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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第五章 ノルマなし、転勤なし!

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第74話 威張ることじゃないでしょ?!

 健康診断を終えた二人は、

また地下一階の居室フロアに戻ってきた。

いろんな器具や問診で身体中を調べられて、

二人とも疲労困憊。

疲れ果てて目が虚ろだ。


「お部屋の鍵です。

その鍵にかいてある番号と、

同じ番号の書いたドアが開きます。

 朝食は七時から九時までに食道に来られれば、

ご用意します」

「え?

ななじ? くじ?

あの、何のことですか?」


 ビトメは何とか聞き取れた単語が理解できなかった。


「あぁ、失礼。

我らは『時計』と言うものがあって、

これで『時間』を計ってます。

 一日をゼロから二十三の二十四個に割って、

日が一番高い昼を十二時にして、

真夜中はゼロ時と呼びます。

あの壁の丸い円盤で見ます。

長い針と短い針の、あれです」


 案内してくれているつなぎの女性が鍵を手渡してそう説明するが、

ビトメには『時間』も『時計』も理解できない。

彼女の指差した『時計』を見たが、

丸く配置された十二個の数字と針は読解不能だった。

一日を二十四個に割ったのに、十二個しか数字の表記がない。

ビトメは何度もその数字を数えてみる。

それに気付いて女性が訂正した。


「やはり、朝は我らがお声をかけましょう」

「あ、あの、申し訳ない」


 ビトメは小さくなって謝罪する。


「いえいえ。

こちらこそ、配慮が足らず申し訳ない。

我らが決めた基準ですので、

馴染みがない方には分からなくて当然でしたね」


 逆につなぎの女性が頭を下げた。

ビトメはもう驚き疲れて、生返事しか返せない。

 つなぎの女性がふらふらの二人を見かねて、

鍵の番号の書かれたドアの前まで案内した。

部屋は隣同士で、同じ間取りだった。


「あ、明るい……」

「壁のこれが照明の調整具です。

右に捻ると明るくなって、左に捻ると暗くなります」


 部屋の中の設備を簡単に説明して、

女性が去っていった。

ビトメとトシ・オーはお互いの部屋に入り、

ベッドに倒れ込んでそのまま眠ってしまう。


***


 三時間後。


 けたたましい音でビトメとトシ・オーは飛び起きた。

何の音か分からないが、びーびーうるさい。

とにかく部屋を出ると、

廊下をつなぎ姿の人たちがひっきりなしに走っていた。


「お二人とも!

火事です!

 ここは無事ですが、

スラムのあちこちに火の手があがっています!

念のため、一緒に地上階へ!」


 部屋を案内してくれたつなぎの女性がそう言って、

二人の手を取り走り出す。

二人が外に出ると、空は暗く星が見えるのに明るい。


「酷い……」


 ビトメは思わずそう呟いた。

しかし、周囲の人々は。


「ありゃ?

うちが火元じゃない?

よかったー!」

「外周だねぇ、火元。

これならすぐだよ」

「スラムの皆は、

もう地下の医務フロアに避難済みか?」

「もう、『消化班』は出てるから、

俺たちはここで待機だ」


 なぜか、落ち着いている。

ビトメは思わず聞き返した。


「あの、『うちが火元じゃない』……と、

おっしゃいました?」

「ん?

そうそう!

実験してるとよ、よく燃えたり、

爆発したりするんだわ!

あははは!

 だから、俺たちは火事に慣れてるのよ!」

「威張ることじゃないでしょ?!」

「そうだった!

あははは!

まぁ、見ててよ!

すぐ消える!」


 ビトメは燃えている方を見る。

よく見ると、人が火に向かって行っていた。

ゴワゴワの鎧のようなコートのようなもので身を包み、

構えた筒から白い粉の様な泡のような物を吹き出して、

火に向けて放っている。


 消防班。


 彼らが着ているのは魔法と科学の混合技術、

『テクノマギ』でできた防火服。

物理的な炎のみならず、魔法による炎も防ぎ、

装着者を守る。

 振り撒いている消火剤も、特別製だ。

雪より細かい泡を吹き付けて酸素を奪い、

更に『水棲の魔物の魔石の粉末』が混ざっている。

 魔法による炎は酸素がなくても燃える。

魔力が火の中に含まれるからだ。

それを消すのに用いられるのは、

トシ・オーがやった『魔石のチャフ』と同じ理論。

火の中に含まれる魔力が砕かれた水棲の魔物の魔石に触れて、

魔力の動きを阻害し消火する。

なので、この消火剤は基本的な『炎』を消火できる優れものだった。

 たった十数人の消火班だけ。

それだけの人数で、

しかも、数分で火の海だったものが完全に鎮火した。

スラムに静寂と闇が戻ってくる。


「おい!

どうなってるんだ?!

火が全部消されたぞ!」

「し、しかし、指示通り火をつけて……」

「もういい!

全員構えろ!」


 スラムから少し離れたところにいた、

ミルポアの衛兵たち。

彼らはキャラウェイに買収されて、

スラムに火を放った犯人だった。

そして、逃げ惑うスラムの人を捕らえて奴隷商人に売るつもりだった。

 しかし、結果は散々なものに終わった。

何度も起きる『白の教会』の実験の失敗。

それによって起きる火事。

その都度、地下の医務フロアに避難するスラムの住人らは、

今回も終始落ち着いて避難し、

誰も衛兵に助けは求めなかった。

更に、火はもう鎮火されてくすぶってすらいない。

 衛兵の隊長は赤字を取り戻さんと、

後先も考えず無計画に無謀な決断をしてしまう。


「これより!

スラムを制圧する!

投降する者は捕らえ、反抗するものは殺せ!」

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