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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第五章 ノルマなし、転勤なし!

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閑話 一大事

●オフィスのようなところ●


 自分のデスクから跳び跳ねるように立ち上がり、

大声を張り上げる女性。


「ちょっと!

二人がどこかに行っちゃってるじゃない!」


 スカートタイプのスーツを着た『風の神』はヒールをカツカツ鳴らして歩きだした。


「なんかの用事で移動したんじゃないの?」


 近くのデスクにいたよれよれのスーツ姿で『火の神』がそう言うが、

『風の神』は紙の資料を彼の顔に投げつけた。

『火の神』が資料を拾いながら読み、目を見開く。


「はぁ!?

瞬間移動魔法?!

しかも、国境跨いだ!?」

「だから、どっか行ったつってんだろ!

ヤニが脳まで回ったか?!

 しかも、そこから先が辿れない!

なにかに邪魔されてる!

私たち(七柱の神)すら惑わす何かがある!」


 その声を聞いて、

他の三人も駆けつける。

眼鏡でかりゆし姿の『土の神』が、

スマホのようなものを操作して言う。


「ダメ。

大地に触れてるみたいだけど、

場所まで特定できない」

「こっちもダメ。

風に触れてても、どこかにいる、

ってくらいしか分からない!」


 ヒールの踵で不満と不安を露にしつつ、

『風の神』は頭を抱える。


「……『死の神』は、まだ?」


 恰幅の良いダブルのスーツ姿の『鋼の神』がそう問いかける。

四人は顔を見合わせてため息をついた。


「……『命の神』の権能を、

分派した神々ごと全部引き継いだんだ。

 『死』の権能と『生命』の権能は、

すごく近くてすごく遠い。

同一なんだけど、異なる。

それこそ、コインの裏表だ。

 ごっちゃに混ざらないよう必死になってる。

三年ぽっちで落ち着けるわけないだろ」


 パンツタイプのスーツを着た『水の神』はそう言った。

そして、『水の神』は付け足すように皆に聞く。


「この話、『死の神』に言う?」

「……お待ちください。

まだ、彼女は私たちの『祝福』を使ってません。

『死の神』に伝えるのは、

『祝福』を使用したら、で良いでしょう。

 ただし、今の時点で私たち全力で二人を探します。

原因究明より、二人の位置捕捉と心身の安全を確保する。

良いですか?」


 『鋼の神』の提案に、全員うなずいた。

三年前のあの日、

ビトメに六柱の神々は一つずつ祝福を与えていた。


 ありとあらゆる魔と邪、

病や呪い、毒までも焼き尽くす『火の加護』。


 ありとあらゆるものに平等に降り注ぎ、

打ち付け、穿つ『水の加護』。


 ありとあらゆる障害や壁、

谷間も山すら踏み潰し、ならす『土の加護』。


 ありとあらゆる流れやうねり、

動きそのものから心までも凪ぐ『風の加護』。


 ありとあらゆる災いや攻撃、

不幸も絶望も通さない『鋼の加護』。


 そして、ありとあらゆる命を終わらせる『死の加護』。


 これらはビトメに与えられ、

発動権限もビトメにのみ付与された。

全て一度きりしか発動できないが、

神から直接賜った『奇跡』。

効果は『創世の神』のアラートが鳴るギリギリまで上げられてた、

最上級の『加護』だ。

 ビトメはまだそれを一つも使用していない。

使用すれば加護は付与した神に戻ってしまうので、

発動の有無はすぐさま分かる。


「例えトラブルでも自分たちで解決できるものなら、

良いんだけど」


 『風の神』は大きなため息を付いた。

他の四柱もつられてため息をつく。

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