第十七話 登山
短くてすいません・・・
——ケルー山脈 山口——
「やっと着いたな」
「2時間くらいかかりましたね」
シュンとフィーアは2時間ほどかけてロステルラッテから西にある山脈、ケルー山脈へと向かい、たった今着いたところだった。
魔界の地理は人間界にはあまり知られていない。
それは人間が滅多に魔界に近づかないのもひとつだが、1番大きな理由はやはり神(悪魔)が原因だろう。
人間は魔界について知らず、魔人も人間界をよく知らない。
お互いに何も分からないまま争っているのだから客観的に見るとかなり滑稽に映るだろう。
閑話休題、魔界の地理だが東西に山脈で挟まれているのが特徴だ。
ロステルラッテ、シュン達が今暮らしている国は魔界の西に位置している。
ロステルラッテの東、北東と南東に2つ大きな国があり、北東がセック、南東が二ーシャと呼ばれている。
さらに東はグラガ山脈と呼ばれる山があり、そこを越境すると人間界に行くことが出来るが、そこで人間と魔人で争っている。
グラガ山脈はグラガ洞窟と呼ばれる鍾乳洞があり、山越えしなくても人間界に繋がる道もある。
しかし、洞窟内は山越えより危険と言われており、中には龍を目撃したという話もあるくらいである。
そして、今いるケルー山脈だがロステルラッテのさらに西に位置している。
険しい岩肌から登山に来るものは少なく、危険な魔物などが数多く出没するため近寄るものは少ない。
しかし、夏季は数少ない植物が実をつけるシーズンでこの時期は貴重な植物を採取しに来る人も少なくない。
だが、それは魔物も同じである。
今回討伐予定の「ウェンドラゴン」もそのひとつで、夏季にケルー山脈で実る【ケルーの実】と呼ばれる赤い木の実を食べに来るのだ。
そのため、「ウェンドラゴン」に襲われて命を落としたり、遭難してギルドに依頼が入るのも少なくはない。
「——って話だったな」
「カルナさんはそう言ってましたね」
「にしても、ホントに緑が少ないな」
「だからこそ食料も貴重で奪い合いが多発してることから「弱肉強食の山」とも言われてるんですよ」
「そりゃまた物騒だな」
「昼頃になると魔物達は活発になります。早く登りましょう」
「よし、行くか」
シュンとフィーアはそう言いながらケルー山脈に足を向けるのだった。
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「フィーア止まれ」
「どうかしましたか?」
「敵だ」
どうやらシュンのスキル、『探索』に反応があったようだ。
明確にこちらを敵視しているらしい。
「ッ!?」
「キャッ!?」
シュンがフィーアを抱えながら後方へ飛ぶ。
すると、山の斜面から2体の猪が突進して来た。
「悪ぃな」
「い、いえ・・・」
(び、びっくりした・・・)
顔を赤らめるフィーアだが、シュンは別のことを考えていた。
「「ビッグボアー」か・・・」
ビッグボアー。
その図体は普通の猪の3倍と言われ、非常に獰猛で鋭利な牙が特徴である。
肉は硬く食用には向いてないため、危険な割に旨味のない獲物として有名である。
シュンは「ウェンドラゴン」以外にもこの山脈の魔物について聞いていたため、早速情報が役立ったとほくそ笑んだ。
「確かCランク推奨だったな」
シュンはそう言うと剣を持ち、猪を挑発した。
「かかってこい、ノロマ」
当然言葉など理解できないが本能で見下されていると思ったのか、2体共シュンに向かって突進してきた。
するとシュンは猪の習性、猪突猛進を逆手にとって斜面を駆け出した。
そして斜面に生えていた巨大な木の枝を切り落とし、突進してきた猪を堰き止めた。
そのままシュンは猪達の後手に周り首を切り落とした。
「流石ですッ!」
呆気なく対処してしまったシュンにフィーアは興奮している。
「雑魚だ、こんなの」
「でも前よりも強くなってますよ」
「血も飲んだからな、生半可な敵には負けねぇよ」
【グリフィルの血】を飲んだおかげで、基本が出来ていたシュンはさらなる飛躍を遂げたのだった。
「早く行くぞ、こんなのを相手にしてたら日も暮れるし刃もボロボロになっちまう」
「そうですね、先に進みましょう」
いくらシュンの技量が長けていても、所詮借り物の安価な鉄剣ではCランクやBランクの魔物には耐えられない。
だからこそ、こんな所で足を止めるわけに行かなかった。
「目的地は山頂だ。まだしばらくかかるから気を引き締めるぞ」
「はい!」
さらに彼らは頂上を目指し、先に進むのだった。
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「なんか静かじゃないか?」
「確かに、いつもなら何体か魔物が出ると思うんですけど」
「そうなのか?」
「はい。あ! もしかしたら「ウェンドラゴン」のせいかもしれませんね」
「それはなんでだ?」
フィーア曰く、ウェンドラゴン、別名「邪竜」と呼ばれているだけあって、ウェンドラゴン周辺には瘴気が充満しているそうだ。
その瘴気でウェンドラゴンより弱い生物は近寄らないらしく、1度瘴気に当てられると死を覚悟しなければいけないそうだ。
「おいおい、もっとそれ早く言えよ」
「だってそんなこと言わなくても楽勝だと思って・・・」
「・・・。まぁ楽勝だけどな」
「ふふふ、やっぱり」
ウェンドラゴンに会うまで夫婦漫才がしばらく続くのだった。
そんなことをしているうちに山頂に着いてしまった。
山脈は円形で広い空間であり、見晴らしの良い所だった。
半径1kmはあるだろう。
「何もいねぇな」
「留守ですかね?」
その時、
「GYAAAAAAAAAAA!!!」
なんとも禍々しい雄叫びを上げながら正体を現した。
恐らく餌を食べに行っていたのだろう。
「うッ! なんだこの鼻の曲がりそうな臭い!」
「これが瘴気です。あまり吸わない方がいいですよ」
シュンもフィーアも瘴気を吸って死ぬことは無かったが、臭いことには変わりなく顔を顰めた。
ウェンドラゴン本人はグレーの鱗を日に輝かせながら、シュン達を威嚇していた。
どうやら寝床を荒らされると思っているらしい。
「この灰色トカゲ、ムカつくな。こいつ倒すと匂いも収まるのか?」
「そうですね、この異臭はコイツから出ていますから発生源を断てば収まります」
「よし、やるぞ」
「はい」
最初の頃と動機が噛み合っていないが結果は同じであった。
「フィーア、まずは様子を見る」
「そうなりますね、私はサポートします」
「頼む」
シュンはフィーアにそう言うとウェンドラゴンに向かって走り出した。
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