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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第四章 フレックスタイム制!

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第59話 では、僭越ながら

「呼べない」


 『闇の神』こと、

糞神は絞り出すようにそう言う。

顔は苦々しいものと、困惑、

後は諦めが混ざったような顔だ。

意図が読みきれんが、感情は読みやすい。

多分、不味いことがあるんだ。


「あれは、お前の考えるような神とは違う。

私や『光の神』や七柱の神とも違う。

 お前の世界の言葉を使うなら、

『作動装置』。

この世を純然に、正確に、正常に動作させる装置。

それが『創世の神』」


 糞神の話を聴きつつ、

俺は解体用ナイフを魔法鞄から取り出して自分の首に突きつけた。

次の瞬間、目の前にいたはずの糞神が消えて、

俺の手にあったはずのナイフも消える。


「止めろ!

本当に世界が滅ぶんだから!」


 さっきから呆然と立ちすくんでるジャージ男のそばに、

ナイフをもった糞神が現れた。

なるほど。

自殺はこの距離じゃ難しそうだ。


「あれは、呼ぼうとしても呼べないの!

例えば、私がお前に謎を解かれた気体の操作をしたら、

世界の異常としてアラートが鳴って、

『創世の神』がここに来る。

 でも、ここに来たとしても、

あれが起きた途端世界は全て止まるの!

世界を運用する神がいなくなるから、

世界を全部止めてから来るの!

時間も、お前も、私も止まって何も感じない!

何も分からない!

 その間にあれは気体の異常を修正して、

原因を作った私を存在ごと消して終わり!

お前やダンジョンマスターや、

『光の神』の存在は放ったらかし!

 お前はどうやってこの世界に来たかも、

私が消えてるから分からず!

元の世界に帰るどころか、

私と言う空白を埋める術がなくて狂う!」


 糞神はうんざりしたようにそう言いきる。

俺は思わず感心した。


「なんか、それこそ『神』っぽいな。

存在のスケールとやることがお前と違う」

「感心すること!?

お前もそんなの望まないでしょ!?

だから、私の言う案に乗りなさい!」


 いや、糞神のやってることがみみっちいんだ。

神ならスケールも派手にやれよ。

今だって『知り合いにコネがある』、

なんて大学の先輩みたいなこと言いやがって。


「お断る!

糞神よぉ。

神の癖に、

自分が何言ってんのか自分で分かってんのか?

元の世界に戻れるかどうか不確定な時点で、

俺がお前の案に乗る意味なんて無いんだよ!

 俺が何でもありありで、

ダンジョンマスターを全員潰す方が良いに決まってるだろ!」

「本当に止めなさい!」

「そうだな。

止めていただきたい」


 突然割り込んできた声。

そこには、ワイシャツとスラックス姿の男が立っている。


「……どっかのダンジョンマスターか?」


 しかし、糞神の表情は固い。

彼女は後退りしながら言う。


「……アンタ、何で来たの?」

「死の気配がしたから、かな。

さて、『闇の神』よ。

一部始終聞かせてもらったぞ?」


 男が指を鳴らす。

突然、糞神の周りに六人の男女が現れた。

皆、クールビズかスーツ姿だ。


「『分派』をすれば楽になる?

大嘘じゃないの、『闇の』。

忙しくて、忙しくて。

俺、ケツに火が着いてるよ」


 タバコをふかしたよれよれのスーツの男がそう言って糞神を睨む。


「私たちを忙殺して、

好き勝手していたようですね。

 ただ、ここでバレては、

カゴで水汲みしてるのと同じですよ」


 パンツタイプのスーツを着た女性が鼻息荒く言う。

カゴで水汲み?

俺、そんな慣用句知らんな。


「貴女自体が土用の筍。

芽は出ても、竹になれず。

無能はいくら策を労しても無駄」


 眼鏡をかけたかりゆし姿の女性が糞神を罵倒する。


「『光の神』がいなくなってる。

貴女が殺したの?

神の風上にも置けない(ひと)だこと」


 スカートタイプのスーツにスモーキーな色の半袖シャツを着た女性が腕を組んでそう言う。

彼女は右足のヒールのかかとをカツカツ鳴らして、

非常に不機嫌だ。


「悪事には鉄槌を、

と言いたいところですが。

一先ずは、目先の問題ですね」


 恰幅の良いノーネクタイ、ダブルスーツの男がそう言って、

ため息をつく。

Vシネに出演しそうな風貌だ。


「不惜身命。

ただひたすらに帰ろうとする執念、行動力は称賛に値します。

しかし、本当にこちらの都合で申し訳ないのですが……」


 デッ!

って言いたくなるスタイルの女性は、

スーツがピッタリ身体に張り付いてて凄い。

身長も二メートルはありそうだ。

もう、全部がデッ! って感じ。


「ただ、死んでしまうのも問題だ。

それに、

これ以上変な行動をさせるわけにも行かない。

お互いに死活に関わる」


 始めに現れたスラックスの男はそう言いながら俺に歩み寄る。

俺は一通り七人を眺めて、頭は下げずに口を開いた。


「これは、これは。

七柱の原初の神々が一同に会されるなんて。

世界の週末ですかな?」


 感覚として、七人が人ではないのは分かる。

そして、糞神への態度を踏まえれば、

七柱の神々だと推測できた。

人数も七人だし。

 話し出した順に『死の神』、『火の神』、『水の神』、

『土の神』、『風の神』、『鋼の神』、『命の神』かな。

やっぱりアニメや漫画じゃないから、

雰囲気や見た目じゃ分からんな。

『火の神』がタバコ吸ってるくらいか。

 こりゃ、不味いか?

俺は顔にこそ出さないが、

背中に嫌な汗が流れるのを感じている。


「イイ。

こう言う揺るがない男、大好きなんだけど。

私のとこに貰って良いかな?」


 かりゆし姿の女性がそう言う。


「冷めて見えるのに、

煉獄のように燃えてるなぁ。

俺もこう言うヤツぁ、好きだね。

うちにも欲しい」


 よれよれのスーツの男がそう言って笑う。

それを遮ってデッ! な女性が前に出る。


「お二人とも、そう言う話じゃありません。

彼をなんとかしなければ、

世界は滅ぶのですよ?」

「全部『闇の神』のせいでしょ。

その人は、被害者。

彼のやったことは、

せいぜい人の文明の発展の起爆剤となったくらいです。

 むしろ、『闇の神』が塞き止めて停滞していた文明開化を推し進めた功労者です」


 ダブルスーツの男性がそう言ってくれるのは嬉しいが、

俺はどうなる?

おずおずと俺は挙手する。

それを見たスラックスの男性がいう。


「サトウ トシオ。

君の発言を認めよう」

「では、僭越ながら。

俺を元の世界の元の生活に戻して貰うことはできないのですか?」


 七人は顔を見合わせ、

糞神を睨み、

大きなため息をついて俺に向き直る。


「我らには出来ん。

本当にすまない」

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