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君は何を不道徳だと思う?


ユウリ、ミナ、そしてラヴェンナは、茂みの中から集まっている人々を観察していた。


「ねえ、二人とも……私と同じものを感じてる?」ラヴが小声で尋ねた。


「ああ。あいつらもプレイヤーだ……何かを識別する仕組みなのかもしれない」ユウリが答えた。


三人は、集団の前に立つ数人の話に耳を傾けた。どうやら彼らは、この試練で非常に価値のあるものを見つけたらしい。


そのとき、ユウリはくしゃみが出そうになった。


これは彼が幼い頃から持っている癖だった。


隠れているときや、自分が悪いことをしていると感じたとき、彼はくしゃみをする癖があった。


「ねえ、ユウリ……お願いだから、くしゃみしないで!」ミナが小声で訴えた。これから何が起こるのか、予想していたのだ。


「ハァ……ハックション!」


ユウリは盛大にくしゃみをし、その勢いで地面に顔から突っ込んだ。


集まっていた人々が、一斉に倒れたユウリへ視線を向けた。


その場は静まり返った。


誰も何も言わず、誰も動かなかった。


やがてユウリは自ら立ち上がり、気まずい空気を破るように口を開いた。


「やあ、皆さん! お元気ですか? 俺はさっきまで勇敢にモンスターと戦っていたんですが、奴らは俺から逃げてしまいましてね! それを追いかけていたら、ここにたどり着いたんです! それで、皆さんはこんなところで何をしているんですか?」


「え……あ、ああ……ははっ」


話し手の一人が、ほっとしたように笑った。


「いやあ、よかった! 仲間のプレイヤーが増えるのは大歓迎だ! 多ければ多いほどいいからな!」


「ところで、君のグループはどこにいるんだ?」別の話し手が尋ねた。


「お、俺のグループは――」


ユウリは、またしてもその場しのぎの言い訳をしようとした。


しかし、その前にミナとラヴェンナが茂みから出てきた。


「彼女たちは俺の仲間だよ! もちろん!」


「そうか。では、話を始めよう」


話し手の一人が、改めて集まったプレイヤーたちに向き直った。


「実は、俺たちはアイテムが大量にある洞窟を見つけたんだ。そして、最初に発見したのは俺たちだ。なら、あの洞窟は俺たちのものということでいいだろう?」


プレイヤーたちは数秒間、互いにひそひそと話し始めた。


その間、ユウリの頭の中では、別の考えが膨らんでいた。


(ダンジョン……!?)


ユウリの目が期待に輝いた。


「いいだろう!」


誰かがそう答えると、ほかのプレイヤーたちも次々に同意した。


「よし! それじゃあ、俺たちが案内しよう!」


一行は洞窟を目指して歩き始めた。


長い道のりだった。何時間も歩き、曲がりくねった道や狭い通路をいくつも通り抜けた。


そして、ついに目の前に巨大な洞窟の入口が現れた。


(これが、アイテムだらけの洞窟か……?)


