味方か、それとも……?
第4章をお待ちいただき、ありがとうございます!
闇が辺りを包み込む中、三人組はモンスターを求めて森を歩き回っていた。
「あー、疲れた! モンスターはどこにいるのよ!?」
歩きながら、ミナが不満を漏らす。
「だらけるなよ、ミナ」
「でも、彼女の言う通りですよ、クナミさん。もう何時間も歩いてます」
銀髪の少女も同意した。
「ここはデスゲームの異世界だぞ。簡単にいくわけないだろ?」
ユウリが反論すると、少女は呆れたように口を開いた。
「……もしかしてクナミさんってオタクですか? 部屋に引きこもって友達もいなくて、教室の隅で異世界の主人公気取りをしてるようなタイプの」
「オタクって決めつけるな! ラノベを読んだりアニメを見たりするのは至って普通のことだろ! それに友達だってたくさんいる!……そういうあんたこそ、友達いるのかよ?」
少女は一瞬、言葉に詰まった。言い返そうと口を開きかけたその時、森の奥から不審な物音が響いた。
「今の音、何……? 聞こえた?」
ミナが周囲を警戒しながら囁く。
「ええ、聞こえたわ」
「よし……作戦通り、慎重に行くぞ」
◆ ◆ ◆
気配を殺して茂みに身を潜めると、そこには数匹のモンスターが草を食んでいた。
「あの怪物たち……草食べてるの?」
少女が目を見開く。
「さあな。餓死しないための手段なのかもしれん」
ユウリは低く呟き、目つきを鋭くした。
「だが、関係ない。食うか食われるかだ……言っておくが、俺はこんなクソ異世界で死ぬつもりはない」
「いい意気込みですね、クナミさん」
「よし、俺が囮になる。ミナは指示を出せ。あんたが攻撃だ」
「了解!」
ミナと少女の声が重なった。
「俺たちの勝利への第一歩を踏み出すぞ!」
ユウリは素早く茂みから飛び出し、大声を張り上げながら走り出した。
「おい、バカども! 俺を捕まえてみな!」
ユウリに気づいたモンスターたちが、一斉に追いかけ始めた。
「今だ、白髪の少女!」
追いかけられながら、ユウリが叫ぶ。
「私には名前があるっての!」
少女は素早く武器を構えた。
「ユウリ! 彼女が大鎌を投げたら頭を下げて!」
ミナの叫び声が響く。
「大鎌!?」
次の瞬間、大鎌が漆黒の夜空を切り裂くように飛来し、ユウリを追っていたモンスターたちの首を一閃で刈り取った。
しかし、大鎌は勢いを保ったまま、直線上にいたユウリの首へと迫った。
ユウリは人間離れした反射神経で、とっさに頭を下げ、大鎌を間一髪でかわした。
回転する大鎌は、ブーメランのように少女の手元へと戻っていく。
「おい! 死ぬところだったろ!」
「でも死んでないでしょ? ならノーカン」
「勝ったぁー!」
ミナがぱっと手を挙げて喜ぶ。
「おい、ミナ。これを『勝利』と呼ぶのはどうかと思うぞ……」
「でもユウリ、倒せたんだから勝ちだよ!」
「倒したのはあんたたちじゃなくて、私と私のお気に入りの大鎌でしょ」
「図に乗るなよ……」
ユウリが吐き捨てると、ミナは目を輝かせて少女に近づいた。
「でも、その大鎌すっごく格好いい!」
「絶対触らせないからね」
少女は、ミナが頼むより先に拒否した。
「ていうか、そんなデカい大鎌なんて持ってたか? どこに隠してたんだ?」
ユウリの疑問に、少女は自慢げに大鎌を消してみせた。
「単純な話よ。消えろと思えば消えるし、呼び出せば現れる。私とこの子は最強のパートナーなの」
(……待てよ。この大鎌、あの時どこからともなく飛んできて俺を助けたやつと同じじゃないか?)
ユウリは、あの絶望の夜、モンスターの首を刈り取って逃げ道を作ってくれた攻撃を思い出した。
(やっぱりそうだったのか……じゃあ、あの時あいつは俺を助けてくれたのか。意外と悪い奴じゃないのかもしれないな……少しは信用してみるか)
「ところで……さっきから『白髪の少女』って失礼じゃない?」
少女が不機嫌そうに言った。
「名前を聞いてないんだから仕方ないだろ」
「言ったわよ! ね、ウィハラちゃん、聞いてたでしょ?」
「えっと……キリタさん、だっけ?」
ミナがうろ覚えで答えた。
「嘘でしょ……はぁ、ちゃんと自己紹介するわ。私の名前はラヴェンナ・ジン。ラヴって呼んで」
「次は私ね! 私はミナ・ウィハラ! ミナって呼んでね、ラヴ!」
「最後はユウリだ」
「はぁ……」
ユウリは深いため息をつき、疲れた声で言った。
「……ユウリ・クナミだ。まあ、好きに呼べよ」
「ちょっとユウリ! もっとシャキッとしなよ!」
ミナに叱られ、ユウリは数秒間黙り込んだ。
そして――やおら右手を突き上げ、堂々と言い放った。
「俺の名前はユウリ・クナミ! この物語の主人公だッ!」
その場に気まずい沈黙が流れた。
「……もしかして、ラノベの主人公の真似?」
ラヴェンナがくすくす笑う。
「笑うな! 『Re:ゼロ』を見たことないのか!?」
「何それ、知らないわ」
「もういい……とにかく目的は達した。夜が明ける前に帰るぞ」
ユウリは赤面をごまかすように歩き出した。
◆ ◆ ◆
それから二十七日が過ぎた。
彼らは毎晩、森へ繰り出してはモンスターを狩り続けた。
今夜もいつもと同じ夜になるはずだった――。
「はぁ……毎晩毎晩、本当に嫌になるわね」
ラヴェンナが愚痴をこぼす。
「でもゴールは近いよ、ラヴ! あと754カルマポイントだけだから!」
ミナが励ますように言った。
「限界だ……もう27日も経ってるんだぞ!? なのに半分も稼げてないじゃないか!」
ユウリは怒りを込めて叫んだ。
「最弱クラスの下級モンスターばかり倒してるんだから当たり前でしょ」
「作戦を変える必要があるな……」
ユウリが立ち止まり、次の作戦を考えようとしたその時――遠くから話し声のようなものが聞こえてきた。
「おい、誰だ喋ってるのは? 今考えてるんだから静かにしろ」
「誰も喋ってないわよ、この幻聴男」
ラヴェンナが即座に否定した。
「冗談抜きで聞こえないのか? 人の話し声だ」
「ううん、何も聞こえないよ?」
ミナも首を横に振った。
「森の奥からだ……来い!」
ユウリは走り出し、二人も慌てて後を追った。
しばらく走った後、ユウリは身を低くして茂みの中へと潜り込んだ。
二人も彼の隣に滑り込み、前方を見つめる。
そこには、大勢の人々が集まり、まるで集会のようなものが行われていた。壇上に立っているのは三人の人物だった。
二人にはまだ状況が呑み込めていないようだったが、ユウリの胸の中には確信めいた強烈な直感が走っていた。
――あの集団は、全員「プレイヤー」だ。
第4章を読んでくださり、ありがとうございます!
第一の試練は、まだ終わっていません。次回、ユウリたちはついに試練の結末へと近づいていきます。しかし、その結末は、皆さんの想像とは大きく異なるものになるかもしれません。
次回、第5章もお楽しみに!




