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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第四章 フレックスタイム制!

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第54話 俺からとってみろ!?

●死の荒野、『白の教会』キャンプ地●


 暮れなずむ夕陽の中、

まばゆい光と、漆黒の闇が激しくぶつかる。


「私を人に落としたのが、

貴女の運のつきでしたね。

私を殺しても、

ペナルティは貴女に落ちますよ?」

「黙れ!

神モドキなんて、

消えた方が世界のためでしょうが!」


 『光の神』と『闇の神』の力の差は圧倒的。

神たる『闇の神』と、堕とされた神『光の神』。

『闇の神』が強くて当然なのだが。


「私の権能を無理に取り込んだんでしょ?

ガタが来てますよ」

「くっ!

そんなもの、すぐに馴染むんだから!」


 そもそも、

二人の権能は相反するものである。

本来は『魔物』は『文明』を破壊するものであるし、

『ダンジョン』は『都市』の飲み、砕くものだ。

 『闇の神』はそれをあえて混ぜ、

ゆっくり馴染ませて取り込む算段を付けていた。

『魔物』と『ダンジョン』を人のための資源にして、

ゆっくり融和したところを飲み干す魂胆だったが。

『踏破の聖女』の驚異を目の当たりにして、

慌てて取り込んだため、その内側で拒絶反応を起こしている。

 結果、聖女から『踏破』の力を奪えた代わりに、

『闇の神』の神の力は半減してしまった。

 そこに『光の神』の復活。

『闇の神』の旗色は誰が見ても良くない。

 科学が切り裂いた闇夜。

灯台の光でできた槍は、

『闇の神』に特効といえる程の効果を見せている。

光の槍が触れたところから、

陶器の人形のようにひび割れていく『闇の神』。


 しかし、突然『光の神』の握っている槍が消えた。


「なっ!?」


●マンチャータ跡地●


「逃げろ!」

「バカ! お前!」

「資料を持って逃げるんだ!」


 河口の装置は大破。

ケーブルは引きちぎられ、仲間も殺され。

残った数人は灯台に立てこもる。


「いいか!

俺たちは、成し遂げた!

成し遂げたんだ!

それを残さなきゃならない!

 俺も入れると、瞬間移動できないだろ?

だから、お前らが資料をもって逃げろ!

逃げて、またどこかで発電機を作るんだ!

今度は、もっと良いやつを!」


 そう言って、白服の一人は灯台の外へ出ていった。

外には魔物の群れがいる。

 魔物たちは、全て武装しており、

軍隊のように隊列を組んで無駄なく進行する。


「こっちだ!」


 灯台から出た白服は、囮になるため走る。

すぐさま魔物たちは、彼に矢を射かける。

白服は自分の服を脱ぎ、

払うことで致命傷になる矢を払った。

 しかし、全ては払えず、

何本も矢を受ける。

それでも彼は駆ける。


「成した!

成し遂げた!

主よ!

この灯は絶対に絶やしません!」


 彼はそう叫んで、次の矢は払いきれず、

その命を燃やしつくした。


●死の荒野●


 『闇の神』は、ボロボロのそれを掴んで持ち上げた。


「あはは!

良い気味!

 悪くはなかったんだけど、

私の方が上手だったみたい」


 つり上げられた『光の神』は、

満身創痍でされるがままだ。

しかし、その目は諦めていない。


「ムカつく顔。

 あの不細工も、

最後に役立ったみたいね。

まさか、

今際の際に『武人のダンジョン』のマスターに連絡してたなんて。

 今、オスマンサスは魔物の群れに襲われてる、

って話らしいよ。

ざまぁ、ないよね。

あはは!」

「……私の子たちを、どうした?」


 『光の神』が声を絞り出す。

『闇の神』は笑って言い放つ。


「死んだみたいね。

逃げたのもいたみたいけど。

自慢の発明も魔物たちが破壊したみたいよ」


 『光の神』の目に怒りが灯る。

『闇の神』はどこ吹く風、と言う顔だ。


「アンタを殺すと、

アンタの権能があのババアに還るから、

わざわざ人間におとしてあげたのに。

 ここまで邪魔をするなら、

殺すしかなくなったね。

まぁ、『文明』と『都市』はもう私のものだし。

『日光』くらい、還してもいいか」


 『闇の神』は、『光の神』の首に手を掛けた。

そして、万力のように手に力を込める。

 しかし、吊られたまま彼女は笑う。


「……何がおかしいの?」

「……かなり……遠くっ……まで、来まし……たよ?」


 『闇の神』がふと周囲を見ると、

そこは『死の荒野』の真ん中。

さっきまであったテントや動けなくなった人がいない。


「……嘘」


 『闇の神』は『白の教会』のキャンプを見つけて、

そちらを振り向く。

広大な、遮蔽物も比較対照もない『死の荒野』であっても、

人が豆粒くらいにしか見えないくらい二柱はキャンプ地から遠くにいた。


「……何してくれてんだ、

糞がぁぁぁぁぁぁ!」


 遠い距離を吹き飛ばす声量。

その叫びはしっかり怨敵に届いた。

トシオはキャンプの端から二柱を睨み付けていた。


「……あの、男は!」


 トシオの手には、『氷の鏡』が握られている。

それに気付いた『闇の神』は、

奥歯が砕けそうな程音を立てて軋ませる。


「これ、欲しいんだよな?

糞神よぉ」


 『白の教会』たちとレオは、

いつかのトシオのように動けはしなかったが、

『闇の神』の動向を見聞きしていた。

そして、『闇の神』が遠ざかったため、

術が解けて動けるようになった。

 急いでトシオの解放後、

見聞きしていた情報をトシオに集め、

吹き飛ばされていた『聖女』を救出。

 『氷の鏡』をレオから預かり、

トシオは笑う。


「つーか、誰がお母さんだぁ!

せめて、お父さんだろうが、

クソどもめ!」


 『闇の神』は、

『聖女』がお母さんと言っていたことを思い出した。

お母さん、なので少なくとも女性だと思っていたが。


「……私をここまで手こずらせた挙げ句、

バカにしてるの?」


 『闇の神』にそういう風に感じた。

トシオは笑う。

距離がありすぎて、

『闇の神』がなんと言ってるのかわからないが笑う。


「『氷の鏡』が欲しければ、俺からとってみろ!?」

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