第十一話 豹変
追記 第十話の内容を一部持ってきました。
——ロステルラッテ城 訓練場——
〜30日目〜
この世界の周期は地球の周期と変わらない。
シュン達が転移したのは6月の上旬であり、この世界でもそれは同じである。
つまり、地獄の特訓は今日が最終日でもあったのだ。
今は午前のメニューが終わった後でありシュンは、ステータスを確認していた。
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アベ シュン 年.16 男
<ステータス>
HP 200/200→1500/1500
MP 50/50 →1000/1000
攻撃 5→170
防御 3→140
速度 5→180
的中 4→130
幸運 55→250
<スキル>
『破者の手』
<補助スキル>
『挑みし者』
『痛覚耐性』
『不屈の精神・中』→『不屈の精神・上』→new
『剣の達人』→new
<称号>
『苦痛に耐えし者』→『乗り越えし者』→new
『人殺し』→『殺戮者』→new
『ストイック』→new
『急成長』→new
『剣術に長けし者』→new
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<補助スキル>
『不屈の精神・上』
物事にさらに動揺しにくくなる。
『不屈の精神・中』の上位互換。
さらに精神を鍛えることで、『不屈の精神・神』が獲得可能。
『剣の達人』
剣での攻撃や速度、的中が50%上昇する。
さらに稽古に励むことで、『剣聖』が獲得可能。
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<称号>
『乗り越えし者』
厳しい環境を乗り越えた者に送られるもの。
その経験が今後の人生に必ず役に立つ。
『殺戮者』
多くの命を奪った者に送られるもの。
理由はなんであれ、罪は背負わなければいけない。
『ストイック』
厳しい特訓に耐えた者に送られるもの。
どんな理由でも耐えたのだから仕方ない。
『急成長』
短期間に急激に成長した者に送られるもの。
生半可な努力じゃ無かったと思うから誇ってもいいと思う。
『剣術に長けし者』
剣の腕前が上級者な者に送られるもの。
一振一振の重さは素人とはものが違う。
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——ツッコミどころが多々あるが成長したのは確かである。
実際、シュンの体格も一回り大きくなり、成長期のためか身長も伸びた。
以前は170cmだったが175cm程まで伸び、一月では考えられない成長である。
これも環境の違いからのものである。
(・・・今日が最後の特訓か)
この一ヶ月、初日の内容以上のことが毎日行われていた。
さらに、日が経つにつれて訓練内容も厳しくなり、午後の訓練、対人戦では男女関係なく殺し合いが行われていた。
中には魔人や獣人もおり、今まで人間と戦ってきたシュンは死闘を決した。
最初は異性が出てきた時は焦ったが、殺さなければ死ぬと悟り、囚人服を来ている時点でクズ野郎は確定だろうと割り切ってなんとか乗り越えたのだ。
当然、地獄のような訓練を乗り越えたため、肉体や精神はもちろん、剣術にも磨きがかかったため初期とは比べ物にならないほど上達したのだった。
「シュン。今日が最後です。頑張ってください。」
「ありがとう。フィーア」
この一ヶ月二人の関係もかなり進展し呼び捨てで呼ぶようになった。
シュンは壁があったのが無くなって安心しているが、フィーアの方は努力しているシュンを見ていて満更でもない気持ちになっていた。
シュンの知らない所で一ヶ月の間にさまざま出来事があったが、今は置いておこう。
「シュン。今日の特訓は一味違うッす」
「何が違うんだ?」
「今日の相手は一人ッす」
「一人だって? 昨日は20人だったじゃないか」
「今のシュンに素人は意味無いッす。だからその道のプロが相手ッす」
「なるほどな。それはいいかもしれない」
シュンは少しバトルジャンキーになり始めていた。
こんな環境に耐えるには性格を無理してでも変えるしかない。
そのため強い相手と戦うことは一つの楽しみともなっていた。
とんでもない変化である。
しかし、誰でも言い訳ではなく根本はシュンなわけで善良で無害な者に対して闘志を燃やすことは無い。
フィーアは、そんなシュンを見て自分と同じ仲間だと親近感が湧いたのだった。
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エニーク=サルバトーレ=ギャビン
エニークは盗賊「獅子猫の頭」のリーダでもあり、冒険者ギルドがA判定で捜索を依頼していた人物だ。
冒険者ギルドについては後日説明するが、エニークは大量殺人者だった。
エニークはスラムで育ち、目の前で親を殺されたこともあったため、感情形成が人とは異なっていた。
人を殺すことは、世界に歯向かうことだと思っていたため日夜闇の世界で活動していた。
