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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第四章 フレックスタイム制!

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第62話 アンタが助けてくれるのか?

 商業ギルドの一番豪華な応接室の真ん中。

絞りきられて小さくなってる俺と、

何か高級そうなお菓子をもらって頬張り、

ホクホク笑顔の『聖女』。

それを見て、『死の神』ことシノちゃんは。


「……トシオ、生きてるか?」

「……アンタならわかるだろ?」

「まだ皮肉が出るなら、大丈夫か」


 シノちゃん、確認法方が酷いな。

俺の両サイドにはマリーとアニスが驚いた顔で立っていた。


「え……、あの……、本当に?

『死の神様』?」

「幻……、ではありませんね。

幻視露草には、もう何年も触れてません」


 幻視露草は、その名の通りヤバい草だ。

中毒性もある、いわゆる麻薬。

薬師はこの草の取り扱い免許を持ってて、

薬師ギルドの監視員付きなら調薬に使える。


「だから言ったろ?

『七柱の神々と糞神に会ってた』って。

ついでに金髪も」

「『光の神』が、実在してた?

しかも、『闇の神』に害されて?

『教会の聖女』は『闇の神の聖女』?

 ダメ。

ちょっと頭がおかしくなりそう」


 マリーは頭を抱えて唸る。

そこまでショックかね?

そもそもこの世界の神を信仰してない俺には、

なんとも思えん話だ。

 二人にこってり一日説教された俺は、

観念して二人にここ最近の話と俺のことを説明をした。

俺が異世界から来たことも含めて。

しかし、俺がダンジョンマスターであることは伏せて。


「トシ・オーが何にも信仰してないのは、

こういうことですか」

「七柱の神と呼ばれる立場の一柱として言えば。

彼は『信仰してない』というより、

『信じるに値しない』と心底思ってる。

 だから、我々の存在は認めておりこうして話せるものの、

人間同士のような扱いになっている。

君たち二人が『死の神』たる私に威圧感の様なものを感じてるのは、

君たち二人は七柱の神々を信仰してくれているからだ。

言うなら、信仰に対する畏怖だ。

 しかし、彼はそれを全く感じてない。

感じてるのは怒りとか、不信感だな」


 シノちゃん、もしかして権能が自分自身にも効いてる?

そう思うくらい彼は明け透けなく話す。


「シノちゃん。

そいで、お話って?」

「あぁ、君の捜索依頼はまだ来てない。

しかし、『闇の神』が色々吐いたそうだ」


 糞神が、か。

ろくな内容じゃなさそうだ。

シノちゃんが、ため息混じりに言う。


「あのバカは、

本来の『光の神』の仕事をほとんど山積みで放置していた。

これでは、文明も文化も育たない。

 それが目的だったみたいだが、

そのせいで大きな歪みが生まれている」

「……ダンジョンマスター」

「その通り。

さすがの頭脳だ、トシオ」


 何となく察していた。

糞神が俺を『数合わせ』と言っていたから。


「この世界の、

なんと言うか分からねぇが、

『文明の発達度合い』を糞神は誤魔化してたんだよ。

何百年もろくに文明、文化に変化がないことを、

神の誰も気にしなかったのはこのせいだ」


 神々がずっと変わらないこの世界を、

不気味に思わない方がおかしいんだ。

知的生命体が生活してる限り、

文明、文化に変化がない訳がない。


「便宜的『発展度』って言うぞ?

糞神は俺の世界の文明、文化を持った人間をこっちに移籍させて、

『発展度』を水増ししてたんだろ?

 この世界の文明は変わらないが、

ダンジョンマスターと言う『高い文明、文化』を持った存在を入れて、

この世界全体の文明が発達したと錯覚させていた。

 しかも、理屈は分からんがダンジョンマスターなら、

俺の世界と同水準の文明、文化的な生活ができる。

服とかパーカーやスーツ着てたし。

毎日風呂に入れてるみたいだしな」


 風呂、マジで羨ましい。


「そんでもって、

ダンジョン以外の『発展度』を調節するのは魔物だ。

魔物の氾濫を起こして、文明の発展を邪魔し。

ダンジョンからの恩恵に人や国を依存させて、

『教会』が影に日向に工作する。

 でも、長期間『発展度』を上げないままでいると、

端から見たらおかしくなる。

その時は異世界から新しく人を誘拐し、

『樹海』に落として殺す」


 シノちゃんが感嘆の声をあげた。


「すごい読みだな。

ほとんど当たりだ」

「間違えてた点は?」

「『発展度』の調整のために『樹海』に落とした異世界人は、

君が初めてだそうだ」

「アイツ、殺す」


 糞神が、マジかよ。

前例もなんもなして、あんな雑なことしたのか?

バカ超えて天才だわ。

いや、糞だわ。


「そのせいで、今大変なことになっている」


 シノちゃんはため息をつきつつ続きを話し出す。


「君がダンジョンマスターを二人殺した。

ダンジョンが複数消失している。

 その結果、

水増しされていた『発展度』が急激に下がっている。

世界全体が大戦を起こしたか、

未知の疫病が流行ったくらいの減り方だ。

これ以上減ると、この世界が滅ぶ」


 なかなか過激な発言だ。

マリーとアニスが青くなっている。

俺は右の耳の穴に小指をつっこんで、

ほじりながら聞く。


「あぁ?

『発展度』が減って滅ぶぅ?

時間が経てば、

『白の教会』たちとオスマンサスが引き上げてくれるだろ?」

「確かに、そうだ。

そうだが、急激に下がっているのが問題だ。

 あまりに急激なので、

これ以上下がると異常と判断されてアラートが鳴る。

そして、『創世の神』が目覚める。

 あの御方が目覚めたら、

『闇の神』の所業が君の元の世界に伝わる。

伝わってしまったら、この世界は滅ぶ」


 俺の顔がどんななのか分からないが、

マリーとアニス、『聖女』すら俺の顔を見て怯む。


「俺がそんなこと知るかよ、糞がぁ。

お前らが『やらかし』を隠蔽するから、

余計にややこしくなったって話だろうが。

 それを、俺になんで話した?

本題は、そっちだろうがよ」


 シノちゃんも俺の顔を見て眉をひそめる。


「……残りのダンジョンマスター全員が、

君を殺すために決起した」

「そいつら、全員殺すぞ?」


 シノちゃんが慌てて叫ぶ。


「私はそれを止めて欲しい、と言いに来たんだ!

君はやる! 君ならやるだろう!

 他の神は君の命を心配していたが、

私には分かる!

君なら他のダンジョンマスターが何人束になっても、

全員殺してしまう!」


 俺は鼻で笑って。


「向こうから来るんなら、

どうしろと言うつもりか?

まさか、アンタが助けてくれるのか?

『死の神』様よぉ!?」


 次の瞬間、商業ギルドの壁が吹き飛んだ。

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