表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
99/103

追記1 最強の魔法少女、面接を受ける。

 ――袈裟懸村襲撃事件から、一か月後。


 箱崎モータース第二工場。


 二階の大会議室。


 長机を囲むように、異様な面接官たちが並んでいた。


 会長・箱崎。


 信人。


 聖子。


 相談役――熊のぬいぐるみ・熊田。


 段ボール戦士・鎧坂。


 コアラの指人形・金田。


 そして、銀色のブリキの木こり・ニック。


 そのど真ん中に座らされている律子は、頭を抱えていた。


(……なんで。)


(なんで私が真ん中なの。)


(しかも左右を見ても普通の人がいない。)


 右を見れば、熊のぬいぐるみ。


 左を見れば、段ボール戦士。


(私……いつからこの人たちと同じカテゴリーになったの?)


 胃が痛い。


 だが、村を襲撃事件に巻き込んだ張本人でもある。


 何も言えない。


(……反論できない。)


 律子は静かに現実を受け入れた。


 そんな彼女をよそに、信人が静かに立ち上がる。


「それでは、本日の面接を始めます。」


 一礼。


「今回の推薦人は――鎧坂博士です。」


 段ボール製の鎧がギシギシと音を立てながら立ち上がる。


「私が推薦するのは――」


 胸を張る。


「我が妻。」


 一拍置く。


「かつて世界を救った聖戦士。」


「煉獄の太陽。」


「聖なる天の炎。」


「――シャイン・ソル。」


 その名が告げられると同時に、一人の女性が椅子から立ち上がった。


 長い髪をかき上げ、どこか余裕のある笑みを浮かべる美女。


 足を組んだまま微笑む。


「紹介ありがとう。」


「鎧坂ほのかです。」


「昔は『シャイン・ソル』って名前で魔法少女をやっていたわ。」


 肩をすくめる。


「結婚したから寿退職したけどね。」


 柔らかな笑顔。


 上品な物腰。


 優しそうな雰囲気。


(あっ……。)


(この人、まともそう。)


 律子は胸を撫で下ろした。


(やっと普通の人が来た……。)


 そう思った次の瞬間だった。


「……魔女か。」


 低い声。


 ニックだった。


 銀色の瞳が細くなる。


 ほのかも笑顔のまま訂正する。


「違うわ。」


「魔法少女。」


「何が違う。」


「全部。」


 笑顔は崩れない。


「私たちは"愛と正義"なんて言葉だけで戦ってないもの。」


 一歩前へ出る。


「単純に――」


 口角が上がる。


「私たちの方が強い。」


 部屋の空気が凍り付いた。


 律子だけが青ざめる。


(やっぱりまともじゃなかったぁぁぁぁ!!)


 ニックは静かに煙草を灰皿へ押し付ける。


 カチリ。


「面白ぇ。」


 ゆっくり立ち上がる。


「俺を瞬殺できるってか。」


「ええ。」


 ほのかは微笑む。


「できるなら、だけど。」


「気に入った。」


 ニックは巨大な斧を肩へ担ぐ。


「俺の斧を受け止められたら合格だ。」


「いいわ。」


 ほのかは真紅のステッキを掲げる。


「『聖なる天の炎』――来なさい。」


 轟音。


 紅蓮の炎が渦を巻く。


 光が天井まで突き抜ける。


 その炎の中心から、一人の少女が姿を現した。


 燃え盛る夕陽を思わせるフレイムオレンジのドレス。


 黄金の髪。


 背中で揺れる炎のマント。


 その姿はまるで太陽そのもの。


 シャイン・ソル。


 右手に輝く弓を握る。


 炎の矢が一本、生まれる。


「今さら降参は無しよ?」


「ああ。」


 ニックが笑う。


「望むところだ。」


 次の瞬間。


 炎の矢が放たれた。


 轟ッ!!


 一直線に飛んだ矢は、ニックではなく背後の鉄骨を掠める。


 ジュワァァァッ!!


 分厚い鋼鉄が、まるで蝋のように溶け落ちた。


 律子の顔が引きつる。


(工場ぉぉぉぉぉ!!)


「なるほど。」


 ニックの目が細くなる。


「ただの炎じゃねぇ。」


 第二射。


 第三射。


 第四射。


 炎の矢が雨のように降り注ぐ。


 ニックは高速で跳ぶ。


 斧で叩き落とす。


 しかし――。


「なっ?」


 砕いたはずの矢が空中で向きを変えた。


 再び襲い掛かる。


「追尾か!」


「そういうこと。」


 ほのかが笑う。


「逃げても無駄よ。」


 工場内を縦横無尽に駆けるニック。


 炎の軌跡が蜘蛛の巣のように張り巡らされる。


 そして。


「なら――!」


 一気に間合いを詰めた。


 巨大な斧が振り下ろされる。


 ガギィィィン!!


 ほのかは弓を捨てる。


 腰から細身の剣を抜き放ち、その一撃を真正面から受け止めた。


 火花が散る。


 床が沈む。


 二人の足元から放射状に亀裂が走った。


 鍔迫り合い。


 互いの力がぶつかり合う。


「……驚いた。」


 ほのかが汗を一筋流す。


「私に剣を抜かせた相手は――」


 ニックを見据える。


「あなたで二人目よ。」


 ニックは豪快に笑った。


「十分だ。」


 斧を肩へ戻す。


「合格。」


「文句なしだ。」


 静寂。


 熊田がゆっくり頷く。


「それでは採決を。」


 全員が手を挙げる。


 満場一致。


「採用。」


 律子だけが呆然としていた。


(普通って……。)


(履歴書を書くんじゃないの!?)


(なんで毎回命懸けなのよ!!)


 そんな彼女の心の叫びなど誰にも届かない。


 こうしてまた一人。


 とんでもない新人が加わるのだった。

☆ここまで、読んでくださり、ありがとうございました。


評価ポイント、ブックマーク登録 していただければ、励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