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第十話 絶叫

追記

※第十三話と第十四話を繋げました。

内容に変更はありません。


タイトル変更しました。

素質→絶叫

シュンのデスマーチの内容を追加しました。

15日と25日が増えています。

 ——ロステルラッテ城 訓練場——

 〜1日目〜


(や、やばい・・・。死ぬ・・・)


 シュンは訓練場を駆けていた。

 現在4週目である。

 フィーアから告げられた午前のメニューはとんでもなかった。


 午前のメニュー


 ・ランニング 5週 (15km)

 ・腹筋 1000回

 ・背筋 1000回

 ・スクワット 300回

 ・腕立て伏せ 500回

 ・・・etc


 これを見た時シュンは満面の笑顔でこう言った。


「——フィーアさん、0が一つの多いですよ」


 もちろん減らされることなど無いのだった。

 常識で考えるなら午前中に全て済ませることなど不可能である。

 しかし、シュンは朝5時に起床し身支度を整え、朝食を済し訓練場に向かうとすぐに稽古が開始するのだ。

 いつもならもう1時間遅くまで寝られるし、ゆっくりと稽古ができる。

 だが、今回は違う。

 フィーアはシュンに『加速(スピード)』をかけ、いつもより早く走らせたのだ。

 いつもの1.5〜2倍ほど速度が上がっている。

 しばらくすると、シュンは5週走り終わりその場で倒れた。


「し、死ぬぅ・・・」

「お疲れ様でした。『回復(ヒール)』」


 そうフィーアが唱えるとバッキバキの体が、暖かい光で包まれた。


(これで疲労は回復するけど・・・。精神はまるで持たないな・・・、『不屈の精神・中』を発動しているからマシなんだと思うけど)


 確かに『不屈の精神・中』のおかげで走りきることは可能なのだ。

 使用してなかったら途中で吐いていただろう。

 それでもすぐにフィーアに『回復(ヒール)』を使われるのだが。


「次は筋トレですよ」

「は、はい」


 訓練はまだまだ続く・・・


 ------------------------------------------------------------


 午後になった。

 シュンとフィーアは変わらず訓練場にいる。

 しかし先程いなかったフンフとアハトがいる。


「お疲れッす」

「お疲れ様です。シュン様」

「あ、お疲れ様です。フンフさん、アハトさん」


(どうしてこの2人が? もしかして・・・)

「分かったッスか・・・。アハト、用意を頼むッす」

「了解しました」


 そう、2日前と同じである。

 また同じ悲劇を繰り返そうとしているのだ。

 これにはシュンも抗議の声を上げる。


「また、殺すんですか!?、嫌ですよ!!!、僕は絶対にし―――」


 シュンが「しない」と口走ろうとした時、フィーアが後ろから口を抑えてきた。

 シュンの背中に胸が当たる。


(あッ!?、柔らか・・・、って、当たって、当たってますよ!?)


 そんな思春期思考真っ只中のシュンとは対照的に、フィーアの顔は真っ青だった。


「あ、危なかったッスねぇ・・・」

「は、はい。後もうすぐってところでしたね」


 外野の2人も背筋が凍る。

 そう、今シュンが「しない。」と発言していた場合、右腕の紋様が発動し帰らぬ人となるところだったのだ。

 それを聞き、シュンは顔を青ざめる。


(し、死ぬとこだった・・・。当たってるとかそういう問題じゃないだろ・・・。〝少し〟考えが甘いようだな・・・)


 〝少し〟では無い。

 〝かなり〟甘いのだ。

 シュンが怯えていると。


「では、連れて参ります」

「よろしくッす」


 そうアハトは言い、去っていった。


(また、殺すのか・・・。いや、殺されるのかもしれない。気を引き締めよう)


 決意を固めるのだった。


 ------------------------------------------------------------


「ッな!?」

「連れて参りました」

「「「んーーーーー!!! んーーーーー!!!」」」


 アハトが連れてきたのは2日前と同じ囚人服を着た男達(・・)だった。

 そう、3()()もいたのだ。


「3人ってどういうことです!?」

「本日はこれらの相手をしてもらいます」


 フィーアはすでに3人をゴミを見る目で見ていた。

 仲間には優しいフィーアだが、他人には冷たく、ましてや犯罪者や罪人は塵芥同然と思っている。

 シュンはそんなフィーアには気づかず内心焦っていた。


(流石に3人は冗談だろ!? 一昨日であれだけ取り乱したんだ!無理に決まってる!!)


 しかし、シュンは契約を思い出した。


(——やらなきゃ死ぬ・・・)


 ここで、合点がいった。

 どうして、契約など結ぶのか。

 どうして、魔王やフィーアは暗い顔をしていたのか。

 どうして、危険な契約内容を契約するまで言わなかったのか。


 ——このことから逃げ出さないためである。


(くそッ!、あの魔王!、このこと分かってて言わなかったな!!)