ユウリは周囲を見渡した。


洞窟の入口付近には、数え切れないほどの宝箱が散らばっていた。しかし、そのほとんどはすでに開けられていた。


「よし、みんな! ここに集まってくれ!」


洞窟を発見したという男の一人が声を上げた。


「見てのとおり、この洞窟は俺たちのものだ。それで、奥のほうにはもっといいアイテムがあるらしい。誰か、危険を承知で取りに行きたい奴はいるか?」


すると突然、白髪の青年が何も言わず、洞窟の奥へと歩き始めた。


二人の少女が慌てて彼の後を追った。


「なるほど……なかなか勇敢な連中らしいな。みんな、アイテムを探しても構わない。ただし、価値の高いものを見つけたら、必ず俺たちに確認させてくれ」


話し手の一人がそう告げた。


ミナとラヴはユウリのそばに戻り、三人で洞窟の入口付近を探索することにした。わざわざ危険を冒してまで奥へ進む必要はない。安全を優先したのだ。


しばらくして、洞窟の奥へ向かったグループが戻ってきた。


彼らは価値のありそうなアイテムを大量に手にしていた。頑丈な鎧、ダイヤモンドの剣、そして護符。


彼らが歩いてくると、周囲のプレイヤーたちの視線が集まった。


その差は明らかだった。


入口付近でアイテムを集めていた者たちが手にしているのは、錆びついた鉄の鎧ばかり。一方、奥へ進んだ彼らは、明らかに価値の高い装備を手に入れていた。


彼らが洞窟を出ようとした、そのときだった。


入口を塞ぐように、洞窟の所有者を名乗るグループが立ちはだかった。


「おいおい、ちょっと待てよ! ずいぶんいいものを手に入れたじゃないか!」


「それがどうした? 俺たちは危険を冒して、実際にアイテムを手に入れたんだ。これは俺たちのものだろう?」


白髪の青年が言い返した。


「ああ、すまない。大事なルールを説明し忘れていたよ。この洞窟では、俺たちの装備よりレベルの高いアイテムは、すべて俺たちに渡してもらうことになっているんだ」


「そんな話、聞いた覚えはないが?」


「いやあ、俺たちもずいぶん物忘れが激しいらしいな? そう思わないか、みんな?」


洞窟の所有者たちは互いに顔を見合わせた。


「残念だが、勝手にしてくれ。俺が手に入れたんだ。なら、俺と仲間のものだ」


ユウリ、ミナ、ラヴェンナの三人は、少し離れた場所からそのやり取りを見ていた。


「これ、絶対に面倒なことになるわね……」ラヴが呟いた。


「騒ぎになる前に出ようよ! 私たちは三人分のアイテムを十分に手に入れたんだから」ミナが提案した。


「そうだな。あいつらが本気で怒り出したら、誰にもアイテムを持ち出させなくなるかもしれない……」


ユウリはそう答えたあと、数秒間考え込んだ。


そして突然、自分の持っていたアイテムをミナとラヴに手渡した。


「どうしたの?」二人が同時に尋ねた。


「二人は先に俺たちの神殿へ戻ってくれ。俺はもう少しアイテムを探してみる。何か手に入れば儲けものだし、何も見つからなくても、少なくとも俺たちには十分なアイテムがある」


「少しは頭が回るじゃない、ユウリくん」


ラヴはそう言い残し、ミナとともに洞窟を後にした。


一方、ユウリは急いで別の宝箱を探し始めた。


数分が過ぎても、洞窟の入口ではまだ口論が続いていた。むしろ、状況は悪化する一方だった。


ユウリが新しい宝箱を開けようとした、そのとき。


近くから、三人組の会話が聞こえてきた。


「彼女たち、少し前に出ていったよ」


「それで、あれを壊す方法は分かったのか?」


「ああ。行こう。あの馬鹿はまだこの辺りにいる」


会話を終えた三人は、その場を離れていった。


(嫌な予感がする……。でも、わざわざ首を突っ込む必要はないか)


ユウリはそう考え、目の前の宝箱へと視線を戻した。


そして、蓋を開けた。


中に入っていたのは――ダイヤモンドの剣だった。


(うおおおっ! これ、あいつらが持っていたものと同じレベルじゃないか……! こんな剣を持ったまま出るわけにはいかない……)


ユウリは剣をズボンの中に隠し、代わりに価値の低いアイテムをいくつか拾って身につけた。


(よし……これでカモフラージュ完了だ)


彼は洞窟の入口へ向かった。


そこでは、二つのグループが一歩も譲らず、激しい口論を繰り広げていた。


ユウリは何食わぬ顔で通り抜けようとしたが、洞窟の所有者の一人に呼び止められた。


「おい! これだけ長い時間、アイテムを探していたんだ。持ち物を調べさせてもらうぞ!」


「分かった。でも、俺は洞窟の奥には行っていない」


「今の状況じゃ、お前まで調べている余裕はないな……。だが、一つだけ聞かせろ」


「何だ?」


「お前のグループはどこにいる?」


「先に帰ったよ。俺は念のため、予備のアイテムを探していただけだ」


男は数秒間、ユウリをじっと見つめた。


しかし、結局は彼を解放した。


ユウリを通したあと、男は再び口論へと戻っていった。争いは、ますます収拾がつかなくなっていた。


ユウリは嬉しそうに駆け出した。


十分に距離を取ると、ズボンの中から剣を取り出した。


(よっしゃああ!)


