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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第四章 フレックスタイム制!

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第60話 この世界は、糞だ

「君のように、

何かしらで世界を超えて来てしまう人はまれにいる。

その場合、君が元いた世界の神々から捜索依頼が届いて、

『闇の神』が捜索をする」


「この世界でその人が発見されたら保護する。

その後、元の世界に帰るか、

この世界に移住するかその人の希望を聞く。

 この大バカは、

それを悪用したらしい」


「元の世界に帰ることを希望した場合は、

我々は君の世界の神々に身柄を引き渡す。

理由は、

世界の入出管理はあちらの神々でなければ行えないからだ。

 だから、

今の君を私たちの主導で元の世界に帰してあげることは、

出来ない」


「もし、我々が君の世界の神々に君のことを問い合わせたら、

この大バカのやらかしについても話す必要がある。

さすがに、そうなると、

この世界が確実に滅ぶ」


「我々が全て悪い。

それは認めるし、深く謝罪する。

『闇の神』にも、厳罰をくだす。

 しかし、この世界が滅ぶのは、

なんとしても阻止したい」


「だから、

君の元の世界の神々から捜索依頼が来るまで、

君にはこのままこの世界にいて欲しい。

 ただ、捜索依頼がいつ来るか、分からない。

明日かもしれないし、明後日かもしれないし。

もしかすると、君の寿命が尽きた後かもしれない」


 俺の名前は、トシオ。

サトウ トシオ。

この世界に来てから、

発音の問題かトシ・オーと呼ばれている。


「この世界は、糞だ」


 クリザンテーム、

『樹海』のそばの町の冒険者ギルドの酒場で、

俺は酒をあおってごちる。


「……」


 そんな俺の正面に座る、バニレ。

バニレの両サイドに、ジャバとライム。

三人は無言で俺を見ている。


「おねぇさん!

お酒おかわり!」

「いや! もう! 勘弁して!

聞くぞ! 聞くからな!

 トシ・オー、お前、突然帰ってきた思ったら、

浴びるほど酒のんでんじゃねぇよ!

いったい全体どうした!?」


 バニレが絶叫してるが、

俺は新しい酒を受け取って飲む。

飲まなきゃ、やってられん。


「バニレ、バニレよぉ……。

七柱の神々総出で『無理だ』って言って、

帰ってったぞ?

 バカ丁寧に、頭下げて謝罪してくれて。

俺の身体の傷も全部消してくれて。

『氷眠刑』の後遺症とかも消してくれて。

 そんで、出来ません、だぁ?

そんな! もう! あー!!」

「わからん!

落ち着け!

なに言ってんだよ、

トシ・オー?

お前がそんなんなるの初めて見たぞ」


 バニレだけでなく、

ジャバとライムも俺を心配してる。


「先生、アンタが自暴自棄になってんのは、

見てらんねぇよ!」

「そうだぜ、先生!

落ち着いて、話してくれよ!」


 二人が声を出してるので、

仕事は終わってるみたいだ。


「でえぇい!

話せねぇから飲んでんだ!

 糞がぁ……。

糞がぁ!」


 飲んで、叫んで。

でも、何もならない。

 酒をジョッキでガブガブ飲んでるのに、

一向に酔えない。

そりゃそうだ。

元の世界にあった酒と比べると、

アルコール度数は低い。

甘い、温い、酒ではない何か。

それがここの酒だ。

ここでの酒のみは皆、

糖尿病になって死んでく。


「つまりは隠蔽工作だろうがぁ!

お前ら結局、糞神の共犯者だ!

糞どもめぇ!」


 絶叫。

俺の中の何もかも吐き出すように。

物理的に中身が出ていっても構わないってくらい、

大声で。


「あぁぁぁあああああ!

かぁーえぇーせぇー!」


 酒場の他の客も店員も俺を見て怯えている。

それくらい荒れてる自覚もある。

しかし、分かってても止められない。

 止まれない。

諦められない。

帰りたい。


「トシ・オー!

おま!

おち、落ち着けって!

そんな号泣しながら酒飲むのはダメだ!

 おい!

ジャバかライムかどっちでもいい!

どっか宿で部屋取れ!

大部屋だ!

酒をそこに運び込んで、トシ・オー連れて行こう!

そこで飲ませまくって潰そう!」


 ジャバが走って店を出る。

ライムが店員に説明をし始める。


「トシ・オー。

お前のことはよく知ってるつもりだ。

お前は皮肉屋だが、冷静で頭が良い。

そんなお前がそんなに取り乱すなんて……。

何があったか俺には想像できねぇ」


 バニレは俺のジョッキを新しいのに取り替えて話を続ける。

中身はションベンより酷いエールだ。

俺はそれを一気にあおる。


「お前がダンジョンで、

あんなに追い詰められても謎かけを解ききって。

しかも、キメラに一撃ぶちかましたのを俺は見てた。

あれが窮地に一生を得るってやつだ。

 お前はそんな時もずーっと冷静だった。

お前の頭はホントにすげぇよ。

そんなお前がここまでグズグズになるんだ。

よっぽどのことだろ。

 だから、今日は、俺がおごる!

とことん付き合おう!」

「はっ!

破産するくらい飲んでやるから、

覚悟しろ?」


 バニレは自分で言っといて、

往生際の悪い一言を漏らす。


「……それは、ほどほどで勘弁して?」

「よっしゃ!

『クラウン』持ってこい!」

「やめてぇ!

それ、王室とかで振る舞う酒じゃん!

やめてぇー!」


 その後俺はすぐジャバに抱えられて、

宿に入って浴びるほど飲んだが。

酔うこともなく、俺は疲れはてて眠った。

 酒場に『クラウン』は無かったが、

今度マリーに取り寄せてもらって、

代金はバニレにつけよう。

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