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プロローグ:セヴェロスの落日 PART.3

IX.


──さらに二年の歳月が流れた。


街の外の丘の上で、子供たちのグループが遊んでいた。


オーウェンもその中にいた。

七歳になった彼は、以前よりも頑丈になり、大胆さも増していた。

彼と仲間たちは丘に登り、木々の間でかくれんぼをしたり、草の上を転げ回ったりして遊んでいた。


彼は大きな岩の上によじ登り、下の仲間たちに向かって叫んだ。

「僕を見てよ! もっと高く登れるぞ!」


それは苔で滑りやすく、危険なほどに険しい巨岩であった。

しかし、彼は恐れなかった。物心ついた頃から、高い場所に登るのが大好きだったからである。


彼は登った。

指先で裂け目を探し、爪先を突き出た岩の角にねじ込む。一歩。二歩。三歩。


突然、彼の足が滑った。


彼は落下した。


仲間たちが悲鳴を上げた。

斜面は急で、その下には尖った岩が乱雑に転がっている。

彼は転がり落ち、激しく岩に激突し、そこで意識を失った。


意識を取り戻したとき、彼は自分が何か柔らかいものの上に横たわっていることに気づいた。

草、葉、そして彼の頭の下には折りたたまれた一枚の衣服が敷かれていた。


誰かが彼のそばにいて、その顔を優しく拭っている。


それは彼と同じくらいの年齢の少女であり、その表情は心配そうに強張っていた。


「気がついたのね」

少女は言った。

「すごく血が出ていたの。私が丘を登ってきたら、あなたがそこに倒れていたから、ここまで引きずってきたのよ」


オーウェンは話そうとしたが、頭が激しくズキズキと痛んだ。


「動いちゃダメ」

少女が言った。

「傷の手当てはしてあげたから。お母さんが教えてくれたの。病院で働いているからね」


オーウェンは彼女を見つめた。

突然、記憶の断片が彼の中で揺らめいた。


「きみ、誰……?」


「私の名前はサシャ」

少女は言った。

「教会に住んでいるの」


オーウェンは思い出した。あの、ドックにいた女の子だ。


「……ありがとう」


サシャは微笑み、立ち上がった。

彼女のドレスは彼の血で汚れていたが、彼女は全く気に留めていない様子であった。


「大人の人を呼んでくるから、じっとして休んでいて。この近くに家があるのを知っているから」


彼女は走り去った。


オーウェンはその場に横たわり、空を見上げた。

それは鮮烈な、深いブルーであった。雲は信じられないほどに白く、風は優しく、柔らかい。


彼は目を閉じ、再び眠りへと落ちていった。


次に目覚めたとき、彼は自分のベッドの上にいた。

母親のマナがそばに座り、その目は赤くなっていた。


「もう、心配で死ぬかと思ったじゃない……」


オーウェンはきまり悪そうにニヤリと笑い、頭に巻かれた包帯に触れた。


「母さん、女の子が僕を救ってくれたんだ。名前はサシャって言うんだよ」


マナの動きが、一瞬で凍りついた。


「……サシャ?」


「うん。教会に住んでいるんだ」


マナは一瞬沈黙し、それからゆっくりと頷いた。


「そう……それなら、近いうちにお礼に行かなければね」


X.


──さらに十四年の歳月が、静かに流れ去った。


── 大陸暦1341年 ──

港湾都市パズに夜明けが訪れた。街は濃厚で、まとわりつくような霧に包まれている。


川から立ち上る霧は、街全体を灰白色のとばりで覆い尽くしていた。

工場の煙突は今も黒煙を吐き出しているが、それは霧と混ざり合い、どこからが煙でどこからが霧なのか判別すらつかなかった。

ドックのクレーンは、濃霧の切れ間に巨大な鉄の鳥の幽霊のように、見え隠れしていた。


一人の青年が、西地区の通りを自転車で駆け抜けていた。


彼は二十一歳。

『パズ急行配達会社』のダークブルーの制服をまとっている。

彼の襟元からは一本の赤い紐が覗いており、そこには小さく、不規則な形をした青い結晶が結ばれていた。

彼はゆったりとしたペースでペダルを漕ぎ、時折、街道沿いの見知った顔に声をかけて挨拶を交わす。


彼の名は、オーウェン・クラックス。


彼は、二十一年前のあの夜に降った大雪のことなど、何も知らなかった。

自分の首にかかっている結晶が、一体いかなる意味を持つのか、その片鱗すら知る由もない。

彼が知っていたのは、今日の天気が良いということ、そして今日も一日、懸命に働くのに適した日だということだけであった。


街の反対側、『デレン地域病院』では、一人の若い看護師が医療キットの準備をしていた。


彼女は二十一歳。

糊のきいた白い制服をまとい、髪はナースキャップの中にきれいに収められ、白く優美な首のラインが露出している。

彼女の手首には、うっすらとした、かろうじて見える程度の、繊細な青い紋様があった。

それは生まれつきのあざのようでもあり、しかしどこか違うようでもある。


彼女の名は、サシャ・トレップ。


彼女もまた、二十一年前のあの夜に降った雪のことなど、何も知らなかった。

自分の手首にある紋様が何を意味するのか、知りもしなかった。

彼女が知っていたのは、今日、一人の幼い男の子の手術が予定されており、事前に麻酔薬の準備を万全にしなければならないということだけ。

男の子の名はルカ、ドックの労働者の息子だ。とても良い子で、可愛らしく、彼女もお気に入りの患者であった。


二人の若者は、同じ街の中で、それぞれの平凡な日常を生きていた。


時折、彼らは通りですれ違うことがあった。

時折、混雑した酒場の向こう側に、互いの姿を垣間見ることがあった。

たまに、相手の顔が奇妙に、胸が締め付けられるほどに懐かしく感じられることがあったが、その記憶がはっきりと蘇ることは、決してなかった。


彼らは知らなかった。地平線の彼方で、嵐がすでに渦巻いていることを。


ジェリオ帝国の飛行船艦隊が、国境に集結しつつある。

レジスタンスの使者たちが、民衆の間を秘密裏に動き回っている。

(以下、物語の核心へ──)


そして、あの黒い制服を着た男たちが、どこかで、この街をじっと見つめている。


パズの夜明けが始まった。静かで、穏やかな夜明けだった。


しかし、運命の歯車は、すでにゆっくりと、狂いなく回り始めていた。

ご一読いただき、ありがとうございました!

これにてプロローグ(第0章)は幕を閉じ、次回からはいよいよ本編へと突入します。

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