴いた。
その雄叫びは今日一番の音量であった。
あまりの爆音に空気が震え、シュンは吹き飛ばされそうになった。
しかしシュンはしっかりとフィーアを抱え、足で踏ん張り、梃子でも動かない頑丈さをウェンドラゴンに見せつけた。
その様子を見たウェンドラゴンはさらに怒り、親の仇のような形相でシュンを睨む。
「すげぇ顔してるな、アイツ」
「の、呑気ですね・・・」
「まぁな、アイツの実力は分かったしさっさと倒すか」
「じゃあ降りますね」
フィーアはずっと抱えられていたため居心地が悪かった。
嫌ではない。
むしろ心が暖かくなる。
それでも、シュンの邪魔になると思い降りようとした矢先、
「いや、問題ねぇ」
「え?」
「まぁ降ろすのも面倒くさいからな、その体制で見てろよ」
「何を・・・」
「『魔風』」
フィーアが聞こうとした時であった。
シュンがそう唱えるとウェンドラゴンを包み込みように巨大竜巻が発生した。
(なにこの魔力ッ!?)
フィーアはシュンの内側から込み上げてくる魔力にただ驚愕するしか無かった。
そしてウェンドラゴンはそれに巻き込まれながら上昇していき、最後には地面に叩きつけられていた。
既に息絶えていた。
「あんなに敵対心バリバリだったわりに、すげぇ弱かったな」
「シュンが規格外なんですよ・・・」
「心外だなぁ」
あまりに呆気なく倒してしまったため、自分がウェンドラゴンに襲われそうになったのが少し悲しくなったフィーア。
だがシュンはそれを知ってか知らでか、
「でもフィーアの魔法がかかってたからだけどな。やっぱりサポート役のフィーアがいると楽だな。最初は連れていくのを拒んで悪かったな。これからも頼むぞ」
「そそそ、そんなこと急に・・・、言わないでよ・・・」
「なんか言ったか?」
どんどん小声になるフィーアに追求するシュン。
「うるさいッ! シュン降ろして!!」
「なッ!? そんなに恥ずかしかったのか? てか口調変わってるぞ!? 丁寧語はどうした!?」
「もういいのッ! シュンにはこれがちょうどいいって分かったの!!」
「えー・・・。まぁなんか壁があるみたいで嫌だったからな、そっちの方が俺も嬉しいぜ」
シュンの微笑みにさらに顔を真っ赤にさせるフィーア。
抑えられない感情に口調すら変わってしまう。
それをシュンは壁が取れたと喜んでしまった。
「もう・・・知らない!このバカシュンッ!!」
「ば、バカ〜!?なんなんだその変わりようは・・・」
フィーアを友達と思い込んでいるシュンは、フィーアのこの変わり身に疑問を浮かべるしかないのであった。
二兎追うものも、たまには二兎捕まえるんですね。
これでフィーアの口調も感情も変えられました。
次回邪竜の処理です。
面白い、続きが読みたいと思われた方はぜひ評価のほどよろしくお願いします。