◆ ◆ ◆


ユウリは、手に入れた剣に満足しながら神殿へと戻っていた。


しかし、神殿に近づいたところで、ふと違和感を覚えた。


誰かが中にいる。


ユウリはそう直感した。


彼は身構え、慎重に扉を開けた。


そして、目に飛び込んできた光景に目を見開いた。


ミナとラヴェンナが、三人のプレイヤーに襲われていたのだ。


「おい! この野郎ども! 二人から離れろ!」


ユウリの叫び声に、三人が振り返った。


その顔を見た瞬間、ユウリは気づいた。


こいつらは、さっき嫌な予感を覚えたあの三人組だ。


「お前ら……! クソ野郎どもが!」


「ユウリ!」


ミナは涙を流しながら彼の名を叫んだ。


「うるせえな、ヒステリックな奴だな。俺たちはただ、ちょっと楽しもうとしていただけだろ?」


一人が嘲るように言った。


三人は立ち上がり、剣を手にしながらユウリへと歩み寄ってきた。


◆ ◆ ◆


一方、洞窟では口論が最高潮に達していた。


その場には、まだ数十ものグループが残り、争いの行方を見守っていた。


白髪の青年は、ついに我慢の限界を迎えたようだった。


彼は文句を言うのをやめ、うつむいた。


「おい、降参したのか?」


所有者の一人が、嘲るように尋ねた。


次の瞬間。


白髪の青年は剣を握った手を高く掲げ、勢いよく振り下ろした。


その一撃で、洞窟の所有者の一人が命を落とした。


「きゃあああっ!」


群衆の中にいた少女が悲鳴を上げた。


人々は叫びながら逃げ惑い、その場はたちまち恐怖と混乱に包まれた。


そして、すべてのプレイヤーの耳に、金属的な声が響き渡った。


「北方にて、プレイヤーの死亡を確認。プレイヤー『*****』がカルマを1000ポイント獲得。『死』グループが第一の試練を突破。現実世界へ転送します……」


◆ ◆ ◆


「まさか、プレイヤーを一人殺すだけでカルマが1000ポイントも手に入るとはな」


「こいつを殺して、俺たちもこの試練を終わらせようぜ」


神殿に侵入した三人は、ユウリに近づきながらそう話していた。


彼らは剣を抜き、少しずつ距離を詰めてくる。


ユウリはその場に立ち尽くしていた。


恐怖からではない。


あまりにも突然の出来事に、頭が追いつかなかったのだ。


彼は思い出していた。


なぜ、この試練のルールの一つが、あれほどまでに非道なのか。その理由を。


そして――


ガキンッ!


次の瞬間、ラヴェンナの大鎌が三人の足を切り落とした。


三人は叫び声を上げながら、その場に膝をついた。


「ぐあああっ!」


「くそっ、マジかよ!」


「俺の足が……!」


ラヴェンナは、ユウリが動くための隙を作ったのだ。


「ユウリ! そいつらを殺して! お願い、私たちを助けて!」


ラヴェンナは必死に叫んだ。


(どうして……? こんなことになるはずじゃなかったのに……)


ユウリはそう考えた。


やがて、彼は剣を持ち上げた。


数秒間、ためらった。


しかし――


彼は剣を一人の胸に突き刺した。


「くそっ! お前、こいつを殺しやがったな!」


倒れた仲間を見て、残された一人が叫んだ。


そのとき、再び金属的な声が全員の耳に響いた。


「プレイヤー『*****』がプレイヤーを殺害。カルマを1000ポイント獲得。『永遠』グループが第一の試練を突破。現実世界へ転送します」


ユウリ、ミナ、ラヴェンナの三人の身体が、輝く粒子となって消え始めた。


◆ ◆ ◆


「北方にて、プレイヤーの死亡を確認。プレイヤー『*****』がカルマを1000ポイント獲得。『死』グループが第一の試練を突破。現実世界へ転送します……」


そのアナウンスが洞窟に響き渡ったあと、人々は逃げるのをやめ、数秒間、沈黙した。


そして――


群衆の中の一人が、隣にいたプレイヤーに剣を振り下ろした。


そこから、殺し合いが始まった。


グループ同士の殺し合いが広がり、慈悲も容赦も失われていく。


その場に残ったのは、死と血だけだった。


「グループ転送完了」


「グループ転送完了」


「グループ転送完了」


「グループ転送完了」


その混乱の中で、金属的な声が繰り返すのは、ただそれだけだった。


◆ ◆ ◆


ユウリは、自分がたった今殺した相手を見つめていた。


目を大きく見開いたまま、動けずにいた。


やがて――


彼は一度、くしゃみをした。


もう一度、さらにもう一度。


そして、相手が輝く粒子となって消えるまで、何度もくしゃみを繰り返した。


◆ ◆ ◆


「――っ!」


ユウリは飛び起きた。


呼吸は乱れ、彼はパソコンの前で眠っていたことに気づいた。


そのとき、不意にくしゃみが込み上げてきた。


「ハァ……ハックション!」


ユウリはくしゃみをする直前、反射的に手で口元を覆った。


そして、自分の手を見た。


――その手は、血に染まっていた。

これにて第一の試練は終了です!次回の更新もお楽しみに!

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