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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛
第三章 充実した福利厚生!

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第51話 誰がお母さんだ!

●死の荒野『白の教会』隠れ家最深部●


 俺は土が剥き出しの部屋の真ん中に立ち、

目の前のゲートをにらむ。

既に残り時間が三十分を切ったので、

俺の目の前にゲートが現れていた。


「……本当にやるんだな?」


 そう訪ねるのは、レオこと、カラさんだ。


「日本語の俺の名前を発音できるのはアンタくらいだ。

アンタにしか頼めん」

「……『氷眠刑』は、かなり苦痛を伴うぞ?」


 さすが、体験者。

言葉が重い。


「でも、アンタは無事に目覚めた。

それなら、良い。

 後は手はず通り、

頼んだからな?」

「……君には大きな恩がある。

私自身の目的とも合致するし、

手を抜くつもりは一切ないが。

 本当に『教会』は介入しないのか?」


 『教会』と言うか、

『闇の神』は『光の神』の復活でそれどころじゃないはずだ。


「大丈夫だろ。

介入されても、アンタらならやれる。

 眠る前に、金髪と少し話したい」

「分かった。

部屋の外にいる」


 カラさんは、頷いて部屋を出た。

部屋には俺と金髪の『聖女の右』の二人だけ。


「そっちも、手はず通りに頼む」

「承知しております」


 深々と頭を下げる金髪に歩み寄り、

俺はその仮面をひっぺがした。


「マジで頼むぞ?

『光の神様』よぉ」


 金髪こと、『光の神』が目を見開く。


「あー、無駄だぞ、言い訳は。

なんたって、

俺は『闇の神』の顔を見て覚えてるからな」


 金髪の顔を見たときの既視感。

あれは、怨敵の顔そっくりだったからだ。

カラさんとオスマンサス王が髪色以外そっくりなように。

『闇の神』と金髪は、髪色以外瓜二つだ。

黒髪の『闇の神』と金髪の『光の神』。

対比としてもあり得る。


「オスマンサスの民主化。

それでアンタは力を取り戻せたはずだ。

頼むぞ、『闇の神』を抑え込め」

「……難しいことをおっしゃる。

 私は既に神としては死んでます。

権能の欠片、

『聖女の任命権』と『聖女への加護付与』を持った、

人間の『聖女もどき』。

それが今の私です。

 それに、あれの力はもう、

私でなんとかできるものじゃありません」


 金髪が折れて、

自分の正体が『光の神』であることを認めた。


「既に世界の、国の仕組みに、

ダンジョンが深く根付いてしまっている。

更に、魔物も人々の驚異でありながら、

資源として成立している。

 そのため、私の権能の『文明』と『都市』が、

あれに大半食われています。

食われた分、あれは力を増してる」


 宗教で文明の発展を阻害しつつ、

人の生活にダンジョンと魔物を組み込んで侵食する。

なるほど、権能はそうやって取り合えるのか。


「補足しますが、

貴方が同じことをしても、

神ではないので権能は奪えませんよ?」

「けっ!

なんだ、そうかよ。

クソッ!」


 『闇の神』から権能を全部ひっぺがして、

殺そうと思ったんだけどな。


「オスマンサスの民主化を支持したいとは、

思います。

しかし、確かに力を取り戻せましたが、

既に私は人間。

神として力を振るうことができない。

私には……、もう」

「時間稼ぎでいいんだよ。

『聖女の加護』を強化するとかでいい。

少なくとも、

俺が目覚めるまでは『教会』を抑えろ」


 光の神が頭をかいた。


「じつは、少し前に『踏破の聖女』に、

『闇の神』が接触してですね。

彼女を助けるために、

私の力をほとんど使ってしまって」

「はぁ!?

ばっ! なんっ!?

くそがぁぁぁぁぁぁ!」


 何してくれてんの、この(ひと)!?


「聖女が大分疲弊してて、

『闇の神』がダンジョンコアを持って逃げたんですけど、

それを追えるほど彼女の体力が残ってなくて。

一旦帰って休むように指示しました」

「あーー!!

もーー!!

くそがぁぁぁぁぁぁ!」


 今知りたくなかったわ!

計画が!

残り時間二十三分で!?

糞がぁぁぁぁぁぁ!


「……も、申し訳ない。

彼女、この数日食事も睡眠もなしで、

ダンジョンコアを追っていたので……」

「クッソぉー!

分かった!

指示を変える!

 お前、聖女が帰ってきたら、

風呂入れて寝かせろ!

起きたら飯食わせて、

予定を繰り上げて『大海のダンジョン』のダンジョンコアを追わせろ!

それでチャラ!

分かったか?!」

「……はぃ」


 小さくなって謝罪する金髪。

俺はもうコイツは神とは呼ばん。

金髪で十分だ。

 コイツが『闇の神』に良いようにされてるのが、

何となく納得できる。

コイツはポンコツ女神だ。

あのマッチョの像の方が頼れるわ。


「他の指示は継続だ!

本当に頼むぞ、頼むからな?

もう俺の中でお前の信用ゼロよ?

頼んだからな?」

「はぃ……。

ごめんなさいぃ……」


 ダメ神だ、コイツ。


「ただいまぁ!」


 ここで来んなよ、聖女ぉ。

どこからか聖女が現れて、俺の前で立ち止まった。


「主から、

休めってお告げがあった!」

「き、ん、ぱ、つぅ!?」

「ごめんなさいぃぃ」


 金髪は慌てて仮面をかぶって土下座する。

聖女が俺の服の裾をぐいぐい引っ張って言う。


「あのね!

ダンジョンマスターがね!

『教会』の聖女だったの!

 でね、でね!

聖女は仕留めたけどね!

ダンジョンコアを『敵』に取られたの!」

「……マジかよ!

良くやった!

すげぇぞ、お前!

さすが、聖女様!」


 大型犬を褒めるがごとく、

聖女を褒める。

聖女も、でしょ、でしょ?!、

と嬉しそうに跳び跳ねる。

 良く分からんが、

『聖女』がダンジョンマスター!

これは良い情報だ。

 ただ、敵、ってことは『闇の神』が邪魔しにきたのか。

ダンジョンが破壊できなかったのは残念だが。

中間報告、と思えばこれは良い情報だ


「これで、しばらく『教会』は動けねぇ!

金髪より良い仕事するじゃねぇか!

 金髪、さっきの指示は取り消し!

予定どおりの作戦を実行しろ!」

「……本当に、ごめんなさい」


 金髪がまた小さくなる。

俺はそれを無視して聖女に話しかける。


「よし!

逃げた『敵』は後回しだ。

とりあえず、風呂に入って寝ろ」

「お母さん、お腹空いた!」

「誰がお母さんだ!

お風呂が先です!

 金髪!

他のやつらも呼んで、

聖女を風呂へ入れろ!

ベッドへぶち込め!」

「はい!

すぐに!」


 金髪が聖女をなだめすかしつつ、

二人で部屋を出ていく。

入れ違いでカラさんが入ってきた。


「……なんか、

艶っぽいことするのかと思ってたのに。

めちゃくちゃ説教してたね、君」

「あれのせいで、計画がポシャるとこだったわ!

『踏破の聖女』のお陰でリカバリーできたけど!」


 カラさんが苦笑いしていた。

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