閑話 見目
●大海のダンジョンの管理室●
コンソールから光は消え去り。
椅子から崩れ落ちたショウは、動くことすらままならない。
「……っ!」
産まれてすぐに、親に捨てられた。
理由は両親のどちらにも似なかった醜い顔。
その顔を見た両親は不貞を疑い、
仲違いした。
なお、ショウは間違いなくその両親の子で、
病気も何もない、健康な子供だった。
「人は見かけじゃない、中身だ」
幼いショウはそれを信じた。
彼は努力の才能があり、
あっという間に大人も舌を巻くほど賢く誠実な紳士になっていく。
しかし、友達は一人もできなかった。
極めつけは、彼が中学二年のころ。
ショウに襲われた、と女子生徒が告発した。
ショウに身に覚えはない。
しかし。
「やっぱり!」
「そら見たことか!」
誰も彼もがそう言って、ショウを指差し。
誰一人として彼の無実を信じなかった。
そうか、そうなるのか。
やはり人は見た目だ。
ショウはその知能で、
自分にかけられた疑惑を全て覆し、
弁護士と警察へ届け出た。
実際はロリコン教師とその生徒が付き合っていて、
二人の不貞の現場を他の生徒に目撃されたのを
誤魔化すためにでっち上げたらしい。
「顔が不細工なんだから、
何してもいいと思った」
彼女はそう言った。
二人には他の罪もあったので、
教師に執行猶予は付かなかった。
女子生徒も検察へ逆送されて、
刑事裁判にかけられたそうだ。
その後、誰もショウに謝罪しなかった。
「疑わしいのが悪い」
「そう言うことをしそうな顔だ」
皆口々にそう言う。
ショウはその後、高校、大学共に高学歴。
大学在学中に起業して、大成功した。
億万長者になっても、
彼を中身で見てくれる人は現れなかった。
彼をおとしめようとするものたちは絶えずやってきた。
実の両親すら、
彼をおとしめて財産をせしめようとした。
それら全てをはね除け、会社を大企業へ売り払い。
ショウは世捨て人になった。
金は腐るほどある。
しかし、人として腐らぬよう、
近所のスーパーで早朝品だしのバイトをする日々。
時折、品だしをしていると思う。
このジャガイモの方が、
自分より価値があるのか。
悔しさすらない。
ルッキズムなんて、幻想だ。
人間も獣である以上、見た目と言う情報は重要。
腐った食べ物や毒を回避するための本能だ。
諦観。
ある日、目の前につまれていた段ボールが消え、
見たことがないほど広い大海原にでた。
「あら。
世界を渡ってきてしまったみたいね。
大丈夫。
私に任せなさい」
神と名乗る女性につれられ、
ショウはこの世界に住むことにした。
『闇の神』は、神と言うだけあった。
「見た目?
神たる私からすれば、
目が二個、鼻が一つ、口が一つあれば、
どれもこれも『同じ』」
ショウは産まれて初めて、
中身を見てもらえた。
彼は彼女を崇拝することに決めた。
「貴方をダンジョンマスターとして任命します。
励みなさい」
そして、最大のダンジョン、
『大海のダンジョン』を作る。
「……終われない」
ショウは残された力を振り絞り、
小さなコンソールを出してボタンを押した。
「……神よ」
ショウは果たせなかった神の『頼み』を、
信用できるものに託した。




