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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第六章 副業・兼業OK

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第82話 多分、私の知り合いです

 建物の中は、打ちっぱなしのコンクリートのような壁。

そこにいろんなタイルだの、板だのをちぐはぐに張って行く人。

その張られたものに、水を掛けて観察する人。

ハンマーで殴って見る人。

その内装を剥がす人。

が、いたちごっこのように並んで作業している。

 愚かなことに見えるが、

どうやら内装の建材をテストしては、

張り替えてどうなるかを確認してるようだ。

 天井はこれまた、いろんな種類の照明。

ろうそくのシャンデリア。

電気で点いている電灯。

魔道具や松明すらある。

 つなぎの魔法使いはそれを見て苦笑いした。


「すみません。

一階は試験室もかねてて。

主に建築に使う内装向けの建材や照明器具を実際に設置して試しています」

「私は異端審問官なので、

あちこちに行く機会が多いのですが。

ここと同じ光景は見たことがないですね」


 ゼンフはそう言って感心している


「建築は詳しくありませんが、

こうやって、

実際に壁で試された建材や施工手法だと考えると、

安心感がありますね。

今度、異端審問官の詰め所も内装工事をするので、

頼みたいくらいです」


 電灯を見上げて顎をこねるゼンフ。

トシ・オーはぼぅとしているビトメの肩と背に優しく手を当てて、歩くよう促す。

 つなぎの魔法使いは、

部屋の奥の昇降機に三人を案内した。

昇降機には既に女性が乗っている。


「何階ですか?」


 女性がそうたずねた。


「五階へ」


 つなぎの魔法使いは、

そう言って自分は昇降機に乗らない。


「上で『聖女の右』が待機しているので、

私はここまでです。

この建物内は安全なので、ご安心を」


 そう言い残して、彼は歩き去る。

そして、昇降機のドアが閉まり、箱が上へ昇っていく。

ミルポアの昇降機より静かで、箱が広い。

巨漢の異端審問官であるゼンフが一緒に乗っているのに、

それでも広く感じる程だ。


「到着です」


 ベルが鳴った。

ドアが開いた三人はドアを抜けると、

そこには白装束の人たちが膝を床について待っていた。

真っ白なローブ、真っ白な仮面。

異端審問官に負けないくらい異様な姿だ。

皆、一様に肩を揺らして泣いている。


「お、おがえりない!」

「トシ・オー様!

おかえりなさい!」

「おがえりなざい!」


 泣いている。

全員泣いている。

ゼンフもさすがに冷や汗を流した。


「な、何があった?」

「多分、私の知り合いです。

『記憶を失う前の私の』知り合いです」


 トシ・オーの言葉でゼンフは、納得した。

『聖女の右』たちは、仮面を脱いで涙をぬぐう。


「あの時は助けていただきました!」

「今度は、我々の番です!

必ず、必ず、お二人をお守りします!」


 ゼンフは彼らのやる気の高さに少し引いている。

『聖女の右』は、過去異端審問官ともやりあっており。

ゼンフも彼らの実力は知っている。

そんな彼らが、『助けていただきました』、と言う。

英雄、トシ・オー。

ゼンフも彼について詳しく知らないが、

記憶を失う前の彼はきっとゼンフなんて邪魔にすらなり得ない。

ゼンフは直感でそう感じた。


「夜も遅いのですが、

お二人には急ぎ『我らの主』に会ってもらいたいのです」

「お二人が大変お疲れであることは承知していますが、

何卒よろしくお願いいたします!」


 良くわからないが、

トシ・オーは快諾して白づくめたちについて行く。

ビトメはその間もぼぅとしている。

ゼンフは二人の後を歩く。


「こちらです」


 案内されたドアを、トシ・オーが開いた。

部屋の中には、大きなベッドとそこに寝かされた女性。

女性にはたくさんのチューブや機器が繋がれており、

かなり具合が悪いことが見てわかる。

 女性は入室したトシ・オーに気付いて目を開けた。

その瞳がトシ・オーを見た瞬間に見開かれ、

そして、ゆっくり細められる。


「あぁ、あぁ……。

お久しぶりです。

 そして、初めまして。

私は『光の神』だったものです」


 ベッドから上半身を起こし、

彼女はナイトキャップを頭から外した。


「もう、『金髪』って、

呼んでもらえないのでしょうね」


 彼女の頭髪は一つも残っていなかった。

からを剥いた茹で玉子のような、

綺麗な頭皮がむき出しだった。


「ささ、入ってください。

座ってください。

私には、もう時間がないのです」


 そう言って、『光の神』は一筋の涙を流した。

それは悲しいものではない。

喜びが溢れたものだった。

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