狙われた命と使命
あれから、タツキくんに案内され
訓練場で稽古をしていたスクルドの部隊と
合流することが出来た。
久しく会ったからか、何処か心が弾むが
そんな再開を喜び合う時間もない為、
騎士達に先導されるまま、本部を後にする。
「何だって、ドラゴンがこんなところに…」
スクルドの溜息交じりな声は、何処か焦りと怒りを含んだ声で
珍しく負の感情を表に出す彼の顔を見てしまう。
「あぁ、悪いな…。
普通はこんな街中にドラゴンなんて現れねぇんだよ。
居たとしても、召喚士が召喚するしか方法はねぇ…」
「って、いう事は召喚士が…?
何の為に…?」
「それが分からねぇから今、本部は、慌ただしいんだよ。」
そう言って苦笑いを浮かべるスクルドに、
早足ながらも頭を撫でられ、
器用だなぁ…と少し和む。
こういう所が、世のマダム達をキルしちゃうんだね、きっと!
早足で向かう先はノーフォーク公爵家の屋敷だ。
何でかというと、騎士団本部よりも強い結界で守られてるらしいので
中に入れば安全は保障されるらしい。
はぁ…なんで、こんなに厄介な事が多いんだか…
非難は順調で、屋敷には直ぐに着く事が出来た。
まぁ、五分くらいで着く位置にあるから
そりゃあ早いんだけどさ?
騎士団本部からは依然としてドラゴンによる
破壊音が鳴り響いている。
かなりの大きさのそれは私達に段々近づいてるようにも思えて、
脚が本能からか小さく小刻みに震える。
それに気がついた目敏い騎士達は、
私達に生暖かい目線を送りながら和やかに
私を屋敷の中に押し込んでいく。
っていうか、文字通り玄関から押し込まれた。
スクルドに。酷い…。
そういえば、なんだかんだ様々なタイプの
トラブルが私を襲うけど、物理的に何か大きな被害を
被った事は全くない。
今回だって、運が悪ければ
ドラゴンと直接対決があっただろうに、
難なく安全地帯まで逃れる事が出来たし、
傷を負ったのだって、最初の森で子供を庇った時くらいで
それからは、一度も危険な目にあいはしなかった。
ただ、運がいいのか…
それとも何かの意図なのか分からないけど…
とりあえず、私、最強なのかもしれない。
ってふざけてる場合じゃなかった!
「おい、紗羅。どうやらお前のこと狙ってるみたいだぜ?」
呑気な声でそういうスクルドの指差す方を見ると
屋敷のほうに向かって歩いてくるドラゴンが、
窓の外に見える。
ドシンドシンッ、と大きな足音を立てて歩くドラゴンは、
なんて大きんでしょう?みたいな大きさだ。
言うなれば、一戸建てで二階まであるお家くらい。
この大きさが、あの騎士団本部に居たのかぁ…
やはり、騎士団本部は相当大きかったらしい。
というか、私が狙われてるの?!
なんで?!
「なんで、私が狙われるの?私、まだここに戻ってきたばっかりだし…狙われる要素が本当に分からない。」
「まあ、なんでかは知らねぇけど…
お前、確か痣あったよな?あの、痣ってノーフォーク家の生まれでも
使命を持ったやつしか無いらしいぜ。
だから、お前の使命が関係してるんだろうよ。」
ドラゴンが、沢山の騎士達に攻撃されているのを眺めながら
スクルドは淡々とした口調で話す。
…使命?私に?
その言葉に思わず怪訝そうな顔をしてしまったが、使命があると言うことは、もしかしたら私がこの世界に来た理由の一つでもあるのかもしれない。
正直、今の状態では何一つ、私がここに来た理由も分からないし、よくある悪役令嬢物語のようなホイホイテンポよく進んでいく感じの話にはなっていないだろう。
まあ、ここは物語と違って現実だから、そうホイホイ上手くいってしまう訳がないのだが…
と、丁度よく屋敷の前まで迫ってきていたドラゴンから光が溢れ、絶命した。
この世界でモンスターを倒すと、モンスターから光が溢れる。一説によると、それはこの星の自然を増やす為のエネルギーになっているんだとか…?
さて、未だにここに来た理由もわからない訳だが、一段落着いたらしい。
私がホッとした表情を浮かべると、スクルドに頭を撫でられ微笑まれた。うん、美男ですね。相変わらず。
撫でられ、私も微笑み返しながら一つ思った。
使命が分からないまま何かに狙われるなら、そのまま狙われやすいような行動をするのはどうだろう?と…。確かに、命の危険はあるが、今のところ何一つ害はない。
逆に狙う理由が分かるかもしれない。なんて、思わないだろうか…?
凄く単純なのは分かっているし、命の危険もあるが…
折角スクルドや騎士団という存在が居るのだ。使った方がよくない?
さて、折角思いついたんだ。
今すぐに部屋に行って計画を立てよう!