そんなある日、エニークは「獅子猫の頭」に入り、気がつけば頭領にまで上り詰めていた。
戦闘能力が高かったため、仲間からの信頼も厚くこの地位を得たのだった。
しかし、ある日を境に投獄されてしまう。
そこからは囚人生活のはじまりだったが。
(おいおい、俺もまだ捨てたもんじゃねぇなぁ。殺し合いして勝ったらここから出れるなんてよ。)
「ヒッヒッヒッ・・・」
暗い牢に不気味な笑いがこだましていた。
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「う、うそ、だろ?」
「来世は真っ当に生きるんだな」
瞬殺。
シュンはエニークの背後から心臓に向けて、剣を突き刺したのだ。
シュンは最後の戦いは、右腕を切断された時と同様の動きで相手を屠ると決めていた。
肉体や精神を鍛えたことや、スキルのおかげで、あの時のフンフの動きをほぼ完璧に真似することが出来たのだった。
「うわぁ・・・瞬殺だったッスね」
「シュンなのですから当然です」
「ほっほっほ、信頼されてますな」
「なッ!? そそ、そういうわけでは・・・」
頬を朱に染めるフィーア。
しかし、シュンは全く見ていないし聞いてもいない。
(かなり強くなったな。いや、まだだ。まだ強くなれるはずだ)
以前のシュンならこんなふうに思うことはないが、精神面も成長しているため、前向きに捉えることができたのだった。
そしてシュンは、深く息を吐くのだった。
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——ロステルラッテ城 謁見の間——
最後の特訓の後日、シュンは魔王の前にいた。
その場にはフィーアとフンフしかおらず、他の大魔人達は各々の部隊を率いて戦場に向かったそうだ。
戦争についてはシュンはまだ詳しく聞いていない。
自分自身のことで精一杯だったため、この世界、名は「現霊界」と言うのだが、それ以外の教養はほぼ無いのだった。
そもそも生活に余裕がなかったため、本人もあまり深く考えていなかった。
改めてこの世界のことを意識した時、何も知らなくて困惑したのは記憶に新しい。
と、色々頭の中で整理していると、
「シュンよ。よくぞ乗り越えた」
「ありがとうございます。魔王様」
「うむ。だいぶ成長したようだな。物怖じしなくなったのも、今の声音で理解したぞ」
(流石だな、この人にはまだ適いそうにない)
当初魔王を逆恨みしていたシュンだったが、実際彼のおかげで今の自分がいるのは確かなので、尊敬の感情に変わっていた。
「シュン。あれを飲む覚悟は出来ているか?」
「はい。私は以前のような軟弱な自分ではありません。今では覚悟もできております」
「——うむ。その目に偽りは無し。フィーアよ」
「はッ!畏まりました」
フィーアは用意されていたグラス、【グリフィルの血】をシュンに渡した。
「シュン。気をつけてください」
「あぁ、ありがとう。フィーア」
グラスはひんやりとしている。
周りは模様が描かれており、中には鮮紅色の液体があった。
「これを飲めばよいのですね?」
「あぁそうだ」
そう言われ一瞬躊躇うも、屈強な精神は揺るがず、シュンは一気に飲み干した。
「ッ!? うわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
意識が喰われる。
そう感じた時、シュンは膝から崩れ落ちた。
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「こ、ここは・・・」
周りは一面暗闇だった。
何も周りにはなく、何故か自分の体も見ることが出来ない。
しかし、声だけは出すことが出来た。
「どこなんだ? 一体・・・」
そう言った刹那、
「——汝が我を欲する者か」
「だ、誰だ!?」
「——我は〝与えしもの〟」
「〝与えしもの〟?」
「——そうだ。あれを飲んだのだと言うならば、汝は力を欲したのだろう?」
「あぁ、そうだ」
「——なら、ここから抜け出してみよ。さすれば望みのものは手に入る。然れども、出来ぬならただ貪られるのみ」
「抜け出すってどういうことだ」
「——ふっ、耐えるが良い」
〝与えしもの〟がそう言った刹那、さまざまな光景が自分の意識に流れ込んだ。
ハルトとナナが手を繋ぎ、仲良く登校している光景。
クラスメイト達が自分を笑い、軽蔑する光景。
魔王や大魔人達が自分を蔑み、見下す光景。
フィーアに、塵芥のようなものを見る目で見られる光景。
そして、今までシュンが殺した者達の阿鼻叫喚が広がる光景。
「や、やめろォ・・・、やめてくれッ!!」
「——然れば汝を喰らうのみ」
「それだけはダメだ!!、ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!!!!」
そこでシュンは決意する。
「なら、僕の半分を喰わせてやる!」
「——ほぅ。それで我が満足すると?」
「満足させてやるッ!!」
「——なッ!?」
(なんだ!? これほどの精神力!? 先程とケタ違いではないかッ!!)