 胸がカッとなる。

 確かに、全て分かっていたらやらずに逃げていたかもしれない。

 それでも、怒りは止まらない。

 こんな理不尽で逃れようのない現状に腹が立つ。


 そして、一番怒りの矛先が向いていたのは自分自身(・・・・)だった。

 このような状況に至るまですべて自分の甘えだったのだ。


 そもそも、転移する前から体を鍛えていれば今こんなに辛くないかもしれない。

 あの時、2人に隠れて屋上に行かなければ良かったかもしれない。

 違う高校に通っていれば劣等感を感じなかったかもしれない。

 転移して言語を習得するための時間を逃げ出すための時間に当てればよかったのかもしれない。

 さまざまな過去の分岐点を思い出し後悔する。

 それも全て自分が選択し、今に至るのだ。

 だからこそ自分に腹が立つ。


(いいよ、やってやるッ! それが打倒神への試練なら喜んでやってやるッ!!)


 ふつふつと湧く怒りを胸に本当の決意を今固めたのだった。


 ------------------------------------------------------------


 〜15日目〜


「はっ・・・はっ・・・」

「シュンさん頑張ってください!」

「頑張りますっ!」


 気温が上がり始める昼前に、シュンは訓練場を駆けていた。

 フィーアの回復魔法があるので倒れることなく体力トレーニングに勤しむことが出来た。

 初期こそ5週で音を上げていたシュンだが、今ではそれを軽くこなし10週、約30kmを優に走ることが出来た。

 それは普通に考えれば不可能だが、フィーアの身体能力魔法『速度(スピード)』と体力が回復する『回復(ヒール)』が為せる技であった。


「ふぅ・・・」

「お疲れ様です。水分補給をしてください」

「分かりました。ん・・・ん・・・、ぷはぁー。ん?どうしました?」

「ッ!? い、いえ、頑張ってるなと思いまして・・・。」

「頑張らなければ自分が苦しむだけですからね」


 フィーアは少しだけ頬を朱に染めているが、シュンからすればそんな余裕は無かった。

 自分がここで身体を鍛えなければ戦争を止める前に死んでしまう、そう考えていたからだ。

 なら今出来ることを精一杯やるしかないのであった。

 再度フィーアに『回復(ヒール)』をかけてもらい体力を回復する。


「フィーアさん、筋トレをするのでサポートお願いします」

「は、はい分かりました」


 その後シュンは一心不乱に筋トレを始めた。

 休む暇はない。

 ただ時間があるならその分自分を虐め抜かなければと思っていたのである。

 超回復というものがありシュンはそれを狙っていた。

 それは筋肉を刺激し休ませることで更に逞しい筋肉を手に入れられるといったものであった。

 然すれば誰にも負けない屈強な肉体を手に入れられるからだ。

 フィーアもそれを知っていたので何も言わなかったが、無茶だけはしないで欲しいと切に願うだけであった。


 ------------------------------------------------------------


 〜25日目〜


 雨が降り土は泥濘である。

 だがやることは変わらない。

 シュンは今日も多くの囚人を相手にしていた。


 ザッ


「んー!!!」


 グサッ


「んーーーー!!!」


 ゴリッ


「んーーーーー!!!」

「・・・すまない」


 訓練場に惨たらしい悲鳴が響く。

 シュンは阿鼻叫喚が響く中、顔を顰めながら次々に囚人を屠っていく。

 その囚人の中には何も(いか)つい男だけではない。

 当然女や子供もいる訳で、シュンと近しい年齢の子も存在した。

 だが憐れみだけは抱いては行けない。

 憐れんだら最後、自分が殺される。

 彼らは一切の躊躇無くシュンに切りかかってくるのだ。

 油断していられるはずがない。


「はああああああぁぁ!!!」


 ドスッ


「んッ!? ん、ん・・・・・・」


 最後に剣を突き刺した女性はシュンを睨みつけながら息を引き取った。

 シュンは申し訳なさそうな表情をするだけであった。


「シュン大丈夫ッスか?」

「あぁ大丈夫だ。こいつはそれなりのことをしていたはずだ。そんな奴らに同情なんか出来ない」

「それでも辛そうッす」

「そうか、ならその感情を忘れるくらい集中しよう」


 そういうとシュンは返り血を浴びたまま訓練場を走り出した。

 人を殺すのには体力を有する。

 ましてや精神も廃るはずなのだ。

 だがそれでもシュンは走り出した。


 少しでも気を紛らわすため、先程までの断末魔を振り払うために今は唯ひたすら駆けた。

 泥濘のため足が地面に嵌り転びそうになる。

 それでも止まることは無い。

 止まってしまったら今までやってきたことが全て無駄になるような気がした。

 それなら今の自分は進み続けるしかない。


「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 訓練場にシュンの絶叫が谺響する。

 誰もシュンを止める者はいない。

 いや、誰も止めらなかった。

 傍から見れば今のシュンは醜い姿だろう。

 だがそれでも止めることは出来そうに無かった。


豹変が近いです。


面白い、続きが読みたいと思われた方はぜひ評価のほどよろしくお願いします。

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