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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第五章 ノルマなし、転勤なし!

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閑話 焦燥

●ミルポア『癒し手』の教会●


「全滅?

衛兵がか?」


 キャラウェイはさすがに聞き捨てならず、

報告にきた男を見て聞き直す。


「はい……。

死体すら、まともな状態にありません。

誰が誰の死体か全く分かりません」

「……『異端』ではなく、

もはや『武力勢力』だったか」


 苦々しく呟きながら、

怒りで全身の贅肉を揺らすキャラウェイ。

 しかし、目の前の男を怒鳴り付けるのもお門違いだ、と

判断できるだけの冷静さは保っている。


「で、二人が『白の教会』にいたかどうかも不明、か?」

「はい。

生き証人は一人もいませんで……」

「……ぐぅむ」


 キャラウェイは焦った。

衛兵を一網打尽にする武力をもった『異端』。

奮発して衛兵を買収したのだ。

今さら町のチンピラを集めても、敵うとは思えない。

 それに、いつ『白の教会』に瞬間移動の魔法使いを呼ばれるか分からない。

そこまでの武力があるなら、

そう言う魔法使いの部隊だってあってしかるべきだ。

むしろ、既に二人はどこかへ移動してしまった可能性すらある。

急がなければならないが、

直ぐ用意できる手駒が弱すぎる。

 豪華絢爛な部屋の調度品だけが、

いつも通り落ち着いている。

キャラウェイはテーブルの上のフルーツを乱暴に手に取り、

口へ放り込んだ。

ボロボロと口が取りこぼした果実が床に落ちて染みになる。

キャラウェイの頭に糖が巡る。


「ここで諦めるには、

時間も出費もかさみすぎだ」


 そう。

もうキャラウェイは引き返せない。

『癒し手』を裏切り。

『七柱の教団』を裏切り。

神すら裏切った、裏切り者。

 それもこれも、

金のためにやったことだ。

『奇跡』がなくなってしまった今、

キャラウェイに新たな収入は見込めず。

蓄財を削るしかなく。

 今さら質素堅実な生活にはなれず。

収集したコレクションを手放す気にもなれず。

身体の肉のように、言い訳と恨み言だけが溜まり。

 逆転の可能性、投資として、

今回の件はかなりの金額をかけている。

それが、なんの実りもなさなしてない。

逆に損すらしている。

損切り、をするにも遅すぎた。

取れる手段は『前進』あるのみ。


「……」


 キャラウェイは肉塊を揺らして椅子から立ち上がった。


「奴らに魔法使いを呼ばれるより前に行動せねば。

奥の手を使おうにも、時間が足りん」

「……それであれば、一つご提案が」


 いつの間にか部屋にいたパティスが前に出てそう言う。


「今はゴブリンの知恵すら借りたい。

聞いてやろう」

「では、

私の商品の一つに、

擬似的に魔物を氾濫させられるアイテムがありまして……」



 それはコストが高い。

そう直感したキャラウェイが唸る中、

パティスは説明を続ける。


「もちろん、魔物はコントロールできません。

この街全体が大変危険な状態になってしまいます」


 パティスはそれでも笑みを浮かべて。


「だから、『白の教会』が彼らの言う『実験』で魔物の氾濫を起こさせた、

と言う噂を流して参りましょう」


 キャラウェイは笑った。

パティスも笑っていた。


「では、我らの身の安全を保証できるアイテムもあるのだな?」

「えぇ、ございます。

こちらは、サービスとさせて貰いましょう。

 そうですね。

これに共感してくれる人は必要だ。

我々以外全滅、と言うわけに行きません。

氾濫で生き残るのは、

七柱の教団と貴方に近い方がいいでしょう」


 パティスは、暗に庇護対象を選べると言う。

キャラウェイは目を細めた。


「それは、いいなぁ」


 贅肉を揺らして、彼は笑った。

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