シュンは今抗っていた。
喰われることだけは出来ないと。
それこそ死んでいった者達への冒涜だと言わんばかりに、意識を集中させた。
(面白いッ! 面白いぞッ!! ぜひ喰ってみたいッ!)
〝与えしもの〟は油断していた。
最初に会った時、シュンの器はまるで興味が湧かなかったのだ。
しかし今は違う。
シュンの中に確かな意思がある。
シュンは様々なことに絶望して立ち上がった。
それは神を討つという目的がシュンをそうさせたのだ。
その意思を〝与えしもの〟はぜひ、味わいたいと思ったのだ。
「よかろう。ならばくれてやる。だが我も汝の半身を喰らおう!」
「契約成立だッ! 早くここから出せッ!」
すでにシュンは限界だった。
今でもまだ、シュンの意識に負の光景が映し出されている。
「ハッハッハッ! それではさらばだッ! 我が半身よ!!」
そう〝与えしもの〟が言った瞬間、意識は再びシャットアウトした。
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「シュンッ!!!」
いきなりシュンが倒れた。
怖い。
シュンが死んでしまうのが怖くてたまらない。
いつからだろう。
こんなに私の心が暖かくなっていたのは。
最初は臆病な人だと思った。
いつも、ビクビクして、怖がりで、泣きべそをかいている弱虫かと思った。
でも、違った。
シュンはいつも、諦めなかった。
口ではいやいやだけど、やると決めたら必ずやっていた。
そんなシュンに興味を持った。
彼自身のこと。
彼の世界のこと。
彼の家族のこと。
彼の友達のこと。
彼の彼女のこと。(いるかわからないけど・・・)
色々聞きたいことは沢山あった。
でも、そんな状況じゃなかった。
召喚されて、言葉を覚えて、大怪我して、特訓して。
こんな状態で仲良くお喋りなんか出来なかった。
だから、シュンが死ぬのは怖かった。
もっと話したい。
お出かけもしたい。
戦っても見たい。
身体に触れてみたい。
守ってあげたい。
守ってもらいたい。
それなのにそれが今終わろうとしている。
そんなの嫌だ・・・
「シュンッ!、ねぇシュンってばッ!!」
「フィーアッ!落ち着くッす!!」
「フンフッ!やめてッ!!、止めないでッ!!」
涙が溢れる。
胸が苦しい。
はち切れそうだ。
こんなことになるならもういっそのこと、一緒に逃げればよかった・・・。
フィーアがそう感じた時だった、
「「「ッ!?」」」
シュンの髪の色が青くなっていくのだ。
シュンの髪の色は日本人特有の黒である。
それはこの世界に来てから変わらなかった。
さらに、体格もさらに一回り大きくなっていく。特訓や成長期で肉体は成長していたが、さらに筋肉質になっていく。
そして、目付きが鋭くなり、歯も鋭くなっていた。
一番驚くことは頭の両脇から角が生えたのだ。
これには全員驚愕である。
「これは凄まじい、魔力だな・・・。」
魔王は感嘆した。
自分ほどの魔力量ではないにしても、これからまだまだ増えると考えたからだ。
しばらくするとようやく・・・
「——痛ッてぇな・・・。俺は一体・・・。あ?ここどこだ?」
「シュンッ!!!」
「うおッ!?、って、フィーア!?」
「よかった・・・・・。よかったよォ・・・・・。」
シュンが起きた。
口調とか変わってるけど彼には間違いない。
嬉しくて嬉しく堪らない。
胸の奥がポカポカしている。
あぁ、シュンの体、安心する・・・
フィーアは暫くシュンから離れないのだった。
ようやく豹変しました・・・。
そろそろ一章も終わります。
面白い、続きが読みたいと思われた方はぜひ評価のほどよろしくお願いします。




