第45話 何故民主化を認めない?
外、と言うか、
城内が騒がしくなってきた。
どうやら、
俺たちが王の執務室に忍び込んだことがバレたらしい。
「さすがに俺(脱獄囚)が忍び込んでたことまでは、
分からんだろ」
「資料も根こそぎいただきましたし、
しばらくは時間がかせげますね」
とりあえず、王弟のレオを解放してみよう。
謁見の間に忍び込んで、鏡を盗って金髪に操作して貰う。
それで、問題なく解放されれば、
鏡をいただきレオも誘拐してしまおう。
「警備が強化されますよ?」
「多分、今は犯人が街の外へ逃げ出さないように、
外壁を包囲してるだろう。
兵士たちは城の外。
メイドや執事たちが中を警戒してんだろ」
俺は他の資料もしっかり読み込む。
「王弟殿は、この国を民主化しようとしたのか」
「当時、賛成した貴族も多かったようです」
しかし、王家は『教会』の後ろ楯をえて、
王弟を下し、『氷眠刑』に処して、手打ちにした。
「いや、何でそこまでした?」
「どういうことでしょうか?」
オスマンサス王は有能だ。
王弟レオの資料がかなり細かく用意されている。
それを読み解く限り、
当時『民主化するのに適した状態』だった。
「レオは学校をたくさん建てて、
平民の学力をあげた。
当時の国民の識字率は六割を越えてたらしい。
他にも国籍作って、土地の台帳を現地で確認して。
徴税部を王直属で作って。
これらは、今も生きてて活用されてる」
民主化と言っても、
平民の学力が無ければ結局貴族など学力を買える金持ちしか、
政治にちゃんと参加できない。
また、徴税を国が直接するための用意も必要だ。
国籍と土地の台帳はそれの土台。
徴税部はゆくゆく国税庁とかになるはず。
更に、この国にはダンジョンがあるから、
陸路も海路も整備されて、
商人は貴族と肩を並べる程に育っていたはず。
「レオが法整備に取りかかったところで、
『教会』が王に近寄って民主化反対を大々的に表明。
そこから、内乱だ。
せっかく民主化に乗り気だった国民は、
長引く戦いに疲れていき。
商人は財力を維持することに注力する」
レオは焦ってた訳じゃない。
むしろ、根回ししてしっかり時間をかけていた。
「レオは自分ではなくて、
次の世代で民主化できるように仕掛けを張っていた。
じっくり、じっくり。
これ、民主化を拒絶したのは貴族と王族じゃなくて、
『教会』じゃねぇか?
王族はそれに従うしかなくて、内乱を起こし……。
……だからか?
だから、当時の王族は、
レオを死刑じゃなくて『氷眠刑』にしたのか?
いつか、レオが解放されたら、ってか?」
なんか、キナ臭さの種類が変わる。
「……『教会』は、何故民主化を認めない?
何故だ?
なんで、そんなことを気にする?」
『教会』が『闇の神』の手先だ、と。
この前俺がついたこの嘘が本当だったらば。
闇の神の意向で民主化を潰した、と言える。
それだったとしても、理由が分からない。
『教会』が『創世の神』の信者だとしても、
民主化を認めない理由がない。
俺は創世の神の教えに詳しい訳じゃないが、
民主化を悪としてる、何て話は聞いたことがない。
「……封建制じゃない。
レオは信仰の自由を制度化しようとしたのか」
レオは宗教にも、メスをいれた。
法に明確に信仰の自由を文章化すると、
王家と貴族の支配理由の一つ『創世の神に選ばれた者』、
と言う部分を弱体化できる。
政教分離、まで行けなくても、
国教の廃止まで行けば支配理由が一つ減る。
それが原因で、『教会』と敵対した。
「金髪の。
レオは『白の教会』の、『光の神』の信者だった、
と言う話はあったか?」
「い、いいえ。
私の知る限りはありません」
もし、レオが『光の神』の信者であろうが、なかろうが。
オスマンサスで信仰の自由が認められると、
『教会』が『異端』と認定した宗教も国が認めてしまう。
他にも影響が出るのを『教会』は見過ごせなかった。
ありえる話だ。
「レオは、はめられたらしい。
普通そんなヤツ解放したがらないんだが。
執行から時間が経ちすぎて誰もそれを覚えてないか、
覚えてたとしても解放後の彼が孤立無援では、
どんな思想も企みも無意味、としたのか」
百年以上前の話だ。
この世界の平均寿命は知らんが、
地球の日本の平均寿命より絶対に短いはずだ。
仲間も家族も死別した、となるとメンタルもなえるだろう。
俺は一旦タイマーをみる。
残りは約十八時間。
「外が落ち着くまで少し仮眠をとりたい。
金髪の、見張りを頼めるか?」
「承知しました」
俺は資料を魔法鞄に入れて、
壁にもたれ掛かり目蓋を下ろした。




