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第一章:パズの夜明け PART.1

I.


濃霧の切れ間に見え隠れするクレーンは、まるで巨大な鉄の鳥の骨組みのようであった。

ドックでは一隻の貨物船が荷を降ろしており、労働者たちが小気味よい掛け声を掛け合いながら、タラップから木箱を運び出している。

噴き出す蒸気の鋭い悲鳴、鉄鎖が擦れ合いぶつかり合う金属音、そして現場監督たちの怒鳴り声──そのすべてが混ざり合い、圧倒的な騒音の壁となって押し寄せていた。


オーウェンは自転車を駐輪小屋に停めると、肩に降りた朝露を払い、倉庫の重い扉を押し開けた。


「おう、オーウェン! おはよう!」

奥から誰かが手を振った。


コブであった。

この『パズ急行配達会社』で二十年近く働いている古参の労働者だ。

彼は木箱の傍らにしゃがみ込み、バールを使って封印を引き剥がしている最中であった。扉が開く音だけで振り返りもせず、声をかけてきたのだ。


コブは五十代半ばで、もみあげには白い髭が混じり、顔には深い皺が網の目のように刻まれている。しかし、その身体は倍も若い男たちより頑強であった。

若い頃は炭鉱で働いており、落盤事故をきっかけにこのドックへ流れてきたのだと噂されている。


「おはよう、コブ親父」

オーウェンは彼に近づいた。

「今日は荷が多いのか?」


「山積みさ」

コブは倉庫の奥へと顎をしゃくった。

「昨夜、ヘリオポリスから貨物船が入港してな。大箱が十二個だ。……すべて、お前の仕事だよ」


オーウェンの視線が、その指し示された方向へと向かう。


倉庫の薄暗い奥のスペースに、十二個の木箱が整然と積み上げられていた。

どれも人間の腰ほどの高さがあり、鉄のバンドで厳重に締め付けられている。

そして箱の側面には、危険物を示す深紅の警告紋章が刻印されていた。


「中身は何なんだ?」

彼は尋ねた。


「さあな」

コブはついに封印を叩き割り、腰を伸ばすと、上着の袖で顔の汗を拭った。

貨物目録マニフェストは事務所だ。ヴィクターがお前を呼べってよ。あいつ、今日はいつもより早く来ていてな。どうも機嫌がピリピリしていやがる」


オーウェンは頷き、事務所へと向かった。


十二個の木箱の脇を通り過ぎる瞬間、彼はふと足を止め、それらを見つめた。

なぜかは分からないが、その木箱は妙に不気味な気配を放っていた。

警告紋章の禍々しい赤色のせいかもしれないし、あるいは、その箱から漂ってくるような、奇妙で不自然な冷気のせいかもしれない。


彼は事務所の扉を押し開けた。


ヴィクター・オレンジは窓辺に立ち、背を向けたままドックを見下ろしていた。

入室の気配を察すると、彼はゆっくりと振り返り、一度だけ頷いた。


ヴィクターは四十代で、この『パズ急行』の経営主である。

彼は常に、顔の上半分を覆うハーフマスクを着用していた。

火傷の痕を隠しているのだと言う者もいれば、かつての戦傷だと言う者もいる。さらに、口にするのも憚られる暗い秘密のせいだと囁く者もいた。

