第79話 なんで、そんなことを!?
スラム側の城壁が大破したが、
『テクノマギ』たちはそこで魔物の大群を見事に迎え撃ち、
そこから一匹も通さない。
五人の連携は見事で、
しかも、つなぎの人々も銃を手に駆けつけて援護する。
「衛兵がいなくても、
どおってことねぇんだよ!」
その言葉の通り、
物の数と言わんばかりに蹴散らされる魔物たち。
しかも、
その魔物に効果的な毒を用意して散布。
魔物たちの動きを鈍らせ、的確に数を減らしていく。
「あとどれくらいいる?」
「ざっと、八万かな」
「三十秒で終わらせる」
『テクノマギ』の魔改造は、伊達じゃない。
近代兵器を魔法で模倣したあげく。
子供の感性でいう、
『ぼくのかんがえた、ちょうつよいやつ』を、
技術者たちが採算度外視で真剣に作った化け物だ。
『首狩りウサギ』何てものが可愛く見えるほど、
高速旋回、急停止、急加速。
天も地もなく跳び回って、
両手のマチェットを振り回す『ラビット』。
ブースターの加速の勢いそのままで体当たりし、
爪のような刃が付いたガントレットを振り回す『タイガー』。
空から小型の爆弾を地上へ降らせ。
飛ぶ魔物にはすれ違いざまに機関砲を浴びせ掛ける『イーグル』。
大型の魔物も蹴散らして、
ひたすらに前へ前へと進む『ヘビーブル』。
それらを援護するため、
音もなく跳び回り狙撃する『ウルフ』。
「す……、すごい」
ラボの屋上からそれを見ているビトメとトシ・オー。
瞬く間に魔物たちが吹き飛ばされていくのは圧巻だ。
麦畑を大鎌で刈るような爽快感すらある。
皆、油断は禁物、と思いつつも、
楽勝ムードが漂って来た。
「……なんだ、あれ」
子どもだった。
街の方から子どもが、
息を切らせてスラムの辺りに走ってきた。
街中はパニックになっているので、
親とはぐれて逃げ回ってきたのだろう。
ラボからつなぎの人々が何人か飛び出して、
子どもを保護しようと駆けていく。
その子はやっと人を見つけて嬉しいのか、
つなぎの人々へ向かって笑顔で駆け寄ってきた。
つなぎの男性が、屈んでその子を抱き止めた。
「もう大丈夫。
ささ、お母さんのところへ連れていってあげよう」
「お兄さん、『白の教会』の人?」
「あぁ、そうだけど」
「やっと見つけた!
ありがとう!」
そう言って、その子は手に持っていた何かをちぎった。
満面の笑みで、嬉しそうに。
次の瞬間、爆発が起きる。
二人が爆発した。
正確には、子どもが爆発した。
つなぎの男性は、
つなぎの防御力で人の姿は保たれていたが、
露出していた頭は失くなっていた。
子どもにいたっては、
姿かたちどころか肉片も残っていない。
「……え?」
ビトメは目の前の光景が信じられなかった。
子どもが自爆した。
笑って自死した。
ほんの、五つ、六つくらいの子どもがだ。
「こっちだよ!
こっちにいるよ!」
どこから現れたのか、
別の子どもが爆発に気付いてこちらに駆け寄ってきた。
その手にも、
さっきの子どもと同じ何かを持っていた。
「……ま、まさか」
子どもがぞろぞろ、やってきた。
皆、笑顔でつなぎの人々に駆け寄って行く。
皆、同じように何かを持っている。
「やっと見つけた!」
「『白の教会』さんだ!」
無垢な爆弾。
そうとしか呼べない。
彼らはよたよた駆け寄って行く。
一生懸命に。
死へ向かって。
なんの曇りもない笑顔が、恐ろしい。
「なんで?!」
ビトメの悲鳴が響き渡る。
良く見ると街のあちこちでも、爆炎が上がっている。
「なんで、そんなことを!?」
ビトメの叫びは子どもへ向けられたものか。
子どもに爆弾を持たせた者へ向けられたものか。
はたまた、その両方か。




