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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第一章 未経験者歓迎!

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第8話 帰せ!

 パーカーだ。

久しぶりに見た。

この世界じゃ絶対出せない鮮やかな色のピンク。

そこにプリントされてるのはハートとか星のマーク。

 下はデニムのパンツだ。

スニーカーが懐かしすぎる。

 俺にとっては人が宙を浮いてることよりなにより、

服の異常の方が気になる。


「あれ?

罠にかかって……。

あぁ、サイクロプスは目が悪いのか。

 活動させるなら、

周りを明るくしないと」


 ぶつぶつ呟く女。

俺はアウト・オブ・眼中ってか?

 俺は懐から虎の子のもう一つを出した。

スリングショット。

パチンコだ。

 この世界で見つけたゴムの木の樹液を、

うろ覚えの知識で補完し完成させた殺傷能力が有る武器だ。

Y字の金属フレームは焼き付けまでした特注品。

パウチは厚めの獣の皮。

そこにつがえるのは、トゲ付き鉄球。

 俺は思い切りゴムを引き絞って、

女に向けて玉を放つ。


「よそ見してちゃダメ。

ほら、攻撃されてる」


 突然何もないところから、

もう一人女が現れて俺が撃った玉を素手で止めた。

トゲ鉄球を止めて無傷の女が俺の方を見る。


「てめぇ……」


 忘れるものか。

忘れてなるものか。

一瞬の事だった。

まばたきくらいのことだ。

だが、あの顔は忘れない。


「俺をこんなところに連れてきた女ぁ!」


 俺はこの三年溜まりに溜まった全てを爆発させる。


「帰せ!

俺の家に!」


 絶叫しながら、

黒いドレスの女に玉を撃ち続ける。


「元の世界に、帰せぇ!」


 女が棒立ちなのに、玉は一つも当たらない。


「あれ?

コイツ、ダンジョンマスターだ」


 パーカーの女がやっと俺に気付く。

ドレスの女がそれを聞いて、

慌てて何か思い出そうとしている。


「あ。

思い出した。

前に棄てた個体か。

なんで生きてんの?」

「棄てただ!?

棄てんなら、元の世界に帰せや!」


 腸が煮えくり返る。

怒髪天。

そんな陳腐な言葉で表せない。

怒り。


「帰せ!

返せ!

帰せぇ!」


 俺は魔法鞄の中からダンジョンコアを取り出して、

叫ぶ。


「こんなもん、

渡すだけ渡して森に投げ棄てんな!

無責任やろうが!」

「失礼なヤツ。

……あ、マジだ」


 なにがおかしいのか、

俺を指差して大笑いし出す黒いドレスの女。

本当に腹が立つ。


「なにそれ?」

「ん?

コイツは要らないから、

適当にダンジョンコアを渡して棄てたの。

 クミ、貴女は秘蔵っ子だから。

ダンジョンマスターとしての研修三ヶ月、

実地でのOJT二ヶ月!

今もしっかり私がそばにいて、

サポートしてるじゃん!」


 なんだよ、その待遇の差は!?


「ちょうど良い!

ソイツ使って、

『ダンジョンバトル』しましょうか!」

「勝手に話を進めるな、糞がぁ……っ!」


 突然身体が動かなくなる。

声もでない。

息はできるが、目すら動かせない。


「うるさいなぁ。

黙りなさい」


 黒いドレスの女が俺をにらんでそういう。

俺は心の中で罵詈雑言を当て続ける。


「私を誰だと思ってるの?

私は『闇の神』。

夜闇、ダンジョンと魔物を司る神。

 お前なんか、

お目にかかる権利もないんだから」


 神、だ?

知ったこっちゃねぇ。

俺はお前を殺すと決めた。

 パーカーの女はそもそも俺に興味すらない。

闇の神とやらに、パーカーの女が訪ねる。


「それで、『ダンジョンバトル』って?」

「私が立ち会いでおこなうダンジョンマスター同士の決闘。

 この方法じゃないと、

他のダンジョンマスターを殺しても何も得られないの。

ダンジョンバトルで勝てば、

負けたマスターのダンジョンとかモンスターとか、

色々全部奪い取れる。

 方法は今から説明するね」


 俺は完全に蚊帳の外に出された。

俺はヒナの狩りの練習用に捕らえられた生き餌状態だ。


「まず、ダンジョンマスター同士が直接顔を会わせないとダメなの。

今みたいに、貴女とコイツね。

 それで、バトルを了承して、契約書を作る。

契約書は私(神)に捧げるから、形式が決まっててね。

ダンジョンコア経由で買ったのを使ってね」


 知らない単語が山ほど出てくる。

俺は動けないまま、話を聞き続ける。


「契約書にマスターがサインして、

私に捧げたら準備オーケー。

一対一もチーム戦も、

三つ巴やバトルロワイヤル形式もあり。

 ダンジョンコアを破壊するか、

契約時に決めた勝利条件を満たしたら勝ち。

勝利条件を決めなかったら、

ダンジョンコアの破壊が自動で勝利条件になるから」

「命がけ?」

「うん。

でも、コイツはコア使えないみたいだし。

クミが負けるなんて可能、万に一つもないよ」


 糞どもが。

腹が立つが、俺は何もできない。


「じゃあ、試しましょう!」


 そう言って、

闇の神は紙を一枚どこからともなく取り出した。


「準備期間は一週間にして。

かけるのは『お互いのすべての財産』。

勝利条件は、書かなくていいか。

不用品の処分になるし。

 でね、始まるとお互いのダンジョンの入り口に、

お互いのダンジョンの入り口に繋がるポータルができるの。

 モンスターや用心棒を用意して、

ポータルから相手のダンジョンへ送り込むオフェンス。

ダンジョンの中にモンスターを配置したり、

罠や迷路とかを用意してコアにたどり着けないようにするのがディフェンス」

「コイツ、ダンジョンないけど、

どうなるの?」


 確かに、それは俺も気になる。


「コイツの居るところにポータルができるの。

逃げてもポータルが追っかけてくようになってる。

 コイツにできることは、

冒険者みたくダンジョンに入って、

一人で攻略するくらい。

一人で攻略なんて、不可能だし。

無駄な努力だけどね」


 神とやらが俺を指差して笑う。

嗤う。

コイツは、俺が絶対に殺してやる。


「はい。

クミ、サインをして。

 そこのお前、

サインをしなさい。

しないなら、今殺す。

サインをすれば、

一週間は生き延びられる」


 動けない俺に、闇の神はそう言った。

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― 新着の感想 ―
現状では100%確実に、というか絶対に詰んでいますね。もし、なんらかの奇策でクミさんに勝ってしまうと、怒った女神にあっさり潰されます。諦めて人生の残り1週間で散財するか、あるいは、もし居るなら他の神に…
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