オーウェンは一度も尋ねたことはなかったし、他の誰もがそれを口にするのを見たことがない。


ヴィクターは良いボスであった。

労働者には公正で、賃金を誤魔化すこともなく、時には全員に酒を奢ることもあった。それだけで十分であった。


「来たか」

ヴィクターの声は、少し掠れていた。まるで満足に眠れなかったかのように。


「ああ」

オーウェンは机へと歩み寄った。

「コブ親父から、検収する荷物があるって聞いたよ」


ヴィクターは引き出しから貨物目録マニフェストを取り出し、手渡してきた。

その書類には、細かな文字がびっしりと並んでいる。

オーウェンの視線は、その最上段の一行に釘付けになった。


始源結晶しげんけっしょうの鉱石標本、十二箱。発送元:ヘリオポリス──帝国科学アカデミー。宛先:王都アラン──地質学研究所』


彼の指先が、ほんの僅かに、誰にも気づかれぬ速度で止まった。


本能に突き動かされるように、オーウェンの指が自然と胸元のペンダントへと伸びる。

服の底にあるその結晶は、彼の肌に温もりを伝えていた。まるで、小さな心臓がドクドクと鼓動しているかのような、確かな温熱。


それは亡き母から贈られた形見であった。

彼がその詳細を尋ねたことは一度もなく、母もまた、語ろうとはしなかった。


「読み終えたか?」

ヴィクターの声が、彼を現実へと引き戻した。


オーウェンは顔を上げた。

ヴィクターは彼を凝視していた。マスクの奥に隠されたその瞳から感情を読み取ることは不可能であったが、オーウェンには分かった──ヴィクターは今、異様なまでの鋭さで自分を観察している、と。


「ああ」

オーウェンは目録を机に置いた。

「今から数を数えればいいか?」


「任せる」ヴィクターが言った。「……くれぐれも、気をつけてな」


オーウェンは頷き、部屋を出ようと振り返った。

扉に手をかけたその時、背後から再びヴィクターの声が降ってきた。


「オーウェン」


彼は振り返る。


ヴィクターは数秒の間、沈黙を守っていた。

それから、静かにこう告げた。


「その荷は……普通のものではない。検収の際、中身には絶対に触れるな。ただ、数量の数字だけを確認するんだ」


オーウェンは動きを止めた。「なぜ」という疑問の言葉が口を突きかけ、しかしヴィクターは、すでに再び窓の外へと背を向けていた。


彼は扉を押し開け、一歩外へと踏み出した。


II.


十二箱の木箱。彼らはそれを一つずつ、順に開封していった。


最初の一箱の封印を叩き割った瞬間、オーウェンはなぜヴィクターがあのような警告を口にしたのかを、完全に理解した。


中に入っていたのは、巨大な『青結晶の原石アクアマリン・オア』であった。


それは、分厚く敷き詰められた綿の緩衝材の真ん中に鎮座していた。

形状は不規則で、どこか鋭利であり、まるで、より巨大な全体から無理やり引きちぎられたかのような姿をしている。

倉庫の薄暗いランプの下で、それは幽玄な青い燐光を放っていた。それは反射光などではない。まるで巨大な眠れる生物の、静止した心臓のように、内側からそっと脈打つ輝き(グロウ)であった。


オーウェンがそれを凝視すると、突如として自らの胸元にある結晶が熱を帯び始めた。

熱いというほどではない。ただ、確かな温もり。まるで、生き物が高鳴る呼び声に応答しているかのような錯覚を覚えた。


「これ……これは、一体何なんだ?」

隣に立っていたヤソスが、畏怖の念をにじませて低く呟いた。

彼は新入りの十七歳の荷揚役ステベドアであり、このような代物を目にしたことは一度もなかった。


「気を引き締めろ」

オーウェンは、自分でも驚くほどぶっきらぼうな声を出した。

「……次を開けるぞ」


二箱目にも、同じ結晶が収められていた。

三箱目も、四箱目も、五箱目も──すべての木箱に、青結晶の原石の塊が横たわっていた。

大きさや形状こそ違えど、どれもが同じ不気味な、青い光を放って脈打っている。


だが、八箱目に達した時、オーウェンは手を止めた。


彼はその場にしゃがみ込み、箱の中の結晶をじっと見つめた。

それは他のものより小さく、人間の頭ほどの大きさだったが、その色彩は遥かに深かった──まるで氷結した深淵の、凍りついた濃紺。

そして何よりも奇妙なのは、その形状であった。それは鋭利で不規則な破片などではなかった。そこには、ある意図的な、有機的な対称性が存在していた。


それはまるで、手のようであった。


丸まった、人間の手。


オーウェンの背筋に、冷たい戦慄が走り抜けた。

彼は立ち上がり、一歩後退した。


「オーウェン?」ヤソスが彼を見つめる。「どうしたんだ?」


「何でもない」

オーウェンは首を振った。

「……続けよう」


そして、彼が「それ」を見つけたのは、最後の十二箱目を開封した時であった。


結晶の塊と木箱の壁面の隙間に、それは挟まっていた。

小さく、注意していなければ容易に見落としてしまうような位置だ。もしオーウェンがこれほど緻密に数を検収していなければ、決して気づくことはなかったであろう。


それは、ごく小さな結晶の破片であった。


一見すると大きな結晶と同じように見えたが、サイズはボトルのキャップほどしかない。

それはそこに横たわり、まるで自分を呼んでいるかのように、かすかな、手招きするような光を放っていた。


一瞬の躊躇ためらいの後、オーウェンは手を伸ばし、それを拾い上げた。


それが手のひらに触れた瞬間。

彼の胸元の結晶が、肉を焼き焦がすほどの熾烈な熱を放った。あまりの激痛に、彼は叫び声を上げそうになった。

彼は手の中の破片を握り締め、じっと見つめた。なぜだか自分でも分からぬまま、彼は衝動的に、その端からさらに小さな微細な欠片かけらをパキリと割り取った。


「オーウェン?」ヤソスが尋ねる。「大丈夫か?」


「問題ない」

オーウェンは割り取った小さな欠片をポケットへと滑り込ませた。

「検収を終わらせよう」


十二箱。一箱につき、一個。すべて異常なし。


彼は最後の箱の蓋を閉じた。

静まり返った青い光の合唱の中に立ち尽くしながら、奇妙な感覚が彼の全身を這い回っていた。


最初の数箱に入っていた結晶は、未加工の青結晶の原石のように見えた。

しかし、最後の一箱に入っていたあの結晶らしき物体……それが一体何であるのか、彼には全く見当がつかなかった。



III.


夕闇が降りる頃、オーウェンは自転車を漕いで『イヤーズ(Years)機械製作所』へと向かっていた。


ポケットの中の欠片は、未だに熱を放ち続けている。

時折、彼は自らの手が吸い寄せられるようにポケットへと伸び、それがまだそこにあるかを確認した。

なぜそれを盗み出すような真似をしたのか、彼自身にも分からなかった。ただ、絶対的な確信だけがあった──これをイニアスに見せなければならない、と。


沈みゆく夕日は、パズの街を溶けた黄金の色に染め上げていた。

通りは人で溢れかえっている──シフトを終えた労働者、露店を片付ける商人、放課後の子供たち、家路を急ぐ事務員。

一台の蒸気自動車が白い煙を吐き出しながら通りをのろのろと進み、エンジンが不規則な音を立てて爆ぜている。子供たちの群れがその後を追いかけながら、「自動車だ! 自動車だ!」と歓声を上げていた。


オーウェンは彼らを巧みに避け、狭い路地へとハンドルを切った。


『イヤーズ』の扉は、わずかに開いていた。

彼はそれを押し開け、中へと足を踏み入れた。


作業場の中は静まり返っており、稼働する旋盤の低く一定なハム音だけが支配している。

イニアスは作業台の上に突っ伏し、複雑に絡み合った歯車の山を虚ろに見つめていた。

丸眼鏡のレンズは油で汚れ、髪は鳥の巣のように激しく乱れている──また一晩中、一睡もせずに作業をしていた証拠であった。

彼の作業台の上は、歯車、レバー、パイプ、バルブといった部品が無秩序に散乱し、いくつかの開かれた本のページには、緻密で複雑な設計図がびっしりと描き込まれていた。


「イニアス」


イニアスは顔を上げ、眼鏡のブリッジを指で押し上げた。

「何の用だ、オーウェン?」


オーウェンは歩み寄り、ポケットからあの欠片を取り出すと、作業台の上に静かに置いた。


イニアスの視線がその欠片に落ちた瞬間、彼の表情が一変した。


「……どこでこれを手に入れた?」


「今日、検収した荷物だ」

オーウェンは言った。

「木箱の隙間に挟まっていた破片を、俺が抜き取った」


イニアスはその欠片を拾い上げ、ランプの光にかざした。異様なほどに集中した鋭い眼差しで、それを観察し始める。

その手元は正確でブレていなかったが、オーウェンは、彼の眉間の皺が秒単位で深くなっていくのを見て取った。


「これは、ただの青結晶の鉱石じゃないぞ」

イニアスが言った。


「分かっている」


「いや、俺たちが普段精錬しているような種類のものじゃないという意味だ」

イニアスは、より重い口調でその言葉を繰り返した。

「この色を見ろ。通常の、精錬されるアクアマリン(青結晶)は淡い青色か、どれほど濃くても深いネイビーだ。だが、これは……見ろ。これはまるで──」

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